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怪盗の真実

コザルド氏参上


それから、何年かして、ある日、一人の男性がゼラルドの事務所を尋ねて来た。

「失礼ですが、責任者の方はいられますかな?」

受付嬢のレミは前に怖かったことを思い出して、そのまま机の下に隠れてしまった。あのあと、やめなかったのは奇跡に近いことだった。

「あの・・・。」

「誰かー。」

受付嬢のレミは思いっきり叫んだ。

「・・・あの!サザルからきた警察ですけれど!」

負けじとコザルドも叫んだ。 

社員がばたばたと現われる中で、コザルドはなぜ、こんなに自分が恐れられるのか、わかっていなかった。

やっとコザルドは応接間に通された。

「ソン・ロデイアです。すみませんね。ずいぶん前に、ちょっともめごとがあったので。」

ソンはお茶を出させた。

「いえ、何事かとは思いましたが・・・。」

「それで、今日はサザル地方から来られたそうですが、どうかしまいましたか?」

「ええ、実はクレムの本社のほうに行ってみたら、副社長のスバさんが、ソン社長はこっちだと言うものですから。」

「私にご用なんですか?」

「ええ。『時の舞姫』というのを知っていますか?」

「・・・アイドル歌手か、なにかですか?」

「・・・えっと・・・。」

 さすがに、コザルドも言葉に詰まった。

「ちがいますよ、わが社に膨大な寄付をしてくれている人です。・・・人ですよね?」

同席していた、リリーが言った。

「・・・えっと・・・ええ、人です。」

「よかった、ロボットに寄付の機能がついた話なんて聞いてなかったので。」

「あなたは?」

「この計画の言い出しっぺのリリー・シュルツです、よろしく。」

「あ、どうも、コザルド・サジタです。」

「で、その姫がどうしたのですか?」

「あだ名ですよ?」

「本名がわかったら泥棒なんかしないだろう。それで?」

「いえ、・・・実は彼女は、あ、女性なんですが、怪盗でして、盗んだお金をこの会社に寄付しているようなのです。」

「盗んだお金を寄付?」

「えっと・・・それは返さないといけないんですか?なにか、法的に問題が?」

リリーが聞いた。いつの時代も女性のほうが現実的らしい。

「いえ、その、裏で出回っているお金なので公に盗まれましたと言えないお金でして。被害届がないと、返せとはいえません。」

「よかった、もう使ってしまいましたからね。」

 と、リリーは安堵したように言った。

「そうなの?」

「だいぶ、消えております。」

「それで・・・?」

「ですが、怪盗は、あ、いや、ちょっと古い人間なもので言い方も古いのですが、要するに、ドロボーなのです。そこで、我々としては捕まえなくてはなりません。あまり、大きな声ではいえませんが警察幹部も盗まれたようで内密に調査しているところなんです。」

「・・・はぁ。・・・それで?」

「いえ、それで、お聞きしたいのですが、お金はどうやって送られてくるのですか?」

「どうやってといいますと?輸送とかの意味ですか?」

「いえいえ、そうではなく、金貨ですか?小切手ですか?」

「電子マネーですけれど?」

「・・・電子マネー・・・えっと、それはどこの銀行から・・・。」

「聞きたいですか?」

リリーは笑った。

「・・・もしかして、ルフェ銀行ですか?」

「あたりです。」

「・・・はぁ。」

ルフェ銀行は誰がどのくらい、お金を預けているのか、どこにお金を流しているのか、一切喋らない閉鎖的銀行としてもっとも信用されている銀行だった。そして、そのコンピューターを開けたものはいないというくらいに最高品を使用していた。あのエーアイ・キラーが襲ったとき、人の手によって、銀行ごと閉鎖してしまったほどだった。

コザルドはある程度、そう考えていたのだろう。顔もやっぱりという顔をしていた。

「・・・やっぱり。あの・・・心当たりはありませんか?ここに寄付されるような・・・。」

「心当たりですか?」

「・・・つまり、コザルドさんはこの会社の者が、時の舞姫だといいたいんですか?」

女性の勘は恐ろしい。

「なんですって?そんなはず、ないでしょう!どこの会社に自分の会社に盗んだお金を寄付するような者がいるんです!私はまじめに会社運営をし、その利益と電気を売っている資金と他の会社からの社会貢献ようの寄付でこの事業を行っています。だれが、そんなことを!」

ソンは立ち上がって急に怒り出した。

「社長、落ち着いてください。」

 いつもの口調でリリーが言う。

「いやいや、そうは言っていません!ちょっと聞いてみただけです。それだけですから。」

と、コザルドも慌てて弁解した。

「失礼だ!帰ってください!」

「社長!おちついて。あんまり怒ると血圧が上がりますよ?」

「しかし!」

「待った!」

リリーはどうにか、ソンを座らせた。

「その、舞姫が寄付しているのはこの事業だけなんですか?」

「・・・ええ。」

「だからって、うちの社員を疑うとは!」

「落ち着いてください!コザルドさんに怒ったってしょうがないじゃないですか!仕事なんですから!」

「君が落ち着きすぎなんだ!」

と、ソンは逆にリリーに怒り出した。

「今に始まったことではありません。では・・・まず、ロボットの社員を除きますと、うちには五名の女性社員がいます。」

「リリー君!」

「待ってください、社長。それで、コザルドさん、舞姫が現われた日にちはわかりますか?」

リリーはパソコンを開けて聞いた。

「えっと、四日前です。」

コザルドのほうは手帳だった。

「・・・時間はわかりますか?」

「夜中の二時前後です。」

「場所は?」

「シェオ地方です。」

「・・・二人に絞られました。」

「なんだって?リリー君、君は・・・。」

「待って下さい。他には?」

「えっと、一週間前です。」

「場所は?」

「エファーリア地方です。」

「・・・一人に絞られました。」

「リリー君!うちの社員にそんなことをするような者はいません。」

ソンが断固としてコザルドに言いきった。

「私だけです。」

静かな空気が流れた・・・。

「なに?」

「帰った時間と、最短距離、場所を考えて、行けるのは両方とも私だけです。」

あっさりとリリーが言った。

「・・・だからって!君が・・・君が怪盗じゃあるまい!」

「ええ。だから、コザルドさんには私とだけいてくれればいいんです。」

「?」

「その間に、舞姫が出たら、私ではないということになりますから。」

「・・・いいかね?」

と、コザルドはソンの怒鳴り声がいつ来るかというふうに、おそるおそる言った。

「かまいませんよ。でも・・・防弾チョッキは着ていらっしゃいますか?」

リリーは聞いたのだった。


とりあえずの撤退


「・・・わかった。」

三日後、また舞姫があらわれたという情報がコザルドの電話にあった事で、リリーへの疑いは晴れた

リリーは潔白をも晴らした。

コザルドは電話を切った後、ため息をついて言った。

「しばらくは夢に見そうですよ。」 

「そんなに怖かったですか?」

 リリーは聞いた。

コザルドは彼女と共にしている中で、ゼラルド砂漠の住人との話し合いにも参加したが、コザルドが警察だと知ったらナイフが出てきたのだ。

「あの切れ味のよさそうなナイフは今でもぞっとしますよ。あと、地雷の音。」

「ああ、あれは、シェーマン地方から壊し屋が来て爆弾処理をしていてくれているんです。音は凄いですが、安全な方法なんです。砂漠に住む人には怪我人もでているんですけどね。治療にも携わっていますよ。あの、ナイフはさそりをさばくんだそうですよ。」

「ここでは機械はあっても機能しないでしょうね。」

「ええ。砂があまりにひどくて。ポニュ地方のほうまで広がっているようで。」

「そうですね。」

「前に研究所が燃えましたでしょう?あれを消しに行って帰ってきた者が言っていました。」

「とりあえず、私はもう、しばらくはここには来ません。怖いですから。」

「大丈夫ですよ。そのうち、見に来て下さい。十年くらいしたら変わっている予定です。」

 ソンは言った。

「十年ですか?そのくらいなら待ちますよ。」

 そう言って、コザルドは去っていった。


塔の完成


 それから一年後に植物は完成し、塔は立った。それは水源の近い、ルーザ地方の近くに置かれ、そこから緑化がスタートすることになった。とりあえず、実験として一つ。透明な特殊なガラスで作られた。割れないように強化されたものではなく、何かが当たっても吸収する形式のガラスが作られた。

 上を囲うという形式はやめて、砂を塔には当たらないように左右に分けていどうさせる形式がとられた。

 しかし、その間にだいぶ、砂漠化は悪化し、ポニュ地方まで入っていた。かつてあった、燃えたとされる研究所も砂漠に飲まれていた。火事でずいぶんの人がポニュ地方からいなくなったという話だった。

 地雷の除去も進んではいるが、まだまだ終らない。

なんせ、誰がどこにどの位埋めたのかもわからず、深さも不明だ。砂に足でもとられて転べば体が消えると言うことにもなりかねないため、慎重に時間がかけられていた。シェーマン地方から壊し屋もみつからないことには壊しようがなかったようだ。

ジュンとロイズが地下の水脈の深さの研究も行っていたため、どのくらい、沈むのかの計算もほぼ間違うことなく出来た。

「どうにか、できたな。」

「そうですねぇ。どうにかなるといいですねぇ。」

 この頃、ソンはもう社長の座は自分の息子に譲っていた。ソバが教育してくれたのだから、特に問題もなくそのまま、自分は引退をして、趣味であるこの緑化計画に没頭した。

水はルーザ地方から確保できたし、後は機械任せだ。リリーはかつての旧ライト軍と反ロボット軍たちの縮小により倉庫に保管されていて動かなくなったディ-五型ロボットに目をつけ、砂漠でも大丈夫かをソンと共に見に行った。

「十体くらい確保できるといいですねぇ。」

「そうだな。それくらいいないと困るだろう。」

「じゃ、国に十体で申請しますか?」

「いや、ここの半分だな。そのうち、使うだろうから多いほうがいい。」

さすがに戦闘用に作られていたため砂のような細かいものが入っても今の最新技術を追加すれば、平気なようだった。ロボットの社員のファニーもやっとここに見に来ることができるようになっていた。

「僕が最初の砂漠に入ったディー五ってことですよね?」

「そうだ。」

「やったーーー。」

 ファニーはかなり大はしゃぎをしていた。

倉庫にいたロボット達の半分を砂漠の緑化目的と国に申請した。許可がでるまでにやっぱり時間がかかったが最終的には許可がおり、彼らに任せる仕事も増えた。

「僕も彼らとここで働きます。」

 ファニーは動物語の習得に励んだ。

植物も水分少なくても広がるタイプの改良に成功し、緑のツルはだんだんと砂の移動を止めていった。

水のあたる部分で、日のあたらないところからからツルにコケが出来始め、どこから飛んできたのかわからないような植物が芽を出し始めた。それを食べる小動物も現われ、食物連鎖が始まりだしていた。

「ルーザからの物ではないような物も、交ざっているな。」

と、ジャミンは映し出されたスクリーンを見つめていった。ジャミンはクレム地方に残って、砂漠に適する植物と動物の研究をしていた。

「もともと、砂漠にあった植物なんじゃないですか?」

「そんなものがあるのか?」

「どうでしょう?」

「もともと、植物のあった地方ですから、隕石にやられていなければ、水がある限り緑が増える可能性があります。」

と、スクリーンの向こう側でジャミンは資料を見つめながら言った。

他にも生産性の植物を植え始めた。少ないものでも水がかれない限り育ち続ける植物の開発にも成功してきているからだ。

その食べ物を荒らす、動物も出てきた。

「どこにいたんだ?」

と、実際に動物を見つめたソンは言った。

「と、いうより、何の動物なんだ?」

「砂漠の生き物の進化ですかねぇ・・・。」

「早すぎだろう。」

「それか、他のものを食べていたのに、ここに集中的に食べ物が出来たから集まってきているんじゃないでしょうか。」

「いいのかなぁ・・・。」

と、リュイが言う。

「いいんじゃないんですか?」

「まぁ、いざとなったらこの動物も食べられるかもしれないしな。」

「・・・誰が食べるんですか?」

と、リリーは冷ややかに言った。どうみても、外見だけでは食べる気にはなれない感じの動物達だ。

 ソンはしばらく考えて言った。

「・・・わからん。」

「ロボットは食べませんよ?」

と、リリーは一応言ってみた。

「それくらいはわかる。・・・やっぱり、ゼラルドの人々とか。」

「せめて、毛皮程度に。」

「そうか?」

「どうでしょう?」


判明


そんな時、なぜ、この事業にコザルド氏が追っていたドウボーが寄付金を送られつづけていたのかが判明した。

 ニュースは映像で流れた。

「・・・臨時ニュースです。ポニュ地方で行われていた研究は人体と動物を合体させる研究であったことが判明し、その被害者がたくさん現われたとのことです。他にも遺伝子操作をしていた疑いがあります。急に判明したこの事実に政府関係者は動揺を隠せないようです。この地方は当時、砂漠化がされる地域になっていました。現在は五代目、ソン・ロデイア社長が緑化計画を継続しています。その被害者の一人がこの、砂漠の緑化計画に寄付金を送っていた模様です・・・。」

「らしいよ。」

ピッ

テレビを消してソンは言った。テレビといっても、壁に映しだれる形式だ。

「へぇ。」

「じゃ、あの動物達、もしかして、施設から来ているかもしれないんですか?」

と、ファニーは言った。ひさしぶりにゼラルドの事務所に顔を出していた。

「だねぇ・・・。」

「と、いうことは、政府関係者が来るかもしれませんね。」

と、リュイも言った。

「来ています。」

「え?」

「いえ、むしろ、来ました。」

 ファニーには聞きなれない足音が聞こえたようだ。

「誰が?」

「コザルド氏です。」

「あー、あの失礼な奴―。」

「・・・社長、そこまで言わなくとも・・・。来ているんですか?」

「ええ。通してもいいですか?」

 ファニーはソンではなくリリ−のほうを見て聞いた。

「ええ。」


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