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伊佐物語  作者: かしも りお
第一章 だれもいない町
18/30

17.文庫(ラノベ)

 尚樹が無線室に戻ると、奈美は文庫(ラノベ)を読んでいた。

「おかえりー。」

「なんかあった? 」

「ううん、なんにも。」

「そうだよなー。」

「なにが当たった? 」

 尚樹が抱えているバッグを見て奈美が聞く。

「見てない。」

 バッグからカセットコンロ、水、ヤカン、食器の順に取り出して机の上に置き、残った非常食をバッグごと奈美に渡す。

「なにが出るかなー? 」

 にこにこしながらバッグから非常食を取り出す奈美を横目に、ヤカンに水を入れて火にかける。

「あれ? これミネストローネじゃん。」

 不満そうだ。

「あぁ、それおれの。いっぱいあってもったいないから。」

 昼間に奈美の車から降ろしたのが目に入ったから、ひとつはこれにした。

「ダンボールに混ぜないでね。わたし食べないから。」

「わかってる。」

「えーと、わーたーしーのーは、っと。」

 (ふし)をつけて言いながらバッグに手を入れる。

「おお、炊き込みご飯っ! 当たりだねっ」

「当たりなのか?」

「ミネストローネ以外なら。」

 にこっ。

「全部当たりじゃねぇか。」

「えへへ。」

 嬉しそうである。

 ふたりでお湯が沸くのを待つ。無線は静かなままだ。

 尚樹は棚に並べてある文庫(ラノベ)を取って続きを読み始めた。もちろん並べたのは尚樹だ。奈美の手元にあるのは1巻、尚樹が取ったのは5巻。

「これ、意外と面白いね。」

「そうか、それはよかった。」

「表紙見て、なにエッチなのを堂々と本棚に並べてんのとか思ったんだけど、読んでみたらそうでもなかった。てか、普通に面白いんだけど。読みやすいし。」

「あぁ、表紙はいまみんなそんなんだよ。」

「ふーん。」

「本とか読まないんだな。」

「あんまりねー。なんか面倒で。ドラマとか映画は観てたけど。」

「お、沸いたぞ。」

 非常食にお湯を注いで待機。

「ねぇ。」

「ん?」

「服屋さんて、近くにある?」

「服屋ってどんな?」

「普段着」

「ユニク○とかしま○らとか?」

「うん、そんなので。」

「いくつかあるよ。」

「あんまりたくさん持ってきてないから、その……、ちょっと……」

「おお、調達に行こう。」

「それって勝手に貰ってくるってこと? 」

「うん? どうせだれも使わないんだから腐らせるよりいいだろ?」

「そりゃ、そうなんだけど……」

 抵抗があるらしい。

「ビデオだってタダで借りてるだろ?」

「あれはちゃんと返してるし……」

「あきらめろ。人類の遺産は俺たちが使い切ってやるって位の心意気でないと生きてゆけん。」

「缶詰とかも貰ってきてたね。」

「探せばまだどっかにあるかもな。俺は、かっこよく「調達する」って言ってるけど。」

「なにそれ。かっこいいの? 「調達」。」

「なんかさ、ちょっとそれっぽいじゃん。」

「はいはい。えーと、じゃ、明日でも明後日でもいいから、服を「調達」に連れて行ってください。」

「OKOK。なんならデパートも行ってみるか? ブランド品もあるだろ?」

「え? そんなとこ入れるの?」

「たぶん、ごにょごにょっとすれば入れると思う。」

「へぇー、ごにょごにょっと、かぁ……。」

「それはユニク○もいっしょだぞ? 」

「あぁまぁ、そうだろうねー……。」

「まぁ、そっちはそのうちでいいか。電気ないと暗いしな。」

 手伝いで休業日に工事に入ったことがある。昼間だったが、店の人に明かりをつけてもらうまで真っ暗で、ちょっとびびった。

「電気ってなんとかならないの?」

「発電機の場所がわかって燃料があればねー。」

「誰もいないデパートってちょっと見たいかも。暗いのは()だけど。」

「ブランド品を調達し放題だしな。」

「そゆんじゃなくてっ! なんか面白そうだし……。」

「まぁ、今しか見れないしなぁ。今度やってみるか。」

「わーい。頑張ってっ。」

「うーん。駄目かも知れないから期待しないように。」

「うん。期待してる。」

「なんだよそれ。お、もう食えそうだぞ。」

「あ、うん。いただきまーす。」

 もごもご。

「うん、美味しい。」

 にこ。


「お疲れさん。」

 帰りの車の助手席で、思わず大きなあくびをした奈美に、尚樹はそう声を掛けた。

「あー、ごめんなさい。お腹いっぱいになったら、眠くなっちゃった。」

「まぁ、今日は盛りだくさんだったからな。早く寝な。」

「うん。ね、シャワーだけ浴びていい? 」

「あぁ、もちろん、好きなだけ使えばいい。」

「ありがと。」

「いや、別に俺のもんじゃないし。」

「そういえば、公民館だったね。でも、ありがと。」

「魚だけ捌いて俺もシャワー浴びたら帰るから、あとは好きにしてな。ビデオも見られるはず。」

「え? 帰る?」

「帰るよ。俺は自分のウチで寝るから。」

「あー、そういえば、そんなこと言ってたね。え? てことは、あそこに私ひとり?」

「まぁ、そうなるな。」

「んー……。」

「明日の朝にはまた来るよ。」

「ほんとに?」

「仕事だからな。」

「え? 公民館が職場なの?」

「一応、ちゃんと市役所に登録してもらってるボランティア職員さんだよ。」

「そうだったんだ。」

「非常食の配給と掃除とかが仕事。たぶん避難してきた人のお世話も。」

「え? それわたし?」

「んー、とりあえずそういうことにしとこうか。建前だけど。」

「もう関係ないじゃん。」

「まぁ、そうだけど。それならお世話されやすいだろ?」

「んー、微妙。」

「ほれ、着いたぞ。」

 車が駐車場で止まる。

「近いねぇ。」

「普段は歩いて行ってる。えーと、荷物降ろすの、明日でいい?」

「うん。」

「車の鍵かける?」

「ううん、このままでいいよ。だれも来ないでしょ?」

「おう。」

 手回り品だけ持って車を降りて公民館に入り、玄関の明かりを着ける。

「はい、お疲れさん。」

「うん、お疲れさま。ただいまって感じ? あ、洗濯物忘れてた。」

「夜干しになっちゃったな。」

「うー、仕方ない。」

 和室に向かう奈美に声を掛ける。

「給湯室で魚捌いてるからな。」

 歩きながら手を振って奈美が答える。

「さてと。」

 尚樹は腕まくりをしてクーラーボックスを開ける。


 シャワーを済ませた尚樹が、奈美の車から釣り道具を降ろしていると、やっと奈美がスウェット姿で出てきた。

「あれ? 待っててくれたの?」

 髪をタオルで拭きながら、ロビーの片隅に釣り道具を並べている尚樹に声を掛ける。

「黙って帰ったら悪いだろ?」

「ありがと。」

「いや、じゃあ、帰るよ。」

「うん、また明日。」

「おう。」

「あ、ドライヤー。」

「うん、今髪拭いてんの見て思い出したとこ。」

「あは。危なかったね。お願いします。」

「うん。じゃあな。あ、ねんのため戸締りして、明かりも消しときなよ。俺は鍵持ってるから。」

「閉めるのここだけでいい?」

「うん、裏は閉めたから。」

「わかった。おやすみ。」

「おう。」

 歩いて帰っていく尚樹の後姿を見送ると、奈美は戻って鍵を閉め、ロビーの明かりを消した。


「主人公たちがいちゃいちゃする」文庫(ラノベ)ですの。


アルファ米を戻すには熱湯で15分くらいかかるのですが、ちょっと失念していて、もっと早く食べられるような印象を与える書き方になってしまっています。(他の回も。)

大幅に手を入れるようなことがあれば修正したいと思いますが、当面は適宜、脳内補完頂けると助かります。

すみませんが、宜しくお願い致します。

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