女の一回目
起きた→女だった。
そんな感じ
(やっぱりか・・・)
すでに、この状況に納得していた。
いや、納得はしていないか。状況がわかってきたというべきか。
今この世界では私はもともと女だったということらしい。
(どうせ夢だろう。せっかく女になった夢なんだからいろいろ楽しまなくちゃね。)
普段の夢でのほわっとした感じが全くなく、リアルさに満ち溢れていることから目をそらし私はそう思った。
「いただきます。」
いつものように目玉焼きと白飯と味噌汁等を食べ、ヨーグルトをデザートに食事を始めた。
「続いて天気予報です。今日は気温は平年より高くなりますが、一日中ぐずついた天候となりそうです。では、ピンポイント予報・・・・・・。」
「だって。今日雨降るらしいから傘もっていきなさいよ悠里。」
と、母がいってくる。
「今日部活の関係で自転車だって言ったじゃん。」
「ああ、そういえばそういってたわね。合羽は持ってるよね?」
「うん。」
そういいながらまた違和感を感じないほど自然なおかしいところに気がついた。
(悠里?)
(私の名前か。けっこういい名前じゃないか。)
この段階でもう私は夢だという考えを捨てていた。
何故かって?
ご飯に味があったからだ。
「ごちそう様でした。」
食器を洗い学校の準備を始める。
余談だが私はこういった準備の時間が嫌いだ。
一気にいろいろと片付けたい性格だから、細々としていて順番にやっていかないといけないのは好きではないのだ。
そんなことを思いながら制服に袖を通す。
「そろそろカーディガンでも着るかなー」
学校に着いたのは7時50分だった。
(やっぱり自転車は速いなー。雨が降らなくてよかった。)
「おはよー。」
クラスメイトの耀子だ。
「ん。おはー。」
特に話したこともないがこの世界では友達になっているらしい。
(こうなると今までの男友達とはあまり親しくないのかもな。)
教室へ付きジャージに着替え荷物の整理をする。
(よかった。席は変わってない。っていうことは性別にかかわる要素以外は変更はないみたいだな。)
ガラッ
「おはよう!」
担任の小池先生だ。
「先生おはようございますー。」
「おっす!」
「おはようございます。」
私も挨拶くらいはする。
特に支障もないみたいなので私もだんだんこの状況を楽しむようになってきた。
ただ、元には戻れない恐怖と、憂詩という存在が消えている恐怖はなくなってはいないが・・・
トントン
肩をたたかれる。
「ん?」
プニッ
ほっぺたを指で刺される。
「へへっ。」
千種だ。
「またそんなことするー。」
「いいじゃんいいじゃんかわいいんだからー。」
他愛もないことをしながら時が過ぎていった。
(女子の裏の怖さにはうんざりするがさっぱりしている人もいてよかった。)
給食のあとの昼休みにそんなことを思った。
「あ!」
「うわっ。悠里どうしたの?」
思わず声を上げてしまった。
理由はこうだ。
トイレに行きたくなったから。
もう一度言う。トイレに行きたくなったからだ。
女であることに最初から違和感があまりなかったとはいえ、一応精神は元のままだ。
(ううー。女子トイレに入るのは女になっていても緊張するなぁ。)
しかも自分は女だ。女の体だ。
多少なりとも興奮してしまう。
(自分の体ではあるが、女子が用を足しているところっを見てるってやばいな・・・。)
そんなことを思いながら一回目の女子トイレが終わる。
(ふー。へんなことが起きなくてよかった。)
(にしても、もし元に戻るとして女子トイレで戻ったらイヤだな。)
「悠里大丈夫?具合でも悪かった?」
さっき思わず声を上げたとき隣にいた耀子だ。
「ううん。大丈夫。ちょっと忘れてたことがあっただけ。」
(ん?あの男の子誰だろう。転校生かな?見たことがない。)
「ねぇ。あの男子誰?」
「え?3組の寿々耶君でしょ。しらないの?ほらあのギターがうまい。」
「ああ、そうだったね。」
そうこたえながら私は頭の中でいろいろと考えていた。
(寿々耶・・・3組・・・・ギターがうまい・・・・)
なにか頭に引っかかる。
「涼奈!」
また叫んでしまった。
「だれそれ?友達?」
「え?ああ。そうだよ。」
(涼奈?いやまさか・・・。)
説明しよう!涼奈とはわたしが1年だったときのクラスメイトである。それだけだ!
あちらのほうは隣の男子と何か言っていたが、涼奈という言葉を聞きこちらを見た。
「ねぇ憂詩って人知ってる?憂鬱の憂に詩人の詩って書くんだけど。」
隣の男子に言っているそんな言葉が聞こえた。
すでに驚きはない。
(ふーん。そうか。あいつもか。)
自分でも話の内容がわからない。