表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
突然ですが、異世界のお姫様と結婚することになりました。  作者: 由里名雪
第二章 王国晩餐会
39/178

1、招待状 #2

 僕らの部屋にやってきた兵士が怯えながら要件を告げ去っていった後、レティーツィアはぶすっとしながら僕の元までやってきた。レティーツィアの高ぶっていた気持ちはひとまず収まったようで、また僕がレティーツィアに襲われる心配はなさそうだ。


「……全く、今度から部屋の前に札でも掛けておこうかしら。なんだか邪魔されてばっかりだわ」

「ま、まあまあ……兵士の人も悪気があったわけじゃないんだしさ」

「わかってるわよ、もう」


 不満そうに息を漏らして腕を組むレティーツィア。僕としてはレティーツィアがこれに懲りて、少し積極的すぎるのを改めてくれると助かるんだけど……多分無理だろう。レティーツィアを落ち着かせる方法を僕なりに模索する必要があるかもしれない。


「そういえば、兵士の人は何だって?」

「なんでも私たちに招待状が来てるらしくて、そのことを伝えに来たみたい」


 レティーツィアの返事を聞いた僕は思わず首を傾げた。招待状って一体なんの招待状だろう。普通に考えれば何かのパーティーとかだろうけど、差出人は誰なのか気になる。

 そんな僕の疑問を解消するようにレティーツィアは続けた。


「アーデント王国から正式に送られた招待状みたいよ。国王陛下直々に送ってくれたみたい。確認したけど、直筆のサインまで添えてあったわ」

「……そ、それってすごいことなんじゃ?多分断れないやつだよね?」

「そうね……正直言って私は行きたくないのだけど、行かざるを得ないわ。数日後に王宮で行われる晩餐会にね。レシウス王も私たちに興味深々、ってとこかしら」

「な、なんだか緊張してきたよ……大丈夫かな」


 招待状はアーデント王国で行われる晩餐会へのものだったようだ。アーデント王国と聞くと少し身構えてしまうけど、こうして招待状を送って来たということは仲良くしたいってことかな。

 そんな僕の楽観的な思考はすぐさまレティーツィアに打ち砕かれた。


「……このタイミングでアーデント王国が私たちを招いてきたのが少し引っかかるのよね。直接関与してないとはいえ、この前の事件があったばかりでしょ?普通に考えればもっと慎重になるはずなのだけれど……いえ、この場で私たちに対する謝罪でもするつもりなのかしら。いまいちこの招待状の意図が読めないのよね」

「……確かに、僕たちはアーデント王国の魔術師にひどい目に合わされたばかりだしね。そう考えると、まだそんなに時間も経っていないのに招待状を送ってきたのは……なんていうか、一歩間違えると無神経と思われるかもしれないのに、とは僕も思う」

「それに、もう一つ気になることがあるのよ」


 少し難しい顔をしながらレティーツィアは呟く。僕は何も言わず、そのままレティーツィアに続きを促した。


「リネア公国の招待者は、私とソウタだけなの。お父様やお母様は含まれていないのよ」


 これには僕も首を傾げた。普通、これだけの事件が起きた後なのだから招待するにしても現国王を招くのが自然だと思う。にもかかわらず招待されたのは僕とレティーツィアだけらしい。

 この前の事件を受けての招待ならば、当事者を招待したかったのだと考えれば納得できなくもない。一体アーデント王国は何を考えているのだろうか。

 ……これってもしかして、高度な政治的外交案件なんじゃ?ど素人の僕なんかがホイホイついて行っていいものなのだろうか。とは言っても断る事なんかできないんだし、ついて行くしかないんだけど。


「また襲われたり……なんて事にならなければいいんだけど」

「晩餐会には他国の貴族も来るみたいだし、流石にそれはないと思うわ。この前の事件も表ざたにはしていないし、わざわざ向こうから戦争の火種をまくような事はしないはずよ。まあ、もし襲われても私がちゃんと守るから、ソウタは安心して」


 そう言ってレティーツィアは僕に優しく微笑んでくれた。気持ちはすごく嬉しいけど……やっぱり情けないなぁ。少しは男としてレティーツィアにかっこいい所を見せたいと思ってしまう僕だった。

 そう思った所で、ふと僕は思い立ってレティーツィアに向き直った。


「ねえ、レティーツィア。お願いがあるんだ」

「急にどうしたの?なんでも言っていいわよ」


 さらりと安請け合いするレティーツィアに少し苦笑してしまう。気を取り直して、僕はその言葉を口にした。


「僕に、魔術を教えて欲しいんだ」


 レティーツィアは少し驚いたように僕を見るけれど、すぐに微笑み交じりで口を開いた。


「どうして?」

「……この前の事件で思ったんだ。やっぱり僕もレティーツィアを守れるくらいには強くならないとって。それにダイン王にも約束したから。君を守れるように強くなるって」


 少し恥ずかしいけど、正直に僕の想いをレティーツィアに伝えた。レティーツィアは笑わずに僕を真剣に見つめて──突然僕を抱きしめた。


「好き」

「え、ちょ、レティーツィア?あの、返事は?」

「大好き」

「そうじゃなくて!魔術を教えて貰いたいんだけど!?」

「愛してる」

「僕もだよ。っじゃなくて!魔術を教えてってば!」


 レティーツィアが愛を囁く機械と化してしまった。おまけに僕を抱きしめたまま離れる様子がない。……どうしてこうなった。

 僕は溜め息を吐いて、しばらくレティーツィアのしたいようにさせてあげた。たっぷり数分間僕を抱きしめた後、レティーツィアはようやく僕から身体を離して満面の笑みで言う。


「もちろんいいわよ。ソウタのためなら私、一生懸命教えるわ」

「最初からその言葉が聞きたかったよ……」

「だって、ソウタが余りにも嬉しいことを言うんだもの。つい」


 悪びれるどころかものすごく嬉しそうにレティーツィアは微笑んでいる。急にレティーツィアのスイッチが入るタイミングがまだつかめないので、気をつけないといけないみたいだ。油断するとすぐ話の腰が折れてしまう。……まあ白状すると、レティーツィアに好意を向けられるのはすごく嬉しいんだけど。


「じゃあ早速だけど、教えましょうか?今日はすることもないし」

「ほんと?ありがとう、お願いするよ!」


 レティーツィアの提案を断るはずもない。僕は二つ返事で了承し、座っていたベッドから立ち上がった。これで僕も魔術が使えるようになるかもしれない。なんだかワクワクが止まらなかった。


「まずは簡単な下級魔術から教えるから、中庭に移動しましょ。室内で練習するわけにはいかないもの」

「そうだね。僕なんて素人だから、何が起こるか分からないし」

「ふふ、大丈夫よ。この私が直々に教えるのよ?大船に乗ったつもりでいなさいな」


 そんなレティーツィアの頼もしい言葉に何だか安心する。そう言われるともう魔術が使えるような気になってしまう僕だった。……いけないいけない、気持ちを引き締めないと。これはレティーツィアを守れるようになるための修行なのだから。

 緩みそうになる顔を引き締めて、僕とレティーツィアは早速中庭に向かうのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ