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必殺技じゅげむ

作者: 若庭葉

 ビリビリと空気が震える。周囲に満ち満ちた気が、天高く突き上げられた彼の右拳(うけん)に集約され、眩いばかりの輝きを放った。

「見せてやる……これが俺の、新たな必殺技!」

 宿敵に笑みを見せた彼は、脚を開いて腰を落とし、青白い光に包まれた拳を、ダイナミックに振りかぶった。

 そして、(おとこ)は大きく息を吸い込み、吐き出すと共に、その技の名を高らかに叫んだ。

「必殺──ブラック企業に勤めるサラリーマンの忍者が文学少女にフラれたショックでボロアパートに引き篭もり、ブラウン管を眺めながら暇つぶしで作ったおにぎり──に使われたお米を育てた幕末の農民が、森のドラゴンと共に必殺技を放ち、大魔王を倒して聖女を救い出した──と思ったらそれは偽物で、しかもおねえだったことを知り、やるせない気持ちをコントロールする為に見上げた空に浮かんでいた入道雲──のように白い、伝説の──牛乳!」

 彼は噛むことも言い淀むこともなく、やけに長々しい技名を、見事言い切った。

 が、しかし……。

 何も起こらない。

 それどころか、「牛乳!」の叫びと共に打ち出された途端、その拳は纏っていた光を、失ってしまったではないか。

「……あれ? ……なんで?」

「……もしかしてだけど」対峙していた宿敵は、何かを思い付いたような顔で、指摘する。「お前、()()()()()んじゃね?」

「あっ!──さすが!名推理!」

「いや、名探偵な」

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― 新着の感想 ―
[一言] ナイスアイデア! 思わずクスリとしました〜(笑) 素敵な作品をありがとうございました。
[良い点] 笑いました。上手いですね。 [一言] オチ しっかり伝わりましたよ。
2020/12/06 18:02 退会済み
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