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奥さん、また事件に遭いました  作者: 福間 優
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運送野郎から認知度の低い警備員への転職


 昭和56年1月、警備会社に入社した時は満で32歳。52年に結婚し、6歳下の妻との間に年子で男の子が3人、ニュウタウンの団地の2LDKに母と同居の6人暮らしからの転職だった。


 毎日曜日、小学校の体育館に畳を敷き詰め柔道仲間とひとしきり稽古したあと、何時ものように中島家に集まって飲んだとき転職の話をしたら、山田さんも反対し、何なら職を世話するよ、と。


 24歳、自衛隊を辞めてから漸く小さな運送会社に入り、生活も安定し結婚し子供も生まれ、ささやかながら穏やかな生活をしていたとき、突然の転職は妻にとって根耳に水だった。


 それでも、自分なりに何時までもトラックの運転手はしておられない、警備が何か分からないが、体力のことを考えたら、今が潮時と決断した。


 しかしこの決断はまたしても己の浅墓さを露呈していた。27歳で最愛の妻と出会って、僥倖にも義父母の英断で結婚出来たが、出会いの場であった通信大学の卒業も目途が立たぬ中での、何時ものなんとかなるさ、お袋譲りの好い加減さが出た。


 ”奥さんまた事件に遭いました”のタイトルは、もうこんな平凡な男が様々な事件、事案に遭遇しながらも、恩人、友人、そして妻の協力があって、何とかこの歳まで辿りついた極平凡な一市民の物語、左程面白くも無いかもしれないが、人生全うすることは思う程簡単ではない。


 日常の出来事も交えながら、平凡な家庭で平凡な男の奮戦記、時々の感じたことを混ぜながら書き進めて参ります。


 機械警備員になる迄の常駐警備員のある日、夜勤勤務に就いたとき、地下のテナントから電話が警備室に入った。地下の通路階段付近で6人が車座になって酒を飲んでいると。


 駆けつけると、ひと仕事終えた男達がそれぞれコップ酒を飲み、通行人が眉をひそめて通り過ぎる。

立ち退くよう声を掛けると、頭分の男が腹巻に手を入れ、ここに何が入っているか分かるかと威嚇するので、刺せるものなら刺して見ろと啖呵を切ったら、同僚が来てくれその場を収めた。

 

 遅かったら、乱闘になっていたかもしれない緊迫した状況だった。私は、先の柔道大会で自信があったので怖いと感じなかったが、今思えば軽はずみな行動だ。


 百貨店の非営業日は、敷地内で如何わしいビラを配る者がいるのでその排除をする。1回注意したが、また配っているので、その内の一人の胸倉を掴まえて警備室に連れて行こうとしたら、もう一人が許して呉れと謝ったので二度とやるなと。


 確かに施設管理権が委託されているので敷地内のビラ配りは注意出来るが、警備室に連れて行こうとするのはやりすぎだ。法律を学んだものとして恥ずかしい。


 またあるときは、通路で座り込んで販売の邪魔をしていると連絡が入ったので行くと、中年の男が座り込んでいる。退去を促すも言う事を聞かないので、そのまま襟首を掴んで引きずり外に放りだした。


 午前1時の外周巡回時、隣接のビルから渡って来た酔っ払いの中年が若い男女と接触した、若者がその中年に蹴りを入れた。それを見た私は、これ以上手を出すと俺が相手すると、男女はその場を去った。


 駅のホームで、酔った中年男が牛乳瓶を持ってふらふら歩いている。そこに二人の男が、その一人のズボンの裾に牛乳が掛かった。男が酔っ払いを押し倒した、私は、酔っているから勘弁してやれと言ったら、あんた刑事さんかと聞く。そこに電車が来たので、酔っ払いを車両に放りこんだ。


 何で俺はこんなに火中の栗を拾うよな真似をするのだろう。だけど、この意地がなかったら、無謀にも

妻に結婚を申し込むことはなかっただろう。


 子供をお袋に頼んで、二人で近くの居酒屋に飲みに行ったときも、強かに酔った私は、何時もの悪い癖が出た。見知らぬ人に酒を振舞うことだ、図々しく話しかけ、俺の酒を飲んでくれと傍から見れば強要していると映るかもしれない、否、単なる酔っ払いだが。

 

 そこの店主にあとからお小言受けた、最後のあの強面の男はやくざだよ、と。


 奥さんは、いつもはらはらどきどきだったろう。でも今となってはもう遅い。奥さん、本当にこんな軽率な男と一緒に暮らして呉れて有難う。



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