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ことわざ大百科 ver.短小説  作者: 深夜翔
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青は藍より出でて藍より青し

「師匠ー!そろそろ作り方教えてくれよ!」

「バカヤロウ!まだお客さんがいるだろうが!」

俺はここの店長が嫌いだ。

すぐ怒るし、基本的に何でも適当だし。

「いらっしゃいませー!ご注文はおきまりですか?」

「んーオススメは?」

「それはもちろんこの特製豚骨ラーメンですよ!麺は硬さ自由、味も濃さが選べます!何よりこのチャーシューは最高です!是非とも食べていってください!」

だけどここのラーメンは大好きだ。

今まで食べてきた中で1番美味しい。世界一と言っても良い。

だから親父に頼んで弟子入りさせてもらった。世界一のラーメンを自分でも作って見たかったから。

別に自分の店を開きたいだとか、そういうのじゃ無い。ただ純粋に、この美味しさの秘訣を少しでも吸収出来たら良いなと思っただけだ。

「ありがとうございましたー!」

今日のお客さんもあれで最後。

閉店時間になって、店内の片付けも早々に終わらせた。

「師匠!作り方教えてくれ!」

「知らん!そんなものは自分で覚えろ!」

厨房の奥は師匠の家だ。すぐそこに置いてある洗濯機に脱いだ服をそのままぶち込んで、さっさと自室に戻ってしまった。

「なんでだよ!今日もダメなのか…」

弟子入りしてから今日で1ヶ月が経った。

未だに何ひとつとして教えて貰えない。

自分でやれの一点張り。意味が分からない。

知らないから教えて貰いたいのに、自分でやれなんてできるわけが無い。

「あーもういいよ!分かったよ!」

さすがにもう限界だった。

自分でやれだって?いいよ、やってやるよ!

厨房が汚れても知らないからな!

俺は1ヶ月目にして、初めて自分で作り始めたのだった。


「……んぁ?」

目が覚めると俺は机の上に突っ伏して寝ていた。

昨日はあの後ずっと試行錯誤していたんだっけ。

師匠がいつも作っているのを見様見真似で……。

「やっべ」

そして気がついた。片付けを何もしていない事に。

「師匠起きちゃったかな?急いで片付けないと……あれ」

慌てて厨房に入れば、何事も無かったかのように綺麗な厨房がそこにはあった。

仕入れ用の冷蔵庫前に師匠がしゃがんでメモを取っている。これはいつもの光景だ。

「師匠おはよう……えっと」

「何をしている?後1時間で開店だ、早く準備してこい」

「あ、了解!」

結局、このあとはいつも通り接客や雑用で1日が終わる。

もちろん終わってから、

「師匠!作り方教えて……」

「うるさい!早く片付けをしろ!」

このやり取りをするだけ。

いいよ、1人でやるから。

師匠が自室に戻ったのを見計らって、昨日の続きを始める。どこまでやってたかは体が記憶しているから、材料を持ってくるだけだ。

そう思って冷蔵庫を開けると、ボールの下に紙切れが挟まっていた。

『脂の量を気にしろ』

これだけ。豪快な字でたったのこれだけ。

だけどこれが誰のかを見て、朝の出来事を思い出して、思わず泣きそうになった。なんだ、見てくれてるじゃん。

そこからは、毎日少しずつ、冷蔵庫にあるメモを頼りに少しずつ改良して、失敗を繰り返した。


そこからさらに5ヶ月。

「ダメだ……何で師匠のラーメン見たいな味にならないんだろう……」

確実に美味しくはなっているはず。なのに一向に追いつける気がしない。悔しい。

分かっていたけど、やっぱり俺には難しいのかも。

そう思うと余計に悔しい。

だから泣きはするけど諦めない。

その日も夜遅くまで頑張って、そのまま寝落ちしてしまった。

「起きろ!いつまで寝ている!」

最近は前よりも遅くまでやってるせいで、よく師匠に怒られて起きる。

時計を見れば開店まで後1時間。

「まじかっやっべ!」

急いで着替えると、店内の掃除をして開店の準備をする。

後は時間まで待機するだけとなった時、師匠が奥から珍しく出てきてこちらに声をかけた。

「大輔、これを食べてみろ」

そう言って出してきたのは、1杯のラーメン。

「えっ……いいの?」

「いいから」

そうごり押されて箸を手に取って1口。

やっぱり師匠のラーメンは美味しい。それに、いつもと少し違って味が俺好みになっている。

俺に気を使って作ってくれたのかな。

「ぷはぁ…美味しかった!」

汁までしっかり飲み干し、満足する。

「気が付かないか?」

すると、師匠がいつもの真顔で尋ねてきた。

「?いつも以上に美味しかったよ!」

「………そうか、なら良かった」

師匠が1人納得しているけど、俺の頭はハテナでいっぱいだ。ただ、師匠がとても満足したような、あんまり見たことの無い表情をしていたのは今でも覚えている。それよりも、その後の言葉の方が嬉しかったのに。

「今のラーメンは、お前が作ったやつだ」

「……へ?」

「そこに作られていたのを、加熱し直して出しただけだ。正真正銘それはお前のラーメンだよ」

後のことはそんなに覚えてない。

ただ、気づいたら涙が溢れて来て、次の瞬間にはいつもの師匠が時間だからさっさと片付けろと怒鳴ってきて。頭ん中がぐちゃぐちゃのまま接客してた。

終わってから師匠が

「これからはお前のラーメンもメニューに載せる。いつでも作れるようにしておけ」ってさ。

その日は緊張しすぎて寝れなかったな。

次の日、店内に来てみたら、メニュー表に『豚骨ラーメンver.大輔』って書いてあって、師匠らしいなって思ってた。

それから何日だったか忘れたけど、いつの間にか俺のラーメンも師匠と同じくらい……もしかしたらそれ以上に人気になってた。

それに、時々見せる師匠の満足気な顔も今ならわかる。

多分、俺に期待して、嬉しく思ってくれてたんじゃないかってな。



十数年後ーー

「いらっしゃい!おっ神谷の兄ちゃん、昼間から珍しいな」

「大輔さんこんにちは。ちょうど近くを通りかかってな。あ、いつものやつを」

「あいよ!毎度あり!」

俺は無事に自分の店を持っている。

師匠は俺が店を開いてからすぐに店仕舞いした。

師匠曰く、「お前がいれば、俺のラーメンはまだまだ続くからな」だそうだ。

最後まで適当だったが、本当に今なら言える。

ありがとうございますってな。

【ラーメン屋佐藤】



青は藍より出でて藍より青し : 教えを受けた者が教えた人よりも優れること。弟子の方が師匠よりも優れること。

初っ端から露骨な宣伝いっきまーす!

今回の話は、登場人物がわたくし深夜が投稿している『その探偵、天才魔術師』に出てくるキャラでございます。

超微妙な番外編的な感じだと思ってくれれば……(笑)


さて、案外今日で4日目。

思ったよりかは続いているこの企画。

まだまだモチベはありますとも!

ということで、また明日……さらば!

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