表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

スイーツタダ券

作者: tom

短編です。

ちょっと淡い感じな切ないのを目指したつもりです。


 『ない、ない、なーーーーーーーーーーいっ!!!!』

家の外にも聞こえる叫び声。


『私のアイスが、どこにもないっ!!』

少女は目に涙を浮かべながらリビングに目を向けた。


そこには少年が居て、スプーンを口にくわえたまま、ぼーっとしていた。


そしてその少年の座るテーブルには空っぽのカップアイスが転がっていた。


『現行犯じゃーーーー!!!!』


少女はさらに声を上げた。


『なに?まさか朝からアイスなんて食おうとしてたの?引くわー』


少年は空のカップをゴミ箱へ投げ入れた。


『つーか、なにしとんねん人んちで!?テーブルの上に座るな!実際、朝からアイス食べてるあんたに言われたくないわよっ』


『相変わらず口が悪いな〜そんなんじゃ男は離れてくよ。まあ、近づかれてもないだろうけど』


『あんたね!いくら親同士仲が良いからって勝手に家上がり込むなんて犯罪よ!!』


『お母さんに君の面倒を見ててくれって頼まれてね‥‥。仕方なく、だよ』

少年はやれやれといわんばかりのため息を漏らした。


『はあ?!私のお母さんどこ行ったの?!!』



『こ・れ、みたいだけど』少年は小指を立てて薄ら笑った。


『信じらんない!!』


『きっと寂しいんだよ』


『真面目に慰めるな、とりあえず帰れ!!』


『え〜いいの?傷つくな〜このスイーツタダ券ごと傷ついてくよ‥‥』

ハサミで券を切ろうと少年がしたとき、少女の態度は変わった。


『ちょっと、なによそれ!やめなさいよ!!それ本物?』


くく、食いついて来た


少年は心の奥で笑った。


『駅前にカフェできたでしょ?そこのだよ。君の面倒を見るお礼に君のお母さんからいただいたんだ。』


『なん‥‥だすって』少女は固まった。


『だ・か・ら、今日は僕が君を一日中面倒見てあげる日なんだよ。そういう取引なんだ。』


『面倒って‥‥私もう、小6よ?!1人で留守番くらいできるわよ(怒)』


『まあまあ、お兄ちゃんができたと思って甘えてごらんよ』


『バッカじゃないの?!誕生日でいったら私の方がお姉ちゃんなんだけど!私は5月であんたは12月っ7ヶ月年上よっ』


『へえ〜僕の誕生日覚えてくれてたんだ。意外だな〜』


『嫌でも覚えるわよっ』


少年ー高松仁(たかまつ ひとし )と少女ー竹井忍たけい しのぶの出逢いは小学校の入学式の時だった。


クラスが一緒で出席番号も隣で最初は別にお互い気にしてなんかいなかった。


だけど彼、彼女に共通することがあった。


それは片親同士ということだ。


高松仁の方は父子家庭。

竹井忍の方は母子家庭。


親同士が出逢って複雑な関係に陥った。

再婚して一時、兄弟(姉、弟)になったことがある。それから少女と少年の関係は始まった。


『どうしてクラスメイトと一緒に生活しなくちゃならないの』


子供にとっても複雑なのは言うまでもない。


特に親しい訳ではないし、周りからの冷やかしの目が彼らにとって苦痛的だった。


『お前等の親同士、結婚したんだろ?』


『同じ屋根の下なんていつも何してんのお前等?やらし〜』






 でも長くは続かなかった。

1年足らずで離婚。


少年と少女は他人に‥‥ただのクラスメイトに戻ったのだ。


でも親は今でもたまに会ったりしているらしい。今日のように‥‥。



『あんたなんかと一緒にいたくないわよ』



忍は仁からスイーツタダ券をぶんどって、いそいそと出かける準備を始めた。


仁はその様子を切なそうに見て


忍の手首を掴んだ。


『離してよ!!』


忍は叫んだ。


そして泣き崩れるかのようにフローリングの床に膝をついた。


『ひっく、ねえ、あんた辛くないの?自分のお母さんのこと思い出したりしないの?』


忍は泣き顔を見られまいとして俯き、肩を‥‥声を震わせた。



『僕はお母さんを忘れたことなんて一度もないよ。忘れる訳ないじゃん。僕の父さんも君の‥‥忍の母さんも悪気があってしてるんじゃない。ただ、似てる境遇だから、求めてしまうんじゃないかな。』


『何それ。私はあんたとは違う‥‥。あんたはそれでいいのかもしれないけど、私は、辛い。お母さんが私のお父さんのことを忘れようとしてるのが、辛い。あんたやあんたのお父さんを頼りにしてるのが、辛いわ‥‥』


仁は深く息を吸った

『やっと、本音が言えた。僕も君と本当は一緒だと思う。お父さんには幸せになってほしいけど、僕はそれ以上に忍に幸せになって欲しいと思ってる』


『‥‥え?』

忍は振り返った。


『だって辛いの嫌じゃん。辛いんでしょ、今?』


仁はバカだ。いつも無理して笑っている。

私には分かる。


私達も似たもの同士なのかもしれない‥‥。


『スイーツ‥‥食べに行こう。これ、二人までなら使えるみたいだし』


忍は流れる涙を拭いながら、仁にそう告げた。


仁は『もちろん、それ僕のだし』と優しい目で微笑んだ。




end







読んで下さった方、ありがとうございます。

実はこれ昔アナログ漫画で描いたお話 ※基本漫画は途中で放置してます(苦笑)の続きを小説にしたものです。一応オリジナルなのですが似たような話に影響受けてる可能性大です><

ご了承下さいませ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ