鬼に金棒
神谷がエンジュを仲間にしたその日の夜。
「あれ?ご主人はどこ行った?」
「ラックさん、亮さんならエンジュさんに書斎を案内したまま戻って無いです」
「読書にふけっているのか。本を見てたら読みたくなってしまったんだろうな」
「そうですね……」
何かを考えているような素振りを見せる一之瀬。
ラックはその感情を敏感に感じ取った。
「ご主人はどんどん強くなっていくな。精霊、しかも魔導書としての媒介もあるときた。本気を見た事は無いが、本気のご主人を相手に勝てる人間が果たしてこの世界にいるのだろうか」
「亮さんは強いです。誰にも負けません」
気分転換の会話のつもりだったラックは、思った以上の強い見解に少々驚いた。
(やっぱり遠回しにどうこうするのは性にあわないな)
気を使って見たラックだが、どうやら失敗したようだと苦笑い。
「一之瀬嬢は一体何に悩んでいるんだ?解決……できるかは分からないが、世間話程度に聞いてはやれる」
直接聞くのが手っ取り早い。
役にはたてなくとも口に出すだけで気持ちの持ちようは違ったりするものだ。
「そう……ですね。そうします」
キッチンにいた一之瀬はタオルで手を拭きながらソファに腰掛ける。
「その……私、亮さんには助けられてばかりで、魔術もまだまだですし……心の中では追いつきたいと思っているのに、近づく事も難しくなっていて…」
「なるほど、どんどん先に進むご主人にどうやったら追いつけるかと?」
「い、いえ……そうではなくて…。役に立てるかは分からないですし、努力を続けて行く気持ちはあるのです。ただ、亮さんが強くなれば、危険な事に巻き込まれる可能性は高くなりますよね……。その時、私が足を引っ張ってしまったらと」
「つまり、ご主人の迷惑では無いかと心配しているのか」
それを見て、ラックは優しげな笑顔をする。
(大人びて見えるが、やはりまだまだ子供だな)
心配の内容は子どものソレでは無い。
しかし神谷の気持ちをまだ理解できない部分は、年相応だ。
そう安堵する。
「それなら安心するといい。ご主人は微塵もそんな事を心配も迷惑もしていないはずだ」
猫の姿のラックは、一之瀬の隣で丸くなると、片目を開けて言った。
「ご主人ならこう言うだろう。『そんな事は心配するな。子どもが大人にかける迷惑など当たり前だ。むしろ君はもう少し迷惑をかけてもいいんだぞ』とね」
神谷の似ていない真似をするラック。
本人がここにいれば反論してきただろう。
「もう少し甘えてみたらどうだ?子どもなりにさ」
そして軽く目を閉じる。
何も言わない。返事もこない。
そんな沈黙を得て、先に口を開いたのは一之瀬くさの方だ。
「ありがとうございます、ラックさん。少し気分が落ち着きました」
「それは良かった」
その時、ズドンッと大きな音が事務所に響いた。
下の方からだ。
「ご主人は書斎にいるのでは無かったか?」
「そのはずだったのですが……地下の練習場からですかね」
気になった二人は音のした地下へと足を踏み入れる。
そこには黒焦げになった床と、モニターで何かを計測している神谷の姿があった。
「りょ、亮さん…?一体何を…」
「一之瀬くんか、すまない驚かせてしまったな。書斎に魔力測定用のノートを見つけたんだ。エンジュの最大火力を確認しておきたかったのもあって、試していたところだ」
「どんな魔術を使ったんですか?」
「単純な中級の火属性魔術だ。まさか魔力耐性の高いこの床を焦げ付かせる威力になるとは」
「これで……中級?」
「ふははっ ご主人さすがだな」
有り得ない火力を目の当たりにした二人。
もはや一生勝てない……むしろ誰なら神谷に勝てるのだろうかと、日に日に力を増していく神谷に先程の心配や会話など全て吹き飛んでいくのだった。
鬼に金棒 : 唯でさえ強い鬼に更に金棒を持たせるということで、元々強い者が、一層強くなること。また、似合わしいものが加わって一段と引き立つこと。
寝ても寝ても寝足りない。
究極に眠い。
家から出ないのが原因なんだと思いますが。太陽の光、浴びた方がいいかもしれませんね。
どうも、また睡眠の話です、深夜翔です。
あとがきの結構な割合睡眠について話している気がします(笑)
まぁこの時間ですと眠くてそれ以外の話が思いつかないだけなんですけどね。
読み飛ばして頂いて結構ですので……お気になさらず。
ではまた明日……さらば!




