雨垂れ石を穿つ
これは俺がまだ学生だった頃の話。
いつものように家で魔術の訓練をしていた俺のところに、妹の凛が泣きそうな顔でやってきた。
「どうした?」
「私も……強くなりたい…!」
「突然だな……なにかあったのか?」
あんまり深く掘り下げると泣き出しそうな勢いだったので、聞ける範囲で尋ねた。
凛の話では、学校で魔術の勉強をしていて男子と口論になり、謎に戦闘が始まって負けそうになった所で先生がやってきて止められたらしい。
要は体格差のある男子に負けそうになった事が悔しいらしい。
「だがな、力と言うのは簡単に手に入るものじゃないぞ。長い練習に着いてこれるか?」
「……私頑張る!」
随分とやる気だな。
負けた事がそんなに悔しかったのか……。
「そうだな、凛はどんな魔術師が得意だったか」
「私は剣とか作るのできるよ!」
そう言うと、手に小さな小剣が創り出された。
その歳にしてはかなりの腕だ。
「2本目は行けるか?」
「うぅぅ……できた!」
なるほど、魔力の消費量が大きいが精度は中々良い。
「そしたら、その剣を浮かせてみようか」
「浮かせ……る?」
頭にハテナが浮かぶ。わざわざ首を傾げなくても。
「その剣は凛の魔力そのものだ。魔力を繋いだままにしておけば動かす事ができる」
「……わかんない!」
さすがに難しいか。
「分かった。それじゃ魔力操作の練習だ。このボールを手に触れずに動かしてみるんだ。出来たら次に行こう」
正直、この時点ではすぐに飽きると思っていた。
いくら悔しかったからと言って、まだ小学校低学年。こんな面白くも無い作業を続けられないと考えていたのだが、凛には努力の才能があった。
学校から帰ってくると、すぐに俺の所へ来ては魔力操作の練習をする。
2週間も続けていると、ぎこちないながらも上手く操作できるようになっていた。
更に1週間すると、思い通りに動かせるようになった。ここまで諦めずに努力した凛に、驚きと意外の念を抱いたのは仕方ない事だ。
「よく頑張ったな。そこまで出来れば自分で生成したものくらいは簡単に操作できるはずだ」
「やってみる!」
前と同じ様に剣を生成……しただけでは無かった。
その剣は凛の周りに浮遊し、思い通りに動いている。何よりも、使用した魔法陣が違った。
「やった!なんかできた!」
「頑張ったな、本当に。その努力は絶対に無駄にはならない。学校の男子を見返してやれ!」
「ありがとう!亮にぃ!」
思い切り抱きつかれた俺は後ろへと倒れる。
ただ、その嬉しそうな顔にこちらも満足したのだ。
「そういえば、何故そんなにも怒ったんだ?」
口論になったきっかけを聞いていなかった。
ここまでのやる気を出させたのだから、相当な理由があると思うが……。
「それは……秘密!」
「秘密か、分かった」
後にこの魔術が新しいものだと言うこと、妹が俺をバカにされたことに心から怒っていたということを知ったのだった。
雨垂れ石を穿つ : 一定の場所に落ちる雨だれは、長い間に下にある石に穴を穿つという意味から、小さな力でも根気よく続ければ成功することの喩え。
本当に寒くなりました。
朝の布団が俺を離してくれません、困ったものですね。おやすみなさい……。
はっ!どうも、深夜翔です!
寝てませんよ?もちろん。
寒くなってしまい、風邪も流行り出す季節。
みなさん、くれぐれも体調には気をつけてください。
それでは、今回も読んでくれてありがとうございます。ではまた明日……さらば!




