34話 警備隊長(3)
「シンイチ殿、まだ時間はあるかい?」
会話が一段落したタイミングでそう質問をしてきた、隊長のシーラさん。
「大丈夫ですよ」
この後の予定は特に無かったのでそう答えると、隊長さんは満面の笑顔となった。
一連のやり取りを見ていた隣の副隊長さんは呆れ顔だ。
あ――――これは、「用事があるから時間は無い」と回答するのが正解だったかな?
俺は場の空気から不安に襲われてしまった。
「時にシンイチ殿、マキエル様の使いということであるなら、やはりアンタも相当お強いのかい?」
まだ話し方が少しおかしい隊長さんがそんな質問をしてきた。
普段の喋り方で問題ないと敬語を止めてもらったが、マキエルさんの影響力が大きいからか、敬語を使わなければという力が無意識に働いてしまうのだろう。
それとも、普段からこういう変な話し方なのだろうか?
まあ、そんなことどうでもいいか。
取り敢えず、嘘のない範囲で無難に答えておくか。
俺が転移者で戦闘はド素人と言っても理解されないだろうし――。
「えーっと……一応は戦闘訓練は受けていますが……非戦闘員で実戦経験も皆無なので、多分この中で一番弱いかもしれませんね」
俺がそう答えた瞬間、ここにいる全員が一斉に驚いた顔をしながら俺に視線を向けた。
あれ? 俺、何か変なこと言った?
《ここにいる者たちは皆、百戦錬磨の猛者ばかりですので、恐らくダブロスの力の一端を何らかの方法で感じ取り、自分よりも強いと感じていたために「弱い」という発言に違和感を覚えたものと推測します》
(いや、百戦錬磨の猛者だったら実戦経験の無い者が相手なら楽勝でしょ?)
《………………》
(……サ、サリーさんはこの中で誰が一番強いと思う?)
《断トツで眞一さんです!》
(……マジか)
「フム。私の直感で、この中ではシンイチ殿が一番強いと感じたのだが……確かに、実戦経験が無いならばそうとも言い切れないか。ヨシッ! 私が直々に相手をして戦力を確認するとしよう」
えっ! 理解してくれて一瞬喜んだのに……どうしてそういう展開になるの?――って思ったが、俺の地獄耳が捕捉した「戦闘狂め!」という、隊長さんに聞こえないようにボソッと口から出た副隊長さんの呟きで理解した。
「あまり戦いたくないんですが……どうしても必要というなら、理由を教えて欲しいんですが……」
「有事の際の備えとして、この村にいる味方全員の戦力を把握しておきたくてね。現時点で把握できていないのはシンイチ殿だけなのだよ」
「なるほど……もっともな理由ですね」
どうやら、逃げられないみたいだ――まあ、仕方ないか。
詰所から少し離れたところにある訓練所――。
俺は隊長さんと向かい合っていた。
周りにはギャラリーが――先程まで隊長室にいた面々に加え、詰所にいた大半が来ているようだ。
「初めての実戦だ。君の好きなタイミングで初めていいよ」
「わかりました………………行きます――」
《戦闘モードに切り替えます》
俺が戦いを開始した瞬間、サリーさんのアナウンスと同時に周りの動きがスローになった。
これは……アレか!
スポーツ選手がゾーンに入った時のソレっぽいな。
それに、この感じ……これは戦闘訓練――俺が初めてダブロスに入った時にやったゲームと全く同じ感じのヤツだ。
取り敢えず、あの時と同じようにやってみるか。
俺は隊長さんの背後に回り込み、彼女の右側のうなじを右手で軽くチョップ。
《戦闘モードを終了します》
サリーさんの声と共にスローだった周りの動きが元に戻ると、隊長さんが崩れるように左へ倒れた。




