26話 マキエル村の獣人たち(1)
「ふ、二人とも、シンイチさんに失礼ですよ!」
我に返ったキーファさんが注意すると、尻尾をピンッと立ててビクついた狼人族の兄妹は、すぐに嗅ぐのを止め、先程まで立っていたそれぞれの位置に戻った。
「失礼だとは思いましたが、やはり駄目でしたか……」
「当たり前です! 一言『失礼』と断りを入れたからと言って、何をしても良い訳ではありません!」
「ププッ。兄上、怒られてる――」
「あなたも同罪です! ウル!」
「ゔっ!」
しゅんとした狼人族の兄妹は、項垂れながらも俺の方に向き直り、
「「すみませんでした!」」
二人同時にそう言って、頭を下げた。
俺は少し戸惑いながらも、
「あー、えーっと……大丈夫ですよ。何も気にしていないから安心してください」
そう言って、事態を収めた。
それにしても、マキエルさんとは謂うほど接触してない。
時間も経っているし風呂にも入ったというのに……。
狼人族の嗅覚、恐るべし!
キーファさんが狼の群れに襲われていると思ってここに来たのだが――勘違いで無事だったし、例の失言でいろいろ心配もしたが――会話も普通にできているし、通常運転に戻ったようで安心した。
しかしまあ、何というか……。
この狼人族の兄妹を間近で見ると、不気味というか、違和感というか……。
こう感じてしまうのは日本のサブカル、ファンタジーな漫画やアニメ、ゲーム等でよく見る獣人たちと見た目が全然違うからであろうことは容易に想像できた。
実写化したら全くの別物になってしまうあの感覚に少し似ているかも……いや、微妙に違うか。
リアルな狼の着ぐるみの顔の部分が切り抜かれ、中の人の顔が出ている。
二次元モノなら恐らくカワイイと思えるのだろうが、三次元だと『こいつ大丈夫か?』と思ってしまうようなヤバい奴に見えてしまう。
聞いて良いものかと躊躇したが、俺は我慢できず彼らに質問してしまった。
「狼人族の方々はは皆さんこういう姿形なのですか?」
「姿形? …………! ああ、いえいえ。コレは先程まで狩りをしていたからでして――」
そう言って、ポチ兄さんはコチラに体を向けた。
すると、上半身の体毛がみるみるうちに引っ込み、細マッチョなボディが姿を現した。
下半身は狼のままだが、無造作ワイルドショートで犬耳の生えた上半身裸のポチ兄さんは、先程とは別人と言っていいくらいカッコよくなった!
普段は、目の前の彼のように俺もよく知っている獣人の姿をしているそうだ。
だが、狩りなどの戦闘時は狼の姿になる方が都合が良い。
攻撃や防御など、あらゆる能力値が桁違いに跳ね上がるからだ。
彼ら狼人族は変身ができる種族のようだ。
先程までしていた奇妙な姿はキーファさんと会話するため。
狼の顔だと喋り辛くて上手く話せないから、いつも顔だけ人型にするという。
これが狼人族の常識なんだね。
ポチ兄さんがこれほど劇的に変わったので、ウルさんもどう変わるのか気になってしまった俺は、必然的に彼女の方を見やった。
俺の視線に気が付いた彼女は、態と両手で胸を隠す動作をしながらこう言い放った。
「私のオッパイも見たいんですか?」
その一言に俺は凍り付いた。




