21話 転職のすゝめ(2)
「シンイチ、もう夜だし泊っていったら? この周辺にはアタシが練習で建てた家がいくつかあって、モデルハウスになっているから好きな家に泊まっていくといいわ。パパ、問題ないでしょ?」
「ああ、構わないよ」
ラウムさんの了承も得たので、お言葉に甘えてルーミーの提案を受けることにした。
外は夜で真っ暗闇。
モンスターも活発な時間帯。
危険を冒してまで急いで帰る必要はない。
それに――
「宿泊とかの準備は全部キーファにやらせておけば良いから、パパも加えてさっきまでの話の続きをしようよ! きっと、魔法の鞄の完成にまた一歩近づくわよ?」
「いやいやいやいや! ラウムさんも加えて先程の話の続きをするのは良いけど、諸々の準備をキーファさんに全部押し付けるのはどうかと思うぞ!?」
「いいのいいの! キーファが泊まる時にいつもやり慣れてることだから、準備なんて一人分増えてもそれほど変わらないから大丈夫よ! それより、早く話の続きをしよ!」
――ってな感じで押し切られてしまった。
ルーミーはラウムさん達が帰ってくる前までしていた話の続きをどうしてもしたくて、俺を帰らせたくなかったようだ。
キーファさんも、俺に問題ないと伝えて先程の話の続きをするよう促し、宿泊などの準備をするため外へ出て行ってしまった。
俺はルーミーに促されるがまま、奥の部屋へ連れていかれ、新たにラウムさんを加えた3人で話し合いを再開した。
いや、正確にはラウムさんとルーミー、サリーさんの3人で話し合っており、俺はただ聞いているだけだった。
先程までとは違い、ラウムさんが加わったことによって、より専門的になった。
俺の空間魔法の知識は、日本の常識とオタク文化が創った空想によるものだ。
こちらの世界で必ずしも通用するとは限らない。
多少サリーさんから聞いてはいるが、俺はこちらの世界の常識をほとんど知らないのだ。
そんな訳で、ラウムさん達の話は俺にとって良い勉強になるので、聞き専になってしまった。
宿泊の準備ができたとキーファさんが俺を呼びに来た。
キリが良いと判断した俺は、まだ話足りないと駄々をこねるルーミーを無視して話を止め、話の続きはまた明日という事にしてラウムさんに挨拶をし、キーファさんと共に外へ出た。
今夜泊る家に向かう途中、何気なく見上げると、木々の間から満天の星空が広がっていた。
三日月も見える。
その三日月のすご右隣にはそれより二回り小さい三日月も並んでいた。
こちらの世界は少なくとも月が2つあるようだ。
宿泊先に到着し中に入ると、食事が準備されていた。
キーファさんが作ってくれたみたいだ。
感謝の意を伝えると、キーファさんは当然のことをしただけだから気にしないで、と言いながら照れていた。
俺たち二人は今日の出来事を報告し合いながら遅めの晩御飯を食べた。
その後、これまたキーファさんが準備してくれたお風呂に入り、眠りについた。




