韋編三度絶つ
「亮さん、おはようございます」
「おはよう、相変わらず早いな」
彼女は俺の助手。建て前定そういう事になっているが、要は保護者のような者だ。
学院に登校する平日でも変わらずに朝ごはんと弁当を作る。俺の起きる時間に合わせて手際よくコーヒーまで入れて。
「すみません…今日は学院の日直でもう時間に…」
「気にしなくていい。後はこちらでやっておくよ」
「ありがとうございます。行ってきます」
「ああ、行ってらっしゃい」
言っておくが強制でやらせているのではない。
俺の方が早く起きた時にはこちらが準備をしている。が、気がつくと俺よりも早く起きるようになっている。故意的に時間を早めても同じく。
よって朝から一人でいるのは久しぶりだ。
「ラックは……まだ寝ているか」
いうのは俺の使い魔……まぁ飼い猫でいいか。
念の為話せるとだけ言っておこう。
コーヒーを片手に朝から読書を進める。
一之瀬君が用意してくれた朝食を食べ、綺麗に片付けると再び読書。暇なのかと言われればそうだと言わざる得ない。
探偵は依頼が無ければ暇なのだ。
一冊が読み終わると事務所の掃除を始める。
休日は一之瀬君が先にやってしまうのだが、平日はこちらの仕事だ。時間にして15分程度。1階2階を軽く掃除して終了。
リビング兼事務所である部屋に戻り椅子に腰かけ別の本を読む。
今読んでいるのは推理小説だが、読むジャンルは決まっていない。面白ければ何でも読む。
……確かに暇な時は推理小説が多いな。
上下巻に分かれていると、下巻を読み終えた後、再び上巻を読みたくなるからだ。こんな事は時間がある時にしかできない。
「ご主人、おはよう」
「ラックか、随分遅かったな」
「まあな……」
猫の姿のラックがソファで丸くなる。まだ寝るのか。
次いでに時計を見れば10時を回ったところ。
昼飯にはまだ早いな。
そこから再度読書の続きをする。
「………よし」
結局最後まで読み終えてしまった。
集中していた反動で体を動かす。立ち上がったのと同時に12時を知らせる鐘がなった。
いつの間にかこんな時間か。
冷蔵庫を開けると見覚えのない皿が複数置いてある。その上には書き置きが。
『お昼も作っておきました、コンビニばかりは良くないです』
用意周到というか……昨日一昨日とコンビニで済ました結果、軽く注意されてしまった。
丁寧にラックの分まで置いてある。
時間の無い中作ってくれた昼飯を有難く受け取り、胃袋に収める。空いた皿を洗い片付けを済ませ、午後も読書に更ける。下巻が読み終わると、再び上巻を手に取る。何度も読んでいるが、それでも1巻2、3時間かけてじっくりと読み進める。
雑に読む事は書物にも作者にも失礼だ。
本日2周目の上巻を読み終え、下巻を手に取ったところで玄関から声が聞こえた。
「亮さん、ただいまです」
扉を開けて入ってきたのは一之瀬君だ。
窓の外はすっかり茜色に染まっている。
「おかえり、今日は随分と荷物が多いな」
「その…帰るついでに買い物に行ってきて…」
手に持っているのは近くのスーパーの袋。
「さすがに買い物くらいは行って来るぞ」
「いえっ!偶然近くに用事があったので」
気を使わせてしまっていないだろうか。
こうも押し付けるような形になってしまうと、こちらとしては申し訳ない。
本人はむしろ喜んで行っているようだが、たまには休んで欲しいものだ。
「夕飯の用意を始めますね」
しかし残念な事に、料理のできない俺に今は出る幕が無さそうだ。
今度なにかプレゼントでも買ってこよう。
結局今日も彼女の働きぶりに、白旗をあげる他無かった。
韋編三度絶つ : 書物を何度も読むこと。書物を熟読することの喩え。
読んでくれた皆さん、ありがとうございます。
どうも、深夜翔です。
あとがきで話す事無かったです。今回も。
なので他作品の宣伝を。
そろそろ『その探偵、天才魔術師』を投稿する予定です。是非ともそちらもご覧になって頂きたい次第です。
その為に私深夜のTwitterもフォローをよろしくお願いします。
……えっ?さては深夜じゃ無いな……って?
雑談メインでは無いですからね?
ではまた明日……さらば!




