一葉落ちて天下の秋を知る
嫌な予感がする。
予感、気配、推測。そんな不確かな物を信じるようになったのはひとえにあいつのおかげだと思う。
その日はこの辺りでは珍しく強い雨が降っていた。
強い…と言っても九州などの雨が降る地域からすればたいした強さでは無い程度の雨。
よって、帰宅時に窓の外を見て憂鬱になる以外はいつもと変わらない。
今は高校1年生の5月。クラスにも馴染めてきて、友達もでき始めたばかり。そんな中でも一際面白く、癖の強いやつと気が合い一緒に帰るほどに仲良くなった。
そいつが癖が強い、変人と呼ばれているのは、その異常なまでの慎重さにある。鞄には防災頭巾、雨の日は折りたたみ傘にカッパ、学校に置き傘2本と用意周到な上に、転んだ時に危ない、雷が落ちる可能性が上がるとカッパを好んで着る。
今日もホームルームが終わり、一緒に帰るために席に近づくと周りよりも明らかに多い荷物を準備していた。
「相変わらずでかい鞄だな……はよ帰ろうぜ」
「ちょっと待って……後はこれとこれ…おっけー」
パンパンの鞄は転んだ際に頭を守るために防災頭巾を中にしまっているからだ。
準備ができた友人をと廊下に出て階段に向かう。
4階に位置している俺たちの学年は、帰るためにかなりの階段を下らないといけない。
階段手前まで来ると、早く帰るために急いでいる生徒で溢れかえっていた。慌てて階段を駆け下がって行く人もいて、少し危なげに見える。
「俺らも早く帰ろ」
「………」
帰るためにその人混みに突っ込もうと声をかけると、友人は黙って階段の上にいる生徒を見つめている。
「どうかしたか?」
少し心配して尋ねる。
「あいつ、転ぶよ」
そう言って指を指したのは、1人の男子生徒。
ただ特に荷物が多いようには見えないし、普通の足取りで階段を使おうとしている。
「ほんとに?」
「上履きの底がめくれかけてる。階段に踏み込んだ瞬間にそこが抜けてつまずく」
こいつの発言には、たまに突拍子も無い事があるが、俺は割と信用している。
何よりも理由がしっかりしている意見なのが、信用度を高めていると言っていい。
もしも本当に転ぶのであれば、あの場所はまずい。
あそこで転べば前を下りる生徒たちを巻き添えにしてしまう。
「そこの君……」
念の為に早めに声をかけようと近づいたが、少し遅かった。なんと、友人の予想通り階段手前で上履きのそこがめくれ、勢いよく前に躓いたのだ。
「やべっ」
慌てて走り出すと、早めに近づいていたおかげもあって、何とかカバンを掴むことに成功。
前の人に突っ込む前に助けられた。
「す、すみません……ありがとう」
「危なかったな…気をつけて」
同級生なのに敬語で話されたことに少し疑問を持ちながら、ほっと一息つく。
今のは本当に危なかった。
「よく分かったな!天才かやっぱり」
「よく見れば分かる」
その時の友人のなんとも言えない冷たい目を覚えている。こいつは安全安心という言葉を軽んじる者を許さない。特に自分以外の誰かを巻き込むような輩を。
その事件があってから、俺は予想と言う不確かな物を信じるようになったのだ。
そして今、目の前を歩く2人の男子を見て思ている。
おそらく時間がギリギリで走って行こうとでも言ったのだろう。その途中のT字路を視界に入れて、
(あそこで車とぶつかるぞ、あれ)
そんな予感がしていた。
目の前で事故られるのは困るので、慌ててその2人を追いかける。が、ギリギリ間に合わず真横から出てきた車と危うく当たりそうになっていた。
運転手からものすごい怒鳴られていたが、こちらとしては事故にならなくて良かったとほっとする。
「やっぱ毒されてるよなぁ俺も」
そんな事を、友人……拓也の顔を思い浮かべながら苦笑いして歩いていくのだった。
一葉落ちて天下の秋を知る : 落葉の早い青桐の葉が一枚落ちるのを見て秋の訪れを察するように、わずかな前兆を見て、その後に起こるであろう大事をいち早く察知することをいう。 また、わずかな前兆から衰亡を予知するたとえとしても使う。
寒いです。
どう見ても突然寒くなりすぎです。凍え死んでしまいます。水が冷たすぎて手が凍りそうですもん。
どうも、手がキンキンに冷えてやがる、深夜翔です。
寒すぎるというよりも、今までが暖かすぎたんだと思います。これが普通なのです……やばいですね。
皆さん、体調にはくれぐれも気をつけてください。
それではまた明日……さらば!




