一寸の光陰軽んずべからず
将来何をしたいのか。
小学生時代は"将来の夢"って感じで簡単になりたいモノが出てきた気がする。電車の運転手、大工、料理人、今だとYouTuberとかって子どももいるんだっけか。
ただ、この時期になると夢と現実が違う事を身をもって知ることになる。
「進路調査表かぁ……」
深くため息が出る。
大学に行くのか、就職するのか、はたまた専門に行くのか。こうしてみると意外と選択肢があるように感じるけれど将来やりたい事も無いオレは、どの道も遠く長く見えてしまう。
「悩んでる時間がもったいないよ」
友達からはそう言われた。
この時間こそが1番無駄だと自分でも理解しているつもりだ。ならば適当に書くか?
それができていたら苦労はしない。
出来ないからこうして、夕方みんなが帰った放課後まで居残る事態に陥っているんだ。
どーすっかなー。
グダグダと悩んでいると、突然教室の扉が開く。
目の前のプリントとにらめっこをしていたオレは、めちゃくちゃ驚いた。
「あれ?君一人?」
そこには見覚えの無い女の子が1人、制服姿で立っていた。
「あの……誰?」
俺が3年だから、少なくとも後輩だろう。
「……あっ!ここ3年の教室なのか!」
廊下に掛かっているクラスの札を見て何やら1人で盛り上がっていた。
「いやー昔はここ2年だったのにね…_時が経つのは早いなぁ。ところで君、こんな時間まで何してるの?」
こいつは何を言っているのか。
オレが知る限り、この教室はずっと3年だと思うんだが。ノリがいいのか、この女は何食わぬ顔でこちらのパーソナルスペースに入ってくる。
「ふむふむ、わっ!進路調査表?」
ちらっと横を見れば、すぐそこに顔がある。
オレのような高校生にはメンタル的にきつい。
「何を悩んでるの?」
しかし、不思議と緊張は無い。
普段は親にも相談しないのに、何故かこの時は話す気になったんだ。
「見ての通り進路だよ。やりたい事も何も無い、けど適当には書けない。無駄な時間を過ごしてんの」
「もったいないよ!」
いきなりそんな事を言う。
それは友達にも言われた事だ。
「時間って自分が考えている以上に早いんだよ。悩むなとは言わないけど、悩むよりも行動した方が案外すぐに決まるもんだよ!やる事が無いんだったら、とりあえず"勉強して上の大学に行く"ってだけでもいいんじゃない?」
しかし、友達以上に説得力、納得力のある言葉を聞いた。少し含みがあったような気がするけど、この時のオレは気持ちがスっと澄んだような感情に囚われていた。
「とりあえず……か」
それはたくさん聞いてきた言葉のはずだった。
でも、不思議としっくり来た。
別にやりたい事なんてなくてもいいのか……。
「そうだね、とりあえず"上を目指す"で!」
そのまま、紙に書きなぐった。お世辞にも綺麗とは言い難い文字だったけれど、今のオレにはぴったりだ。
「おっ!その意気だよ!頑張れ!」
元気の出るいい声がした。
「君!ありが…と……う?」
声がして、お礼を言うために顔を上げると、教室にいたのは俺1人だった。
横にも、廊下にも、いない。空いていたはずの扉も閉まっている。一瞬ぽかんとなって扉を眺めていると、すぐに再び開く。
「内藤、進路調査表は書き終わったか?」
少し不機嫌そうな先生がこちらに向かってくる。
「どうぞ!オレは帰って勉強するんで!さようなら!」
そんなことは気にせずに、時間が惜しいと走って教室を飛び出した。
「"上を目指す"か……」
走りながら呟くと、不思議と笑顔になる。
そうだよ、一分一秒無駄には出来ない。
今やれる事を全力でやって見ないと。
『いい表情になったじゃん。時間は無駄にしないようにね!』
そんな声が、聞こえた気がした。
一寸の光陰軽んずべからず : 僅かな時間も無駄にしてはいけない。
やっぱりこの時期だからなのか、受験だったり進路だったりのネタばかりになりがちです。
どうも、実は自分も受験生、深夜翔です。
私は既に進路も決まっているので、小説書いてても問題はありません。
毎日しっかり投稿していきます。
それではまた明日……さらば!
*あくまでこれは私の主観的意見ですので、あまり鵜呑みにせずにお楽しみください。




