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派遣奴隷

作者: bigbrother

「さあ働け働け!手を休めるな!口を動かすな!ブラックジャックがほしいのか!」

 今日もせっせとハケン=ドーレは働く。仕事の割りに歩の合わない給料。それでも働く。誰かが言ったか知らないが、何時しか彼のことを派遣奴隷と呼ぶようになった。

「くそ、ダンカイセダイめ。こんな地に足着かない酷い生活を俺に提供しやがって…!」

 そういうハケン=ドーレは口数少なく、せっせと鉄骨を運ぶ。そのようなことを彼是五時間以上も続けている。ある時彼は空港でトランクスを運ぶ仕事を任されている途中、なんと荷物の中から大量の小麦粉のようなものが発見!十二時間費やしポリスの足を逃れた。またある時は、目隠しで地下まで拉致された挙句、人二人分の大きさはあるかという天井まで続く円柱の四方に、長さ2、3メートルほどの丸太があり、拉致をした工作員はこれを体重を掛けて押し回せという。ハケン他雇われた数人は言われるがままにボロ切れの服を引きずりながら必死に柱を回し続けた。これがファミレス回転看板の裏話である。三十六時間必死に働いたハケンは工作員から日給をぶちまけられる。それらを必死に腰をかがめながら拾う哀れなハケンその他。いくら数えてもハケンの手の中には親戚のいない子供のお年玉程度の金額しか納められていなかった。涙はいつしか枯れてしまった。

 …………もう我慢の限界だ!

 ハケンは泥まみれのツルハシを投げやった。ツルハシはその鋭利な先端を輝かせ、丁度休憩を取ろうと顔を上げたハケン奴隷の頭を突き破り、眼球と神経がくっついたままのピンク色の脳漿をあたりいっぱいにぶちまけ、そしてカチンッという音と共にコンクリートに突き立てた。

「おらあこんなことするために生まれたんじゃねえや。もう今日という今日は楽な顔して伸し上がったダンカイセダイ達を皆殺しにして、真の平等を築いてやる!賛同する者は俺の後につづけ!」

 すると今まで黙々と死んだ目をしてツルハシを振るっていた奴隷達が、あれよあれよと言う間に彼の背中に縋りついた。その数二百五十余り、後にそれは派遣奴隷革命という名をつけられる程の事件となったのだ。

「お前ら何をやっている!仕事を放棄するというのなら給与は与えんぞ!」

 監督面のヒゲダルマは、近くにいた奴隷にブラックジャックをこれぞとばかりに大きく振る。ボコッという音につられ、彼の頭はまるでアルミ缶を手で押しつぶしたかのようにへこんだ。それを見た奴隷達は、同志を殺された恨みと勢いでヒゲダルマを自慢のツルハシで一振り二振り三振り、それが何百といる奴隷達全員から受けるのだから、彼はいつしか形を整えられなくなり、意識は途切れ、細切れ肉と骨付き肉とコテッチャンの組織が散らばったただの焼肉パーティになった。いやはや実に上手そうだが、今この状態でそんな事を口に出したら筆者である私の命もなくなってしまう。もはやそこまで緊迫していたのだ。

 ハケンは、ヒゲダルマがただの肉塊となったのを見届けると、まず一目散にガンショップに駆け出しショップの主人を殴殺。そして壁に掛けたショットガンを手に取り、それを使って逃げ惑う主人の妻の横腹を吹き飛ばし、残された無知な子供達をひとりひとり丁寧に葬る。脇目で見ていた奴隷の顔にピンクがかかり、その残虐な光景を目の当りに嘔吐をした。

「い、いくらなんでもこれはひどい。子供まで殺すだなんて、人間のやることじゃねえや」と言って、店を後にしようと振り向く反逆者の後頭部に、ハケンは大きなチューリップを咲かせた。店一面がピンク色に染まり、服にも顔にもピンクがこびりついたハケンと恐怖に打ち震えた奴隷達。

 「聞け、俺の覚悟は生半可なもんじゃない。この屍が証拠だ。いいか、これからダンカイセダイが集結する高級街へと乗り出し奴らを殺す。その後国会議事堂を占拠し我等の主張を受け入れさせる。陰腹でもする覚悟だが、俺は歌舞伎役者じゃない。いいか、これは俺個人の問題ではなく派遣奴隷全体の苦しみ、憎しみ、怒りがこもった“戦争”だ!今ここで爆発せずにいつ時期を待つ。一生を奴隷のまま過ごすというのか。いいや、それは資本主義が作り出した大きな過ちだ!我等派遣奴隷はレーニンを神崇め、真の平等を築くことを目的とするのだ。そのためには犠牲もつくことになる。これらはそれを自覚してほしいがためにやったことだ。これから進む街ではこれよりもさらに酷い光景が待っていることだろう。だがその先にあるのは我等が望む幸福が待っているというのを約束しよう。さあ派遣奴隷達、今こそ銃を取れ!」

 その真に迫った言葉に威圧された奴隷達は、もはや反抗することを諦め、これから地獄絵図を見るというのを心に刻み、小刻みに震える手を抑え、壁掛けの銃を次々に手に取る。

 乗り出す家々のドアを破り、まるで作業のごとく人々を撃ち殺す。ある時は大家族の家々に押し入り、旦那のあんよを日本刀で骨を叩き割りながらも切断し、まだ小さいばかりの子供達におどける妻の髪の毛を引っ掴み無理矢理させた淫靡な行為を公開し、家族全員の体に風穴を開ける。またある時は、コーヒー片手に安楽椅子を揺らしていたもう若くはない白髪混じりの派遣会社会長宅を押し入り、彼の趣味であった孫の写真を一寸の眩みもなく破り捨て、老人の四足を切り落としながらも家中を火中とし、放置。そんなこんなでカニバリズムな事も沢山あったが、残酷すぎて書き記せないこともあるがとにもかくにもこんなことが小一時間と続き、辺りは綺麗なピンク色に染まったわけである。そして、派遣奴隷一行は、行く先を国会議事堂とし主張を本格化しようと足を進めたわけだ。

 いつの間にやら、誰が見るかも分からぬ国営テレビがヘリコプターを一台、ざっと数えただけで300万はいる派遣奴隷達をカメラを通して目に映す。その光景はまるでおぞましき数のゾンビが国会議事堂にクーデターを起こしにいくようにしか見えなかった。カメラマンの手は小刻みに揺れ、操縦桿はパイロットの冷や汗で表面が光り輝いていた。その群集の中から、煙を上げてこちらの方へ向かって来るものが見えた。そしてその見えた物が6秒後にロケットランチャーであると言うことに気づいたのは、パイロットである私が、空飛ぶ棺桶に物凄く強い衝撃を受け、尋常じゃないアドレナリンが放出し、ゆっくりと流れる時間野中で、人の形を留めるまでのほんの僅かな瞬間のことであった。

 ヘリは群集の中に墜落し、数十の人間の腕が飛び、足が飛び、破片が目に刺さり腹を突き破り、首を刎ねた。しかし彼らは既にトランス状態であり、元は人間であったその肉塊をスニーカーの裏で踏み捻りながらも着々と前に進んでいた。もう正確な判断が行える人間はこの中にはいないのである。

 やがて、国会議事堂に着いた頃には、陸上自衛隊が群としてそこに構えていた。流石この時だけは対応が早い。そして懲りもせず、空にはまた五月蝿い一匹の蝿…カメラを構えて物珍しそうにこちらを眺めていた。

「きみたち!えーきみたちの行為は非人道的であり違法行為である。えー即刻にそれらの実力行為と集会を中止、解散しなければ我々陸上自衛隊も自衛目的で君らに何らかの危害を与えてしまうやもしれん。そしてきみたちの親は上にあるカメラを通じてハンカチを涙で濡らしているぞ。引き返すなら今のうちだ、今ならきみらの罪も免除しよう」

 陸上自衛隊がこう言ったのも、作戦でも命令でも無く、単にこれだけの人数の反乱市民が、今までの被害を被ったのを受け恐れをなしたからだ。まともに受けたのでは、自分達が五体満足で帰れる保証は無いのだと訓練世代の自衛隊隊員達は皆そう思っていた。しかし、ハケン及び派遣奴隷達は留まるということを知らず、拡声器を手に取りこう一言。

「我々派遣奴隷は数万の人々を殺しここまできた。なのにここに来て自衛隊の一言でとぼとぼと来た道を辿り、ここまで共にしてきた仲間の肉を踏み、血の道を見て後悔はしたくない。国会が我々の意見に反発をするというのなら私達は国会を占領し、この腐り切った表面だけの民主主義を廃止し、そして派遣社員全員に住み良い暮らしができる街を作り上げるのだ!フゥハハハハハッ!行け!全軍、いや全派遣奴隷ども!突撃ィ突撃ィィ!」

 正常な判断ができなくなった彼らにとっては訓練軍士など目でもない。先ほども飛ばしたロケットランチャーを彼らにもお見舞いする。彼らの伊達な壁盾は軽々と吹き飛びそれに伴い体も四方に吹き飛ぶ。その血飛沫がハケンの顔に掛かり、彼は器用にも口の周りを舌を使って清掃する。

 「不味い血だ。O型は私には合わん」

 陸上自衛隊は、自前の戦車を使って群集に一発お見舞いをした。贓物や何やらが手前から吹き飛んでいたがあまりに見慣れた光景なので皆動揺はせず、逆に彼らの切羽詰まった心情を駆り立ててしまった。自衛隊の包囲網はあっさりと突破され、戦車は味方か敵かも分からぬまま只管砲撃を加えているが、いつの間にか真上を取られ、誰かが投げ入れたロシア製の手榴弾が機内で著しい光と衝撃波を放った。敵も味方も問答無用に打ち込む彼らを見て、そのうち自衛官も頭がおかしくなり、味方の喉仏にナイフを突き刺したり、女性自衛官のズボンをひっぺはがし、そのまま猿の様に腰を振り始めたり、その場で自慰を始めたり、僕は神だとコンクリート水泳を始めたり、同性の自衛官に愛撫を強いたり、乱交パーティだなんてまあ滅茶苦茶、これには流石の派遣奴隷達も呆れ顔で悪い意味で闘志を失った。そんな中、ハケン=ドーレは国会議事堂の壁を伝い、ついには屋根にまで登りつめた。続いて拡声器を持った男が彼に追いつき、口元に拡声器を近づけてやった。彼の目は焦点を失い、彼を見た派遣奴隷達もこれには呆気をとらんばかりであった。

「派遣こそ、縁の下の力持ち!いや!もはや表面上にも私らの力は及んでいる!見ろ糞正社員ども!契約奴隷め!フハハハハハ!●●●●野郎ども!全世界は派遣社員のものにありィィッ!」

 ハケンが国営テレビのヘリコプターのカメラに向かってそう主張したと同時に、彼の眉間から後頭部に掛けて疾風の如く突き抜ける一筋の鉛が通った。彼の瞳からは色が無くなり、国会議事堂屋根の斜面をごろごろと転げ落ちていった。


あるひと夏の出来事である。







ラストを先に作って他は蛇足です。

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