おめでたいクラスメイト達
俺と倭鳥さんは教室に戻ると、教室内が妙にざわついていた。
「涼花ちゃん…おめでとう!」
唐突に白が訳の分からないことを言い出した。
「何がおめでたいんだよ。」
「え、じゃあ今のフラれたの!?」
「は?だからお前何言ってんだよ。」
コイツに聞くだけ無駄かもしれん。
おれは別の奴に話を聞いた。
「なぁ、成沢、こりゃ一体何の騒ぎだ?白の話聞くに俺の事だろ?」
とりあえず、近くにいた成沢に話を聞いた。
「いやー、今さっきまでお前と倭鳥さんが中庭で話してるとこ見たんだよ。」
なるほど。んでそれを告白と勝手に解釈したってところか。
「言っておくが、告白なんかしてない。俺はただ事故の事を…」
事故の事を言おうとした瞬間、倭鳥さんが俺の腕の裾を軽く引っ張ってきた。
俺には、事故の事は言わないでくれ、と目で訴えているように見えた。
「自己の事をとっても心配してくれていたんだ!いい子だよな~倭鳥さん。」
よし。多分大丈夫。おかしいことは言ってないはず。
「ほう?まるで妹みたいな扱いだな。いい子だな~ってなんだよ!あと俺は前田な!」と前田は笑う。
中学時代に女子イコール妹みたいな感じで接してきていた為に、つい癖に。
あと前田…悪い…男と絡んでてろくな思いをしたことがないせいで、名前が覚えられん。
けれども一件落着。
噂の件は俺が入院している間に倭鳥さんが嘘だと言って落ち着いたらしい。
誤解が解けて良かった。
マリアの方もなんだかんだ言っていたが、今クラスメイトと一緒に昼飯も食べてるし。
退院したら殆どの問題が解決していた。
後は体力テストで男らしいところを見せて倭鳥さんを虜にするのみ…
この後、軽いお祭り状態で昼休みが終わり、五、六時間目は昼休みのお祭りのせいで、ほとんどの人が力尽きていたため、放課後担任の氷川先生からこっぴどく怒られ、復学一日目は終わった。
帰宅後、俺はすぐにシャワーを浴びてリビングのソファーでゴロゴロしていた。
復学初日、もう五月の半ばなのに学校に通うのが今日でやっと三日目というのもあり、大体関係が出来上がってくる時期なのをふまえて、あまり変なことはしないよう意識していたのだが、特に何事もなく(?)思ったよりクラスメイトがアホで楽しいクラスになりそう、ということが分かった。
倭鳥さんとは多分いい感じになっていると思って学校生活も過ごそう。多分いい感じだし。
少し家族関係が引っかかるが。
学校の事ばかり考えてたら疲れてきた。
気を落ち着かせようと、おやつでも食べて至福の時を過ごそうとしていた時。
スマホが鳴った。電話だ。
この着信音は…久我のおっさんだ。出るか。
「はい、もしもし。」
「もしもし、久我だ。」
「どうも涼花です、四か月ぶりくらいだな。」
「あぁ、四か月ぶりだな。その調子だともうだいぶ回復したっぽいな。」
「俺が事故ったの知ってたのか。」
「偶然現場近くに居たもんで、緊急招集掛かって行ってみりゃ、涼花がぶっ倒れてたもんでな。」
「好きで倒れてたわけじゃない。」
「なんにせよ、無事だったみたいで安心したわ。これからもよろしくして欲しいしな。」
なるほど。久しぶりに電話してきたと思ったらそういうことか。
「仕事?」
「流石だな。もう二年もやってりゃ分かるか。」
「場所教えてくれ。来週の体力テストの為に少し運動しておかないといけなかったから丁度いいや。」
「二丁目の廃倉庫だ。一年前にお前が派手に暴れた場所だ。向こうはお前をどうにかしようと企んでるらしいんだが、今こっちは別の事件で忙しい。」
「あそこか。了解。じゃあ片付いたら電話するわ。」
「頼む。」
電話が切れた。
久我のおっさんも中々良いタイミングで仕事くれるじゃないの。
にしても、二丁目の廃倉庫…今日倭鳥さんと話した事の続きの話じゃんか。
こんな運命望んでないっつーの。
俺はにやにやしながら急いで家を出た。
ここから真の意味での初見殺しが始まる!?