タイムスリップ(四百文字小説)
眩暈がして意識を失ってしまった僕が目を覚ますと、そこは向かっている途中の投票所だった。
「寝不足が祟ったのかな?」
そう思って首を傾げながら中に入った。
「え?」
まずは小選挙区の候補者の投票用紙を渡されたのだが、妙な事に気づいた。
「織田信長、平清盛、藤原道長?」
そんな途方もない候補者の氏名が並んでいた。
僕は不思議に思いながらも、信長の名前を書いて投票箱に入れた。
次は比例代表の投票だ。
「はあ?」
政党名が書かれている紙を見て唖然とした。
「蛍光党、五重党、甘納党、小笠原諸党?」
もう意味不明な名前が並んでいる。
僕は仕方なく甘納党と書き、投票箱に入れた。
最後は最高裁判所の裁判官の国民審査だ。
これはいつも悩むのだが、今回はそれ以上に悩みそうな氏名が並んでいる。
「石川五右衛門、鼠小僧次郎吉、日本左衛門、弁天小僧菊之助?」
もう何だかわからないので、全部にばつを付けて投票箱に入れた。
今までで一番疲れた投票だった。