木洩れ日の差すベンチの下に
吹き出すようなギャグはありません。
あっても、クスリと笑うほどのもの。
お茶や珈琲片手にごゆっくりどうぞ。
とっても短いので、バッと読むとすぐ終わっちゃいますからね、ほんとに。
揺らめく木洩れ日をなんとはなしに眺めて、ベンチに腰掛け一息吐く。
「………ん……………」
流れる風が私の髪を玩んだ。マラカイトグリーンの天蓋を、無邪気に駆ける足音が耳に心地良い。
「……すぅ………はぁ…………うん」
空気の中の音を楽しむ。すると、お伽噺に迷いこんだかのように、ここにいる皆がお喋りを始めるのだ。
風だよ、風だね、風だ、風が来たよ。
僕だよ、僕、風だよ、僕が来たよ。
草花が右に左に噂して、風は声を薄く広く響かせる。
わあ、風だよ。うん、風だ。
ああ、風だ。風かな?風かな!
そよそよと体を揺らした落ち葉に、コロコロと転がる木片が達観したように返す。
木の葉が鳴ってようやっと起きた木の枝先で、雀達は何やら楽しげにしている。
「………いいなぁ」
なんだろう、なんでだろう、彼らが羨ましい。
人間には文字を書く手があって、地を駆ける足があって、音を歌にする口が、声があって、感じて考える頭があるのに。
ただ在るだけの彼らが愛おしい。
いいなぁ、いいなぁ、在るがままなんて。
なるほど、私は私に忠実になりたいようだ。
思ったところで、どうしようもない。だって、生きるも死ぬもままならない、生き方だって自由にできない世界でも、それが私の生きている世界なのだ。
なーんて、難しそうな、難しくなさそうなことは忘れようかな。うん、忘れちゃおう。
今だけは、私も、在るがままでいたい。
…………にゃぁ。
あら、猫ちゃん、こんにちは。
うりうりうり、お昼寝してたの?
………………。
うりうりうり、うりうりうりうり。
……にぃ。
あっ、行っちゃった。
っくしゅん。………んー、花粉なのかな、今までそんなことは。
あー、そういえば、猫アレルギーだったっけ。
っくしゅん、っしゅん。
ど、どうしよう、とりあえず手を洗おう。そうしよう。
っくしゅん。
………自由気ままも、難しいなぁ。
ふぇっくしゅん。
ところで水道は何処ですか。
そしてこの後、地図の掲示板を探して彷徨うのでした、なんて。
あ、野良猫って汚いって知ってても触る人です。猫アレルギーなのを知っているのは、猫カフェに突撃してその帰り………。猫も寄ってきてくれなくって、遊んでくれなくって……寂しかったですね。ええ。
純文学好きの皆様、カテゴリ違いかもしれませんが、ヒューマンドラマに入れるのも違うかと思ったので……どうかお慈悲を。