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ことわざ大百科 ver.短小説  作者: 深夜翔
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逢うは別れの始め

【第六学院 体育館】

「今日から君たちは、ここ第六学院に入学してきた。我が生徒の一員になった事、心から嬉しく思う…………」

朝から長いなこの校長は。

中学の入学式にわざわざ高校生まで出席しなくてもいいだろうが。

いくら中高一貫だからって、入学式まで一緒にやる必要はない。………去年も同じ事を考えていた気がする。

入ってきた1年生も退屈だろう、可哀想に。

そうして約1時間に及ぶ入学式を終え、俺は教室に戻った。

入学式は面倒だが、今日はこれで終わりだ。

早く帰れるだけラッキーだと思おう。

「祐介!今日もバイトか?」

「そうなんだよなー」

俺は部活には入らずに、バイトをしている。

もちろんお金が欲しいからだ。

「じゃあな」

「おう、また明日」

俺も帰るか。

鞄を背負い、部活民達が右往左往する中、昇降口へ向かう。

すると、廊下の隅にやけにキョロキョロしている女子を見つけて足を止める。

「どうした?………1年生か」

学年ごとに上履きの色が違い、実際にわかりやすいと実感した。

「あ、すみません。入学式の時にトイレに行って……迷ってしまって」

「なるほど」

確かにこの学院は無駄に広いからなぁ。俺も1年の初めの頃は1人で行動したくなかったくらいだ。

「送って行ってやるよ。1年何組だ?」

「えっ…あ、a組です」

どうせ昇降口まで行かないと行けないんだ。

1階の教室まで行っても問題は無い。

「いっ……」

「どうした?」

歩き出すと、その女子は少し足を痛がる。

見てみると少し腫れているようだ。

「さっき階段で転んでしまって……」

えへへと照れながら笑う。

「これでも巻いておけ」

俺はポケットから赤いハンカチを取り出して手渡す。

残念ながら女子と上手く話せるほどのコミュ力も無いのに、足に直接触れるわけが無い。

「あ、ありがとうございます!」

ハンカチひとつでどうこうできるとも思えないが、少しはマシだと思う。

俺は歩く速度をゆっくりにしながら、昇降口と1年の教室へ続く廊下まで歩いた。

「ここを真っ直ぐ行って、あそこのトイレの横を右に曲がれば1年の教室だ」

「はい、ありがとうございますっ!…あのっ」

「悪いな、俺はこの後予定があるから帰る。さすがに迷わないと思うが、大丈夫だよな」

「はい!」

ふと時計を見ると既に30分が経過している。

まずい、早く帰らないとバイトに間に合わない。

「じゃあな、ああ、ハンカチは返さなくていいから、大丈夫そうなら捨てておいてくれ」

少し急ぐため、俺はそのまま廊下を走って行った。

外は入学式にはふさわしい晴れた空に、ちょうど満開の桜が1つの絵のように舞っていた。

ちなみに、ギリギリだがバイトには間に合った。


ー約2年後ー

こう言っては何だけど、卒業と言うのは思っていたよりも早い。

思い返してもさして良い思い出があったわけでは無いが、卒業式を終えれば多少は悲しい気持ちもある。

「もう卒業だってなぁ……早いもんだよな」

「12年間一緒だったお前ともお別れだ」

「泣いてくれたっていいんだぜ?」

「やかましい」

仲の良かった奴らも、みんな大学は違う所に行く。

それぞれやりたい事を精一杯追うために。

気を緩めれば涙が出そうではあるが、人前で泣くのは少し恥ずかしい。必死に堪えながら無事に最後のホームルームが終わった。

友達とグダグダ話をして、俺は校舎を出るため1人で昇降口に向かう。

1人なのにはきちんと理由があった。

「卒業おめでとうございます、先輩」

待っていたのは1人の女子。

上履きの色は、5つ下の学年のもの。

手には赤いハンカチが握られている。

「まだ持ってたんだな」

「当たり前です」

おそらく勘づいている人はいるだろうが、こいつは入学式の時に迷子になっていた女子。

あろうことか、あの日から何故か俺によく突っかかって来るようになっていたのだ。昼休みには、他学年だと言うのに弁当を持ってやって来るわ、登校中に見かければ普通に話しかけてくる。

厄介な奴だとわかった時には遅かった。

「先輩は、遠くの大学に行くんですよね……」

「そうだな。来週には引っ越す予定だ」

今度はゆっくりと歩きながら話しをする。

「もう……会えないんでしょうか」

そんな悲しい顔をされると、こちらが反応に困る。

こいつの想いには、結局2年間気づいていながら無視をしてきた。そう言うのはあまり好まなかったから。

しかし……今日はそうもいかない。

「まだ…伝えていない事だって……たくさんあるのに」

「………そのハンカチ」

悩んだ結果出てきた言葉は、予想以上に大きな声で驚いた。

「まだ持っていてくれ。いつか必ず、返してもらいに戻ってくる。それでどうだ?」

先延ばしにする事がいい事かどうかは分からない。

だが、これが今の最善策だと思った。

それは、相手にも伝わってくれた。

「……はいっ!先輩はいっつも…ヘタレですね……私はこう見えて結構待つの得意なんですよ」

「知ってるよ」

お互い自然と出てきた涙を隠すように笑った。

外は例年よりも暖かい。

少しせっかちな桜が花開き、青空に少しの彩りを添えるように空へ舞っていった。



逢うは別れの始め : 出会ったときから別れは始まっているという意味で、会った人とは必ずいつか別れるものだということ。

どうも、深夜翔です。

安心してください、今日も投稿できましたよ。

まだ2日目ですからね。


軽く感想をいえば、こんな出会いが俺にも欲しかったです………(泣)


ってなわけで今日はこの辺で。

ではまた明日……さらば!

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