痘痕も靨
休日の暇な時間、何となく気が向いて押し入れを整理していたら、懐かしいアルバムが出てきた。
中学時代の卒業アルバムだ。
引越しの時になくしたと思っていたけど、こんな所にしまってあったとは。
何気なく開いてみれば、間に1枚の写真が挟まっていた。1人の女子と泣きながら笑っている写真だ。
その女子は、俺が高校生の時に入学式で出会った。
入学早々迷子になっていた所を助けてやったのだ。
俺の学院は中高一貫で、入学式は中学に上がってくる生徒のみ。よって5つも歳が離れている。
更には俺自身が部活をせずにバイトをしている身だった事もあって、その時はもう会わないだろうなと思っていた。
けど、その女子は以外にも厄介で、部活どころか学年も5つも上の俺の所に何度も遊びに来た。
初めはお礼が言いたいとかそんな理由だったはずが、1ヶ月もすると1人で飯を食べている所にボッチだなんだと言いながらくっついて来るようになった。
大変やかましくて、初めの5ヶ月くらいは本当に鬱陶しいと思っていた。
何せバイト先にまで現れては不思議なコミュ力によってバイト仲間とすぐに仲良くなるわ、気づけば常連になるし彼女だなんだと噂される。
一度本気で怒ろうかと悩んだ事もあったが、たまたま彼女が学院を休んだ時に、当たり前と思っていた1人の時間が謎の虚無感に襲われた。
その時に、察したんだ。いつの間にかこんなにも意識していたんだなって。
それに気がついた翌日は、彼女が昼休みに現れた事に安心し、嬉しいと思う事に躊躇いを持たなかった。もちろん表情には絶対に出さないよう心がけていたが。
そんな日々を過ごして2年。
俺が卒業する日。
最後の最後に待ち伏せされていた彼女に、「待っていてくれ」などとカッコつけた台詞を吐いてその場を後にしようとして、隠れて見ていた同級生達に押されて2人で写真を撮った。
あの時の少し早い桜は今でも覚えている。
「何見てるんです?」
写真を持ったまま固まっていた俺に、不意に後ろから声がかけられる。
振り返れば買い物から帰ってきた彼女が傍にいた。
「わっ懐かしいやつ持ってますね!」
「整理してたら見つけたんだ」
俺が写真を手渡すと、小さく微笑んだ。
「私、ひっどい顔ですね」
「俺も似たようなもんだ」
今でもやかましい所は変わらないが、それが心地よく感じている。これから先もずっとやって行けるようなそんな予感が今の俺達にはあった。
痘痕も靨 : 1. 好きになると相手の痘痕でも靨のように見えるものだ。惚れていると、相手の欠点も長所のように見えるものである。
2. 贔屓目で見れば、醜いものも美しく見えるものである。
痘痕、靨。
漢字が難しすぎて笑えないですね。こんなものは読めなくても何とかなります。どうぞみんなでフリガナに甘えましょう。
どうも、深夜翔です。
今回の話、少し宣伝チックになってしまいますが、『ことわざ大百科ver.短小説』の初めの方に書いたものと繋がっていたりします。この話のみ読んでくれた方は、是非とも1部から読んでいただきたいです。
そして、読んでくれてありがとうございます。
ではまた明日……さらば!




