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第38話 「つまり、ロボットだよ! 巨大ロボット!」

あらすじ

ボウエイオー敗北

 私が幼い頃、いつも1人でいた。

 友人と遊んだ記憶は殆どなく、外で遊んだことは無い。

 部屋でうずくまっている事がほとんどだった。

 なぜ、そこまで他人を拒んだのかはっきりとは覚えていない。

 ただ、1人でいる事が心地よかったのだろう。


 そんな私を見かねたのか、父は私にプレゼントをくれた。

 そのプレゼントは簡単なラジオの組み立てセットだった。すべてがパーツに分けられ、小学生に上がる前の私でも悪戦苦闘しながらも、完成させる事ができた。

 1人でも音がなるラジオを作り上げる事ができたという成功体験に、私は今までに無い喜びを覚えた。

 私は父にこういった機械を組み立てるおもちゃをもっと欲しいと伝えた。

 その事が父にとっても喜ばしいことだったようで、私が望むものを買って貰えた。


 小学生に上がった頃には半田を使った簡単な基盤を作れるようになった。本当に簡単なもので、スイッチを使ってLEDを点灯させる程度のものだ。

 電子工作に対して更なる興味を持ち、もっと複雑なもの、もっと知的欲求を満たせるものを欲しがった。

 父も私に対してできうることはしてくれた。

 一応、学校に通っていたとはいえ、友達を作ることは無かったし、外で遊ぼうとも思わなかった。

 色々なことをしてくれた父には申し訳ないが、私は1人を好んでいた。


 中学生になると、ラズベリーパイを使った電子制御を覚え、夢中になった。

 パソコンを通し、プログラムで電子機器を制御する。それは、私にとって最高のおもちゃとだったし、唯一楽しめるものだった。

 気が付けば、機械弄りばかりしていた。

 たまに、弟から遊びに誘われたりしたが、特に興味を惹かれなかったので、断り続けた。

 高校生への進学はするつもりはなかった。だが、話を聞くと、もっと高度な機械制御が出来る施設があるようだった。

 そういう高校へ進学したいと親に申し立てたが、1人暮らしはさせられないと言われ、近所の工業高校へ進学した。


 工業高校を経て工学科のある京都大学へ進学。

 大学では研究所に入り浸り、さらに研究に没頭していった。

 さまざまなシステムの開発、作成、改良を繰り返し、自分が作りたいものを自由に作っていった。

 その頃には天才だの色々と言われているらしいことを弟から聞いた。

 どうも、弟は私後を追い、同じ専攻に進学したらしかった。


 いつしか、私の提唱する理論に理解を示さない人ばかりになっていた。

 この事が、意外と私に堪えることになった。

 何をしようにも、相手にされなくなり、教授までが私の理論は現実できない、ただの机上の空論でしかない、と私の研究を阻害し始めた。

 それでも、1人で研究を続けた。

 皆は呆れていたが、施設は使わせてもらえた。

 その頃には私の理解者は弟である統一だけになっていた。


 卒業論文として、私は1つのシステムを構想するに至った。

 光―物質変換とはまったく逆の構想だ。

 物質―光変換。

 物質を光分解して、その光を物質エネルギー化するというシステム。

 空気も物質である限り、その空気、塵、汚染物質でさえエネルギーとする事が出来る。この世にある全てがエネルギーになる。ある種の永久機関の理論をくみ上げる事が、私の目標だ。

 だが、やはり誰もその理論を理解してはくれなかった。

 それでも、私はこのシステムを実現させるために研究を続けた。

 誰も興味を示さなかったこの論文に、統一は理解し手伝ってくれた。


 いくつもの実験と理論構築を繰り返し、机上とはいえ永久機関を完成させた。

 その名も、システム『アマノイワト』

 名の由来は天照が閉じこもった天岩戸。光の神が宿るものというものだ。

 これが実現化すれば色々なものに影響を与える事が出来るだろう。

 利用価値より、自分が求めることを満たすことが出来るということに私は喜んでいた。


 だが、そんなある日、論文を纏めていたメモリーカードが1つなくなっていた。

 その研究内容が内容だけに、データをパソコン上に残すことはしない。メモリーはバックアップ用の数枚あるが、どれも私が作った強固なパスワードで保護されているはずだ。

 それでも、物理的に盗まれたのは、私のミスだ。

 私が頭を抱えていると、統一から電話がかかってきた。


「やあ、姉さん。今、困っているんじゃないかな。たとえば、大事な論文が保管されているメモリーカードが無くなったとか」


 統一の言葉で、おおよそは理解できた。


「そう、論文を盗んだのは、この私だよ、無双。私はずっとお前の後ろを歩んできた。ずっと越えたいと思っていた。だけど、わかってしまう。お前は本物の天才だって」


 何も言えずに統一の少し高揚した声を聞き続けた。


「私は無双を越える。実現させることをしないこの、システム『アマノイワト』このシステムを完成させれば、私はお前を越えられる。作れないシステムを俺が作って証明する! 私がお前を越えたことを!」


 電話は一方的に打ち切られた。

 なんということだろう。

 統一は勘違いしている。私がシステム『アマノイワト』を実現させないのは、あまりに危険だからだ。物質を光に分解する性質上、この世にあるすべてのものを光に変える。

 もし、仮に『アマノイワト』が地面に落ちたら、すべての物質、コンクリートだろうが、マントルだろうが、全てを分解して地球の底へと落ちていくだろう。その結果、何が起こるかまでは分からない。

 そんなものを実現していい訳がない。

 統一もそれがわかっていたと思っていた。けれど、私へのコンプレックスがその危険性を越えてしまった。

 弟に裏切られたことより、『アマノイワト』への対抗策で頭がいっぱいだった。


 教授に『アマノイワト』の危険性を訴えたが、「そんな机上の空論が実現する訳が無い」と一蹴されてしまった。

 他、各方面に危険性を訴えても、まともに受け止めてくれるところはどこにも無かった。

 なら、自分が『アマノイワト』への対抗策を講じるしかない。

 私はさらに研究へ没頭した。


 そんなある日、私に面会を求める人がいた。

 天見管利国防大臣その人である。

 国防大臣は私が訴える危険性に同調してくれた。

 そして、その対抗策も真摯に受け止めてくれた。


「ふむ。君の言う事が真実なら、この地球の危機だね。対抗策があるらしいが、どうやって対抗するのかね?」


 国防大臣の言うことに、私も口を閉ざすしかない。私の構想する対抗策はかなり大掛かりな装置になる。それは『アマノイワト』も同様だ。きっと、大型施設になることだろう。

 どこに作られるかわからない施設に対して、対抗策がどのように運用できるのか、考えていなかった。


「なら、移動できるものにしよう。できれば人間と同じように作業ができた方がいいだろう」


 国防大臣の言う事がよくわからなかった。


「つまり、ロボットだよ! 巨大ロボット!」


 その言葉で察した。


「その対抗策を搭載したロボットがあれば、どんな場所にできた施設も駆けつけるが出来るではないか!」


 この人はただロボットを作りたいだけなのだと。とりあえずこの馬鹿に拳を叩きこんでおくことにした。


 その後、私はロボット作りに取り掛かった。対抗策を搭載するということもあり、完成には4年の月日がかかった。それでも、私は巨大ロボットを作り終えた。

 対抗策については、思うところがあり、完成はさせなかった。

 『アマノイワト』が本当に作られるとは思わなかったし、こちらの対抗策もかなり危険な代物だ。ここは慎重にならざるを得なかった。


 天見元国防大臣はロボットを運用する組織、「日本防衛所」を設立。

 私は所長代理として入所させられた。

 それだけでは駄目だと、国防大臣はメンバーを集めた。

 ロボットをサポートするオペレータ、榎本雪絵。オペレータの経験があるそうだ。

 アドバイザには、私がひき殺してしまった犬を蘇生させて無理に入所させた。

 メカニックは私がやるとして、ロボットのパイロットが不在だった。

 ロボットが本当に発進することなんてなんてと思っていたので、パイロットは必要がないと思っていた。


「ロボットがあるのに、パイロットがいないのは、いけないと思いますよー」


 防衛所設立から半年程度経ってから、榎本さんからその様な提言があった。

 私は乗り気ではなかったが、彼女はかなりやる気だ。

 彼女はパイロット募集のポスターを作り、防衛所付近に貼り付けたようだ。

 だいたい、ロボットのパイロットといういかがわしい職種に飛びつくような奴はいない――筈だった。


「天地博士、パイロットに募集がありましたよー。なんと、20歳の男性みたいですねー」


 そんな不要の情報を私に伝えてどうするというのだろうか。


「じゃあ、天地博士には面接官をやってもらいましょうかー。それに、そのズボラな格好も直さなければいけませんねー」


 榎本さん言うがまま、私はメイクアップすることになった。

 ボサボサな髪はストレートパーマで綺麗に変身、深い隈がある目は化粧で誤魔化す。そして、白衣を着せられ、挙句に参考資料といって変なドラマを沢山見せられた。


「ほらー、博士って白衣ってイメージがあるじゃないですかー。あと、堂々として変態的な行動も必要ですねー」


 何故か、榎本さんにある博士像にさせられてしまった。

 こうやって着飾ることは初めてのことで、かなり緊張した。

 だが、そういった博士像を作り上げることは存外楽しく、様々な資料によりより完璧を目指した。

 そして、博士役となった私は面接官として、面接に挑むのだった。

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