そして・・・終わる
コザルド氏 再び
「どうも。」
「お久しぶりですわね。」
「その節は・・・。」
「あれから、最低十は経ちましたね。もっとですか?」
「ええ。もっとですよ。すみませんね、来るのが遅くなって。」
「いいえ。でも、緑になりつつあるでしょう?」
「そうですね。見てきましたよ。美しかったです。」
「それで、なんの御用ですか?」
ソンはあいかわらず、笑顔までには至らなかったようだ。
「あの動物達のことですか?」
リリーのほうから言い出した。
「そうなんです。いや、本来は自分は、政府関係者ではありませんので、参加することはないはずなんですが、色々、事情がありまして。それでですね、その動物調査に乗り出したいので、ご協力を得られないかと。」
「・・・一体、どんな協力です?」
「政府派遣の動物学者を三人ほど、置いていただきたいのですが。」
「なんで、ここに?」
「社長・・・そんなにしかめた顔をしなくとも。」
「別にしていない。こういう顔なんだ。」
「確かに、ここが今、一番動物が集まっていますが・・・他にも理由が?」
「ええ。まず、クレムから毎日調査に来ると・・・そのコザルド地方の住人にも頼んでみたんですが、その、攻撃される可能性があるとはっきり言われまして・・・。」
「なんで、コザルド地方の人たちが攻撃を?」
「その・・・、あの石が降ってきたときにもっと早くに調査していれば、こんなに砂漠になることもなかったし、戦争も起きなかったし、住みかを奪われることもなかったと怒っていまして・・・。」
「そんなことを、コザルドさんにいってもしょうがない話ですよね?」
「ええ。ですが、ニュースをご覧になりましたか?」
「舞姫ですか?」
「そうです。彼女の出身もここ、ゼラルドなんです。それで、彼女の友人が、その動物になっている可能性が高いわけです。」
「そんな・・・。それは、確実なんですか?」
「その確率がかなり高いと思われます。」
「それで、どうか、ご協力を得られないかと。」
「そこまでわかっていながら、捕まえられないんですか?そのドロボーは。」
「自供だけでは・・・今のところは無理です。」
「自供してるんですか?」
「ええ。リリーさんたちと別れてから、あのあと、すぐに一気にいろんなことが判明しまして。すっかり顔なじみなんですが・・・とにかく、いまはこっちで忙しくて泥棒どころではないというのが、上の判断な用です。」
「まぁ・・・。」
「それで、お願いできないでしょうか。」
「社長・・・。」
「どうせ、君がいいって言うんだろう。」
「よくわかっていますね。」
「引き取っていただけますか?」
「わかりました。でも、いつからなんですか?」
「明日・・・あさってには、来させます。」
「防具を身につけて、いらしてください。」
「伝えておきます。では。」
「ああ、彼らの名前だけ教えてくれませんか?」
「あ、失礼しました。海担当のマール・レフォン、陸担当のジール・ロータリー、空担当のトビー・マクリロンの三名です。詳しくは書類を送ります。」
「わかりました。」
そして、何度も頭を下げながらコザルド氏は去っていった。
「まったく・・・。」
「社長・・・いいじゃないですか、企画部は今のところ、私と社長とリュイ、ファニーしかいないんですし。もうすぐ、私だけになります。」
「まぁ・・・場所はあるがな。」
「それに・・・。」
リリーはためらった。
「なんだ?」
「食べなくて良かったですね。」
「・・・・・・・・そうだな。」
急にそれがどういう意味を持つことになるのかがわかったのか、体の背中に冷たさを感じさせていた。
互いの引退
もうすぐ、塔は二つ目になる。
三人の研究員による、そこの生物達の研究は、研究員が段々と増えながら行なわれていったがまだまだ時間がかかるようだ。
だんだん、人間たちのほうが年をとり始めると同時に、会社の人々は世代交代していき、人よりもロボットの方が多い職場になった。ロボットは日々に進化し、砂に耐用出来るまでになり、他にも、動物の言語がインプットされるようにまでなった。ロボットは動物たちに技術を伝え、動物愛護の人々も協力してくれて、最小限の人とロボットたちを残し、会社はゼラルド砂漠を後にして、クレムだけに戻った。
「そういえば・・・、地雷の方はどうなっているんだ?」
突然、ソンは思い出したように言った。スクリーンの向こう側で。クレムから連絡を取るときはいつもこうだ。ソンは体を壊して病院にいた。
「ああ、半分くらいはなくなりましたよ。壊し屋のおかげですね。」
ついにゼラルド地方の企画室に残ったのはリリーだけになっていた。リュイは受付嬢のレミと結婚し、彼女は仕事をやめ、リュイはトライ地方の方からの地雷撤去のほうに参加している。
「壊し屋?」
「ええ。今度の人は若い人ですが、何でも壊すみたいで。爆弾処理も頼んでいます。見つけて掘り出してばらす方法と爆破させて壊す方法とがあるみたいですよ。ジュンもそっちの方を手伝って、どんなに深く埋めても見つける探知機を作るみたいです。」
「・・・世の中には、変わった人がいるもんだな。」
「・・・人のことは言えますか?」
リリーは言い返した。
そして、この頃に本部は孫に譲られ、ソンは自伝を書き始めることにした。
リリーはこの仮説の過程を書きたいからと五十歳で会社を去っていった。彼女が会社で連休を取ったのは、父親の葬式の時くらいだった。ところで、葬式の方法は地方によって違う。リリーの時は国の形式で行なわれた。
「君で最後だな。」
「そうですねぇ・・・。振り返れば、短いような長いような・・・。」
「国に戻るのか?」
「ええ。ありえない人生の連続でしたからね。残しておくことくらいしておかないと。話だけでは誰も信じてくれませんよ。」
リリーは言った。
「そうかな?僕は信じるよ。」
「あたりまえでしょう。何年、共にいたと思っているんですか?」
「僕は最近になって思うんだ。君をこの仕事に引きずり込んだのは自分だった。それでよかったのだろうかと。」
「後悔はありませんよ?どの時期にも。私は誰よりもこの地の文化に詳しくなりましたよ。とくに、まだまだ、知られていないゼラルドの地域に関しては。」
「それは、僕だって同じだ。」
「なので、書くことはたくさんあります。シェーマン地方の母校には恩があります。あの場所で友人を手に入れました。人との接し方をやっと覚えたのです。あの場所に残すためのものを書きます。私の人生、残りの日々もおかげで退屈することなく、すごせそうですよ。」
そして、リリーはやっと国へ帰った。
終焉
ソンは結局、この第七回目の提案に四十年以上もの時間をかけた。
ソンは病院に入ってしまったが、妻とのんびりとお茶を飲んでいる。クレム地方で自伝も書いた。その結末はこう締めくくられている。
『砂漠はゆっくり変わりつつある。その後がどうなるのかは誰にもわからない。戦争もまだまだ行われている。砂漠に眠っている地雷も全て除去されてはいない。たくさんの場所で、たくさんの人がそれぞれに思いを持ち、生きている。私は自分の人生のほとんどを、あきることなく共に過ごせた友人を持ったことをとても幸せに思っている。』
ところが、物語はここで終らなかった。
リリーは老人になっていた。ソンはもういない。
ニュースを見ていた。
「・・・臨時ニュースです。時の舞姫が引退表明しました。長年、親子に二代で追いかけていた、コザルド氏に詳しく、話を聞きたいと思います・・・。」




