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ことわざ大百科 ver.短小説  作者: 深夜翔
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嘘も方便

1人の死神がいた。

嘘をついたことの無い、極めて珍しい死神が。

その死神は今日も人間の魂を刈り取るため、人間界をブラブラと散歩していた。

死神が魂を取れるのは、死ぬ間際の人間のみ。死に対しての抵抗が少ない者にしかその能力を行使できないため。よって自然と死に引かれるように死神がやって来る。

病院という死の溜まり場に。

「…こんな田舎の病院に人間が多くいるはずが無いか」

死の気配を辿って来た死神は、気配だけで人間が全く見当たらない病院に入った。

しばらくウロウロとしてみるも、居たのは1人の医者だけ。病床もほとんど無く、気のせいだったのかと最後の部屋に向かう。

「おっ…いた」

ようやく見つけた病人は、1人の小さな少女だった。

ずっと窓の外を見つめまるで死んでいるかのように微動だにせずにいる。死神であるおかげでまだ生きている人間である事はすぐに分かった。

「悪いな、こっちも仕事なんで」

まだ幼い少女と言うこともあり少しの躊躇いが生まれ、意味も無しにひとりごとを呟いた。

「だれ?だれかいるの?」

「っ?!」

突然声をかけられて、咄嗟にバックステップでその場から離れる。

「お前……俺が見えてるのか」

本来死神は見えない。普通の人間には。

「……ごめんなさい…私、目が見えなくて……近くで声が聞こえたから」

よく見ると、目が開いていない。顔はこちらに向いているが、視線を全く感じない。

「いや……問題ない。こちらこそすまない。突然近寄ってしまって」

この時はただの同情だった。

この少女はもう時期死ぬ。今すぐ刈り取る必要も無い。

何より、この死神にとって自分と話せる人間は初めてだったのだ。興味が沸いたというのが正しい。

「ううん、いいの。それよりなにかお話しましょ」

それから二人……一人と一体だけの時間が始まった。

とは言え、死神は他の人からは見えない。

医者がやって来る時間帯やおそらく両親であろう人らが来る時に話すことは出来なかった。

本当に暇な時、平日の昼間。

そんな時、死神は病室に足を運び、何でもない会話を少女とする。

話をして分かったことがあった。

生まれた時から目が見えないこと。今は事故にあってここにいること。少女が自分はもうすぐ死ぬと分かっていること。

その事故で両親は他界し、あの見舞いに来ているのは友達の両親だということ。

何よりも、自分の家とこの病室以外に行ったことがないこと。

「ねえ、外の話をしてよ。私、外の世界の話聞くの好きなの」

「……そうだな」

ある時、そんな話題を振られ、死神は何となく外の世界について話した。

大きな山、広い海、白い雪、桜色の花吹雪、冬の夜空。

死神が見た事のある景色を、なるべくたくさん、綺麗なものを選んで。

「…すごいね。外の世界は広いんだね」

「………っ」

その時ふと頭に浮かんだ言葉は、死神として最低な言葉だった。その言葉は声に出す前に飲み込んだが、自分がそんな事を考えたという事実が、死神にとって驚くべきことだった。

そしてもう一度、頭の中を整理する。

でも、言わざるを得なかった。言葉にしなければ気がすまなかったのだ。

「なぁ、見たいか?」

「?」

「そんな景色をさ。その目で、自分で」

声色が変わった。死神は自分でも感じていた。

「みれるなら……見てみたい。けど、ダメだよ。私、もうすぐ死ぬんだもん」

「いや、死なないさ」

その言葉が死神の決意、そして死神の禁忌に触れる事を意味した。

「俺が生き残らせてやる。俺が見せてやるさ」

そう言葉にした時、自分の中の何かが変化した気がした。今までいくつもの魂を刈り取って来た死神に、有り得ては行けない変化が起こったのだ。

「今日はここで、じゃあな」

いち早く行動したかった死神は、そう言い残すと座っていたベッドから立ち上がる。

急いで病室から出ようとして、しかしそれは服の裾を掴まれ失敗した。

「私ね……あなたとみたい。1番にあなたに会いたい」

視線は合わないのに、見つめあっている気がする。

「あなたが話た場所を、あなたと見てみたい。私、まだあなたのこと何も知らないから」

それは絶対に無理な事だった。

そもそもこうして話せているのも、少女の目が見えていないからなのだ。

何より、禁忌に手を伸ばそうとしている死神に、この先この少女と会うことはできるはずが無かった。

でも、今は、死神にとって少女の笑顔を守ることが最優先だった。

「そうだな。どこへでも連れて行ってやる。約束だ」


そうして、死神は初めて、最初で最後の嘘をついた。


それから数日後、少女の体が唐突に回復に向かいだし、その過程で目が見えるようになり、医者が大いに驚き、友達の両親が涙ながらに喜ぶ姿がその病室にはあった。

初めて外の世界を目で見た彼女は、何故か涙が止まらなかった。

感動した。

けれどこの涙はそれが原因では無い気がした。

なのに不思議なことに思い出せない。


約束をしたその日に、死神がかけた呪い。

『俺と会ったこと、話したこと、目を覚ました時には全て忘れてくれ』

少女は窓の外を見た。

満開の桜が咲いている。

「桜色の花吹雪………」

無意識に出たその言葉は、どこか暖かく、懐かしく感じた。

その言葉に応えるように、爽やかな風が満開の花吹雪を少女の世界に、散りばめていった。



嘘も方便 : 時と場合によっては、嘘も手段として必要である。

私には珍しく、少し感動しました。

自分で書いているのに。笑


どうも、結構満足した、深夜翔です。

国語力皆無な私の作品ですので、何を言っているのか伝わらない可能性が高いです。

が、自分の中では割とよくできたと感じています。

伝わっていことを願います。


ではまた明日……さらば!

伝えられる努力をしていきます………はい

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