25話 憧れの人(3)
取り敢えず……キーファさんの気分が落ち着くまでそこそこ時間がかかるだろうと判断し、お昼までルーミーの所で待つことにした。
ってことで魔法の鞄を使える状態にすべく、その待ち時間はアイデアを練る時間に充てた。
昼過ぎ――
キーファさんは未だ現れない。
「キーファさん来ないね……」
「……そうね」
あ……ルーミーが少しイラついてる気がする。
それにしても、キーファさんはまだ復帰できないのかな?
彼女なら、責任感が強そうだし、俺の世話係を長時間ほったらかしにはしないと思ったのだが……。
彼女は現在どこで何をしているんだろう。
そう思った時、ふとダブロスに搭載されている探知機能の存在を思い出し、すぐさま発動させてみた。
現在地の座標点には『ルーミー』との表記が……どういう仕組みか知らないが、どうやら俺が知る人物であれば名前が記されるようだ……相変わらずチートだな。
昨晩泊った家の方に意識を向ける。
!!!
ルーミーの家と宿泊した家との中間、俺が今朝通ったところから少し外れた場所にキーファさんの表記があった。
それも狼系生物の群れと思われる複数の点の中心に!
「え! ちょっ――」
ルーミーが何やら叫んでいたが、それには目もくれず、俺は反射的に外に出てキーファさんの元へと向かっていた。
現場には数十秒で到着した。
キーファさんは無事だった……っていうか、いまいち状況が掴めない。
狼たちが何かの臓物を我先にと奪い合いながら食らっているその傍らで、キーファさんは二人の獣人と会話していた。
ワーウルフ?
ライカンスロープ?
人狼?
ま、何でもいいや……。
その辺の区別に関して俺はよく理解していなかった。
大雑把に言えば、直立した大柄の狼の顔の部分が人間の顔をしており、遠目で見たら、狼の着ぐるみを着た二人、そんな感じにも見えるかもしれない。
「キーファさん、コレは一体どういう状況なのですか?」
三人の方へ歩きながら近付いて、俺は彼女にそう訊ねた。
「あ! シンイチさん。コレはですね――」
俺に気が付いたキーファさんが説明をしてくれた。
まず、二人の獣人を紹介してくれた。
この二人、狼男と狼女は兄妹だという。
狼人族と呼ばれる種族で、男の方はポチ、女の方はウルという名だそうだ。
マキエルさんが主のようで、名前も彼女が命名したとか。
ウルフからウル……安直ではあるが、まあ普通だ。
しかし、狼にポチって……。
マキエルさんらしいと言えばらしいので深く考えるのは止そう。
普段はこの村の警備をしているが、今日はキーファさんに頼まれた肉を調達すべく、狼たちを使って狩りをしてきたらしい。
頼まれた肉以外にモノは狼たち処分させていたようだ。
この村のエルフたちは肉を食さない。
そのため狩りが苦手でうまく加減できず、炭にしたり、木っ端微塵にしてしまったり……。
だから、客人などに出す肉の調達は彼らに頼むのだ。
「マキエル様から、シンイチさんは肉を食すだろうから時々出すよう命を受けてましたので――」
「おぉ! 彼が件の御使い様か! ちょっと失礼――」
そう言って、ポチが俺の体に顔を近付け匂いを嗅いできた。
「おぉ! 確かにマキエル様の匂いが微かにしますぞ!」
「ななっ! それは本当ですか、兄上!」
それを聞いて妹のウルも俺の匂いを嗅ぎ始めた。
何この兄妹……。
「……いいなぁ……」
ボソッと発せられた声の方をチラ見すると、キーファさんが羨ましそうにコチラを見ていた。




