初見殺しの真の意味
急いで家を出たものの、準備が不十分。
ヤーさん(893)が出てこないと良いんだが…
出てきた時の事も考えておこう。
およそ三時間で下準備を終わらせ、二丁目の廃倉庫に向かった。
この辺りは工業が盛んで、夜中でも結構な範囲で作業が行われているため、銃声もかき消せる。
これに目を付けたヤーさん達がこの辺りの何処かに根城を構えているという話もよく噂に聞く。
午後九時なのにも関わらず、あちらこちらにある街灯が夜を感じさせない。
すれ違う人はこれから仕事に向かう夜勤の人や、今から帰りの日勤の人、それに工場勤務に行くには明らかに不相応のスーツの人、恐らくヤーさん関係の人達。
廃倉庫に向かうにつれて徐々に人も街灯も無くなっていた。
ここか…。
廃倉庫を見上げる。
廃倉庫とは呼んでいるが、実際使われなくなったのはここ最近で、外装はそこまで汚くない。
ただ少し落書きとかは多いが。
久しぶりの『仕事』という名の自由を目の前にした俺は、心臓の鼓動が聞こえるほど気持ちが高鳴っていた。
そして俺は廃倉庫のドアを開け、中に入る。
「遅かったなぁ、初見殺しさんよぉ。」
リーダーみたいな奴が出迎えてくれる。
「悪いな、ちょっと宿題が溜まっててな。あとそのダサい呼び名はなんだ?」
軽く挑発する。
「お前さんと会ったら組は壊滅するって噂からきたもんだ。だけど今日でその異名も終わりだな。
俺らはお前と会うのはこれで二回目だ。」
「わけわからんし、そんな異名俺には要らない。消えてくれてありがたいね。」
「お前さん、うちでやってく気はねぇか?いきなり幹部入りって言う好待遇で募集中だぜ?」
「それも悪くは無いな。けどな、俺はそういうクサい集団に混じる気は無い。
それに俺にやられる程度の連中とつるむと思うか?」
軽くにやけつつ挑発してみる。
「そうかそうか。だがこれを見てもまだそんなことが言えるかな?」
俺と会話していた奴は、部下らしき奴に命令し、その部下らしき人物は奥へと引っ込んでいった。
「何を見せてくれんだ?ちなみに俺の気に食わないことをしてたらお前ら皆殺しだから覚えとけよ。」
「まぁ、そんな焦んなって。」
すると奥に引っ込んでいった奴が麻袋を抱えて戻ってきた。
「おい、開けろ。」リーダーらしき人物が部下らしき人物に命令する。
麻袋から出てきたものは、倭鳥さんだった。
「こいつから話は聞いたぜ。お前が事故った事も、お前がこいつに告ったこともな!」
俺の表情を見て余裕ができたのか、リーダーと思われるものとその周りに居た部下っぽい奴らが笑い出す。
「リーダーはお前か?」
怒りで今にでもブちぎれそうだが、俺は耐える。
「そうだ。烏丸組総長とは俺の事だ。」
ダサすぎて思わず声を出して笑ってしまった。
「馬鹿にしてるとコイツの頭吹っ飛ばすぞ。」
「それは困るな。あと五分は我慢してほしいな。」
俺が話し終わると同時に、奴らのすぐ後ろで爆発が起きた。
爆発と同時に俺は倭鳥さんを麻袋ごと回収して、一気に外に逃げた。
外に出ると、俺が倉庫の中に入る前にはなかった車が8台並んでいた。
「倭鳥さん大丈夫?巻き込んでごめんけど、今はあそこに止まってる車で待っててくれ。あれはみんな俺の知り合いだ。今は時間がないからまた後で。」
俺は倭鳥さんに言うことを全て手短にはなし、倉庫内へと戻る。
「お前ら全員生きて返さないから覚悟しろ。」
そう小声で言い捨てると俺は敵陣に単騎で突っ込んでいった。
※ヤーさんとは、ヤンキーの比喩です。
さて、気が付けばバトルものに!
(まだ設定内の範囲ですw)
明日は文章見直しをする予定なので、最低一話投稿になります。
よろしくお願いします。