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第七話 新たな戦い



「詳細は読ませてもらった。浅間千早、随分といい素質の持ち主じゃないか」


 黒崎礼は先程あった戦闘データをまとめたものを本田仁に提出した。そこには個人データとして浅間千早のものが記されていた。


 天宮有紗を庇ったその瞬間から千早の情報処理能力が飛躍的に向上した。おかげか、ウイルスを倒すその処理速度は素晴らしいものがあった。


 電脳世界では身体能力はほぼ同じであるが、AVSとの同調により技術的向上、そして反射神経などは全て本人の情報処理能力によって判断される。

 情報処理能力が高くはない千早が何故処理能力が高くなければダウンロード出来ないAVSが使えるのか。


 それは黒崎礼にとっては全く理解の出来ないことであった。このことは引き続き、楠木穂乃果とともに調査中である。

「ですが、千早さんは・・・正直に言いますとかなり分からない点があまりにも多過ぎと言えます」


「確かに。千早君には不確定要素があり過ぎる。イレギェラーと言ってもいいだろう。だ

が、君も見ただろう?あの絶妙な攻撃タイミングとあのAVSとのシンクロを。まるで、いつかの蓮花君を見ているようだ」


 懐かしい過去を思い出すかのように本田は喋る。


「それと、我々は常に戦力の余裕がないことは君も知っている通りだろう。都合のよい力などそう簡単に得られるものではないよ」


「そ、それは私も十分承知の上です。ですが、もし無法エリア内での戦闘を考えているのであれば、千早さんの詳細なデータが必要になります」


「それはこちらとしても願っているばかりだよ。ああ、そういえば・・・」


 本田は思い出しかのようにとある資料をデスクの上に置いた。


「この資料は?」


「最近ね、不穏分子がこちらに対して色々と探りをいれているらしくてね。まぁ、その報告書とでも言っておこうか」


「はぁ・・・」


「それと、これを含めてもう少ししたら全CDTサーバーのダイバー及び各支部長が集まった会議がある。それと、悪鬼隊を随伴部隊として行かせるから彼らのスケジュールは空けておいてね」


 彼が言っている会議というのは世界中に展開している各国のCDTが集まって一度会議をするというものだ。年一回程度しかないのだが、今回はテロリストのことで緊急会議を行うらしく、電脳世界で会議を行う。

 何かある訳じゃないが、念の為に随伴部隊を連れていかせる。それを本田は悪鬼隊に任命した。


 正直、配属されたばかりの経験値がない新人二人もいる部隊にそんなことを任せるのはどうかと思うが、本田曰く『他のダイバーと接触することは彼らにとってもいい刺激になるんじゃないか?』と言った。


 礼は確かに一理あると思い、それを承諾した。



















無法エリア


 アメリカ、ロサンゼルスサーバーCDTデルタチームは後ろから迫り来る敵から必死に逃げていた。ジャミングのせいでオペレーターと通信が上手くいかず、敵の奇襲を受けた為来た道を引き戻っていた。

 今回の作戦は簡単なテロリストの排除が目的であった。ダイブ機能が外部へ漏れてからはウイルスだけではなく人間と戦うことも多かった。それは何処かの機密機関であったりなどと多種多様であったが、テロリストの場合は自分たちのようにしっかりとした設備ではない為、スペック上こちらの方が優位に立っている状況であった。


 なのに。どうしてこちらが追われているのか。それが理解出来なかった。


 デルタチームの他にアルファチーム、オメガチームにより三部隊一斉攻撃がある筈だったのが、作戦が外部に漏れていたせいでこちらが逆に奇襲を受けてしまった。


 奇襲でアルファチーム、オメガチームはその全員が死亡。デルタチームも一人が死亡してしまい、残りの三人はこうして逃げている訳なのだが、三人は後ろから迫り来る敵に恐怖を感じていた。


「クソったれが!あいつら一体なんなんだよ!」


 先頭を走っているマイクがそう言った。彼らの後ろからはウイルスではなく、同じダイバーがいる。

 だが、その目は何処か虚ろであり意志を感じられなかった。何があったのか。それだけが唯一の疑問であった。


「いいから!敵の数はあっちの方が多いらしいけど、私たちだって精鋭なのよ?今はこうして逃げることしか出来ないけど、絶対あいつらを倒すんだから」


 少し後ろを走っているアンジェリカがそう言う。それを聞いた隣にいるフランクもアンジェリカに同意しているのか、走りながら頷いた。


「・・・そうだな。絶対にホームに帰るぞ!」


「「おお!」」


 彼らにはアメリカを守る強い意志があった。三人とも軍人上がりの者であり、この世界に直ぐに順応していた。

 彼らがトップチームになるのは誰もが想像していたことであり、実際彼らに勝てるチームは多くはなかった。

 だからこそ、アンジェリカは自分たちのことを精鋭だと言ったのだ。だが、無法エリアはエリートであろうと精鋭であろうとそんなものは関係ない。


 彼らの唯一の誤算はその自信だろうか。


 故に唯一の自体に対処出来ない。


「おい、誰かいるぞ!」


 マイクが道の真ん中に立っている男を指した。前に立っている男はフードで顔の表情まで見ることは出来なかった。


 それでも味方でないことはそこにいる三人は一瞬にして理解出来た。


「・・・・・・」


 男は黙って両手を広げる。何をするのか三人は男を前にして身構える。

 すると、男の両手に一回り大きなチェーンソーが出現した。


「っ!AVSか!」


 それを見た瞬間、マイクが持っているナイフを構えて走り出した。

 AVSとは特殊なプログラミングがされており、二流、三流程度のプログラマーには作成不可能なはずであった。所詮、テロリストもお粗末なガラクタで戦っているだと思っていが、案外それは違ったようだ。


マイクを援護するかのようにアンジェリカがアサルトライフルを連射し、フランクもライフルを撃つ。


 銃弾で相手の動きを封じてマイクが接近してナイフでトドメを刺す。セオリー通りの攻め方であったが、次の瞬間男のチェーンソーが勢いよく回り始める。同時に放たれた弾丸を次々と弾き返した。


「あんたに恨みはないがここで死んでもらう!」


 そう言ってマイクはナイフを男に向かって突き出すが、チェーンソーがそのナイフを弾き返す。ナイフとチェーンソーを比べると圧倒的にナイフの方が弱い。

 マイク自身それは理解していることだが、自分は一人ではない。

 ナイフが弾かれた瞬間、男の左右にアンジェリカとフランクが飛び出してきた。二人は同時に男に向かって連射する。


 しかし、男はそれを読んでいたかのようにチェーンソーを盾にして二人の銃撃を避ける。

 が、これも計算の内だったのか、マイクは大きく踏み込んで男に向かってナイフを突き出した。

 その瞬間、鮮血が道を濡らす。


「え・・・なんで?」


 マイクの後ろには先程まで後ろから追いかけて来た男が剣を持ってマイクの背中に突き刺していた。

 たったあれだけの時間で彼らはマイクらデルタチームに追いついてしまった。男を速攻で倒せなかった時点で彼らは無視して逃げれば良かったのだが、一人ぐらい問題ないと思ったのかが彼らの運命を分けてしまった。


「アンジェリカ!逃げろ!」


 フランクがそう叫んだ。その瞬間、フランクは十数人からの同時発砲により蜂の巣と化した。

 あっという間に戦友二人を失ってしまったアンジェリカは戦意を失ってその場にへたり込む。


「あ、あんた達・・・い、一体何が目的なの・・・」


 半場諦めたかのように彼女はそう言った。最後に敵の顔を見る為に彼女は顔を上げる。そこには意志を感じられない男がいる。


 その瞳に奥から何も感じない。

 ただ、人を殺す事が当たり前のような、自然と息をすることと何も変わらかのように。男はチェーンソーを振り下ろした。










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