一寸先は闇
絶対に正しいと言える判断など無い。
それは僕が学生時代に学んだ事だ。
今はこうしてとある学校の教師をしているが、受験期のこの時期になると、相談しに来る生徒にどうしても言いたくなる。
「先生にもそれが正しいとは言えない」と。
問題なのはやる気であって成績や学歴では無い。
しかし、教師が受験生である生徒を不安にさせるような事は言えない。それは危険だ、成績が危ないから辞めておけ、もう少し上を目指したらどうだ。そんな不確定な情報を、ハッタリと共に口に出さなければいけないのだ。
そんな時、ある1人の生徒にその内情を汲まれる出来事があった。
神谷亮。元から少し不思議な雰囲気のある生徒ではあった。
進路相談では、大学に行かず警察魔術隊に入ると言った。無理だ、難しい、辞めておいた方がいいぞと思ってもいない事を、実際の驚きを混ぜて投げかけた。
すると、神谷は少し思案した後にこちらをまっすぐと見て言ったのだ。
「先生、本当はそんな事思ってないですよね。絶対なんてこの世に存在しない。問題なのは成績ではなく気概と根気です」
ドキリとした。
日頃から察しのいい神谷だが、実際に相手にしてみると恐ろしいほどに内情を読み取ってくる。
表情や声色には出さないように気をつけていたのだが。
それを容易く暴き、教師に向かって正面から言ってくる。自然、顔には笑みが出てくる。
「どうしてそう思った?」
「先生、進路相談以外で受験などの情報に触れないですよね。それに、進路に口を挟む時、少し諦めの色があるように見えました」
「ははははっ。そうだな!その通りだ!」
堂々とした発言に、笑うしか無かった。
「よくわかったな。そうだとも、必要なのはやる気だ」
心の中は不思議と満足感に包まれている。
「その上で、正直な意見を聞きたいですね。俺の進路はこれでもよろしいでしょうか」
改めて…といった様子だ。
「無論、ダメだとは言わん。それだけの信念と気概があるのであれば、こちらからは何も言うことはない。頑張れよ」
スッキリとした気分だった。
教師になって初めて素直に生徒を送り出せた。
将来など誰にも分からない。それこそ誰もが知っている事だろう。将来という見えない闇に、やる気という明かりを持って進むのが受験だ。
失敗も成功も無い。あるのは自分自身で見つけ出した未来だけなのだから。
一寸先は闇 : 行く道の一寸先には何が転がっているか分からない。将来のことは予測できない。
どうも、勉強なんてしたくない、深夜翔です。
こんなことを言っては受験生に申し訳ないですが、勉強が好きな人などそんなにたくさんはいないはずです。
それでも必死にするのは、未来のためです。
分からない未来であれど、自分で明かりを用意する事はできます。
その光は、やる気と努力次第です。
頑張ってください!
それではまた明日……さらば!




