秋の日は釣瓶落とし
「おっじゃましまーす!」
やかましさ全開の声で事務所へと入ってきたのは妹の凛。
今日は助手である一ノ瀬君と遊ぶ約束をしているらしい。休日なのだから特に文句は無いが、何故か妙に懐いたままの妹はうるさい事この上ない。
「亮にぃ!結衣は?」
「ああ、飲み物が無いと言って先程買いに出かけたぞ。適当に静かに待っていろ」
「そっかーじゃあちょっと待ってよー」
今は10月。夏の暑さも和らぎ、過ごしやすい季節だ。
読書の秋、スポーツの秋、芸術の秋。
夜が長くなったり、過ごしやすさから環境のストレスが軽減される事によって、様々な物事に取り組みやすくなる。
出かけるならば、確かに秋というのはもってこいの季節と言える。静かな環境を好むおれからすれば迷惑な話だが。一ノ瀬君との約束でなければ絶対に家には入れなかっただろうな。
それからしばらくして、一ノ瀬君が買い物から帰ってきて、2人は一ノ瀬君の部屋へと入っていった。
そうなればリビングは誠に静かなもので、読書も捗る。
何時間読んでいたのか、気づけば4時を回っていた。中学生に5時までには帰れと言うのも酷な話ではあるが、この時期は暗くなるのも早い。
念の為に部屋のドアをノックし廊下から声をかける。
「凛、暗くなる前には帰れよ」
「あっ!亮にぃ?!分かってるよ!」
何をしているのか、随分とバタバタと音がしている。おそらく時間など見てはいないだろうが、声をかけさえすればいいだろう。
あまり、子供同士の休日に口を挟むのは良くないかな。
戻って読書の続きでもしていよう。
と言って約1時間後。
案の定時間を見ていなかったようで、慌てて2階から降りてきた時には既に外は真っ暗だった。
「亮にぃ!声かけてよ!」
「時計を確認していないお前が悪い。この時期はは暗くなるのが早いと昔から言っているだろう」
まだ実家に住んでいた頃も、留守番を俺に頼んで遊びに行っていた。結局、暗くなって俺が迎えに行くことになるのだ。
「だって30分前はまだ全然明るかったのにー!」
30分前には一応確認していたらしい。
それだけでも少し進歩しているか。
「送って行ってやる。早く外に出ろ」
「ほんと?やったー!」
「亮さん、私も行きます」
外に出れば、澄んだ空に綺麗な月と星たちが輝いているのが見て取れる。さすがに少し寒いが子どもにはあまり関係ないようだ。凛は相変わらずうるさいし、今から帰るのであろう子供たちも元気に走っている。
これからより日が短くなる。
もしかしたら、天はそれを予期して早めに帰らせるよう太陽を早めに撤退させるのかもしれないな。
そんな事を考えながら、月が照らす道を歩いて行った。
秋の日は釣瓶落とし : 秋の夕日は沈み始めるとたちまち落ちるということを、釣瓶落としに喩えた言葉。
最近やたらと暑いですね。
気温の変化に敏感な私は、既に体調を崩しかけております。どうか四季様、しっかりと春夏秋冬を守っていただきたく………
はい、深夜翔です。
初めはなるべく1文程度適当なコメントを入れることを心がけております。
ちなみに、釣瓶とは、井戸の水を汲み上げるために縄をつけたおけの事だそうです。
釣瓶落としは井戸におけがまっすぐ落ちていく様って感じかな。
ま、まぁ…知ってたし?………。
それではまた明日!…さらば!