仮設の始まり
仮設
そのソン社長はこれを、ネットの中のお話の中で見つけたのだ。
〜仮説〜
〇ゼラルド砂漠の土地を買う。
〇そこに、太陽ソーラーと風力発電をかねた、花の形の装置を立てる。
(影のせいで急激にそこの動物に迷惑をかけないため)
〇その電力でかせぐ。
その代金でポンプ車を購入。
と、同時期に細長い塔を(周りをかこってから)建てる。
万が一、倒れるときは下に埋まっていくように。
〇その塔の中に水を入れる。
塔は電力で水を少しずつ外の砂漠に水を与える。
〇そこに植物を植える。芋系が強くて良だろう。それを売る。
〇ポンプ車を購入。(2台目) 塔の中に水を入れる。
太陽と水と砂があれば風が強力でも長時間かければ緑の土地になるかも・・・。
そこで、この仮説という話は終了していた。ソンはすっかりこの仮説の内容に魅了された。そしてひそかにこの仮説を実行しようと考えたのだ。
これは自分の会社に出来ることがあったら書けという一般公募のページを見ていて、発見したものだった。普通は企画者の名前や企業名が入っているものだったが、どこにも記名されていなかった。ただ、シェーマンからの通信だということだけが記録に残っていた。
もしかしたら、何らかの方法を駆使すればこの仮説を書いた人物を特定できるのかもしれないがソンは黙っていることにした。自分の考えた案だという事にしようとしたのだ。黙って事業展開すればばれないだろうと考えたし、もし書いた本人が言い出したのは自分だといいに来ても、証拠はないというつもりでソンはこのネットを見たノート型パソコンを売った。
そして、確かにソンはゼラルド地方の砂漠の土地を購入した。それもクルドから近いところに仮会社まで建ててしまった。そして企画室の中からメンバーを選び出した。
メンバー選出
ソンは、とりあえず、結婚している女性のリベラ・ドラスと、エレミ・ローラはクレムに残ってもらうことにした。クレムでやってもこともある。ソーラーの開発を手伝ってもらうことにした。当然のようにロボットのファニーは砂やほこりが舞うような場所では、今の技術では壊れてしまう可能性があるので残す。
「あとは・・・連れて行こう。」
残ったメンバーには電力関係の情報収集や利用方法をファニーと考えてもらうことにした。
「これで、よし・・・。」
計画を建てている間に、申請し、申し込んでみたのはいいのだが、気になったのはこの仮説にあった花の形の装置・・・。そんなものは存在するのかどうかということだ。あってもいいのではないかと探しては見たが、変わった形の風力発電の装置はあった。だが、仮説の中にあるような花形で電気ソーラーと合体させたものはみつからなかった。
そこで、サザル地方にある会社に作ってもらった。生産コストが安くできた。
砂漠地でこの仮説をやってみることにしたのだ。
問題は砂漠に建物が建つのかということだが、ピラミッドが建てられるなら風力と太陽ソーラーをあわせたものも建てられるだろう。
しかし、問題はこれだけではなかった。砂の移動が大きくて、植物が育ちにくいのだ。砂の移動のせいで、ソーラーたちが揺らいでしまっては困る。調べたところ、かつてはポプラを植えたという話が見つかった。しかし水分争いでかれてしまったようだ。それなら水分の側に植えればよいと漠然と考えていた。
さて、そして建設ははじまった。しかし、どうしても必要部分が理解できない、というより、文章だけでは創造できない状態にあった。
そこで、ソンはできる限りの力を使い、駆使して仮説を立てた人物を探し当てたのである。電話をかけて、人気の多い場所であってもらうことにした。
「はじめまして、リリー・シュルツです。」
ソンにはただの女の子に見えた。特別にきれいだとか、特別に身長が高いなどのような身体的特徴は全くないといっても過言ではなかった。
初対面の人が苦手なのか、萎縮しているようだともソンは思っていた。
そして彼女に、彼女がたてた仮説を実行していることを説明すると、当然のことながらとても驚き、戸惑ったがやっと本当のことだと信じてくれた。
「本当に建てるんですか?」
「君の仮説が気に入ってね。費用を稼ぐ方法もあったのも気に入っている。」
「あの・・・ゼラルド地方がどこか知っていますか?」
「僕は、クレム地方の生まれなんだ。隣の地方の砂漠くらい知っているよ。」
「でも、あそこは、石油の価値がなくなってきて、それ以来たしかに人々はあの場所を離れましたけど、真ん中は地雷でいっぱいですよ?宗教戦争の真ん中に当りますから。」
「今でも?」
「今でもです。だって、誰も取り除きませんから。」
「・・・じゃ、安全確保が先?」
「そう・・・ですね。クレム地方や、ルーザ地方の近くは大丈夫ですが、半分よりも先は危ないと思います。」
「地雷辞去が先か・・・。いや、平行にやっていこうと思う。」
「そう・・・その方が安全ですね。」
「それでだね、君にも加わってもらいたい。」
「何にですか?」
「企画部の部員にだ。」
「・・・・・・・・・。」
呆然としているリリーにひたすら説得をし続け、企画部のメンバーに会うことを説得した。
ゼラルド砂漠
ゼラルド砂漠というのは、最初は地方だった。それもかなり大きな地方だった。人が住み、緑があり、北にクレム、西にルーザ、南にポニュ、東にトライという、それぞれの地方の真ん中にあった地方だった。そのせいか、たくさんの人が通り、栄えているといっても過言ではない地方だった。
たしかに、ルーザ地方とトライ地方は宗教が異なり、神が異なっていた。しかし、お互いにそれで戦うほどの人数もあらず、敵対しつつもなにごともなく時間は流れていた。
その中心にあったゼラルド地方が中立の立場を取っていたためと言えるのかもしれない。そのゼラルド地方が砂漠になったのは石が原因だった。
ある日、突然降ってきたのだ。
赤外線を弱くするための幕を突きぬけ、空気清掃用の霧も付きぬけ、ゼラルドに落ちた。
地方に何か、落ちてくる可能性というのはかなり低いものだった。
そして、急にゼラルド地方は水の周りが悪くなり、人々はそれぞれの地方へと散らばった。
しかし、原因究明は出来なかった。
何かが起こった場合は、国が調査するのが決まりだった。しかし、そのまえにルーザ地方は神の怒りだと訴え、トライ地方は自分達の守り神だと訴え、宗教上争い始めたのである。最初は口論程度だった。ところが、その石に近づいたルーザ地方の一人が地雷で足を失った。これが戦争の始まりである。
ルーザ地方はトライ地方が地雷をつけたものだと言い、トライは言いがかりだと反論した。そして、お互いに石の周りに地雷を置き続け、結局どっちも石には近づけないという状況が出来上がってしまったのだった。
砂漠は広がり続け、ルーザ地方にもトライ方にもなじめなかったゼラルド地方の人々の中には、砂漠で生活する住人も出てきた。
そして、南のポニュ地方は内密に両方に武器を与え続けて栄えていた。のちに最初の地雷はポニュ地方が仕掛けたのではないかと言われるが、それは随分先の話となる。
ソーラー
「彼女が今回からこの企画部に入ることになったリリー・シェルツさんだ。」
ソンが紹介した。
「よろしくお願いします。」
「若く見えるが・・・いくつだ?」
「十六ですけれど・・・。」
さすがに、ジャミンも驚いたようだった。
「どーもー。」
といったのは、ジュンでパソコンから目を離さずに言った。
「こちらこそ、よろしくー。」
唯一、握手を求めてきたのはリュイだけだった。
「彼女が、企画部の受付をやってくれている、レミさんだ。」
「よろしくお願いします。」
「こちらこそ。」
レミはそつなく、挨拶をした。
「それじゃ、今回の企画だけど・・・。」
と、議長のジャミンが話し出した。
「あ、その前に。」
「なんだ、ロイズ?」
「リリーはどこの出身なの?」
「国です。」
「・・・国?ってあの上の?」
「そうです。」
みんなの視線が集まった。ジュンでさえ、パソコンから目を離していた。
「めずらしいね。」
「よく、言われます。」
「・・・議題に入ってもいいか、ロイズ。」
「あ、ハイ。」
「それじゃ、今回のゼラルド砂漠緑化計画についてだけど・・・。」
こうして、初めての会議が始まった。
そしてリリーを連れてゼラルド砂漠の近く作成現場で花形の模型とはどんなものを想定していたのかを説明してもらい、ようやく花形の風電力ソーラーが完成した。ソンはヒマワリのような花を考えていたのだが、リリーが考えていたのは菊のように花びらがたくさんあるような花だったことが判明した。そして満遍なく当たる様に鏡が取り付けられる方法が検討された。
リリーはシェーマンの学校に通いつつ、その合間に会社へと足を運び、そのソーラーを完成させた。ここまでで、約二年半もの月日がたっていた。
ソ−ラーの軽量化とまんべんなく、太陽が当るために花びらの裏につけた鏡の角度を研究するのに手間取ったためだった。
父親は国に帰ったがリリーはここに残ることを希望し、父親もそれを認めたのだった。
ソーラーの完成にあまりに時間がかかったのは、電気の部分は傷がつきやすくそれをどうするかが解決に時間をかけさせたのである。
「とりあえず、これで、資金集めですね。塔の部分はまだ先のことになりそうですね。」
「そうだなぁ・・・。しかし、ま、どうにかなるだろう。」
「いい台詞ですね。」
と、リリーは初めて笑った。
「そうか?」
十八歳でシェーマンの高校に通っていた彼女はそのままソンの会社に就職し、企画部に入った。てきぱきと人もロボットも動かした。もちろん、高校を出たばかりの少女が上から指令を出すのだから文句も多く出たし、中傷する者や、作業をボイコットするという人やロボットも現われた。
ところで、ただの少々変わった思考をすると考えていたリリーは確かに完全な素人だったが、そのアイディアはあまりにも思いつかないことを考えるので、ソンはすっかり気に入っていた。
しかし、そのことでかえって色々言われるのは少々心苦しかったが、リリーは全然気にしていないかのようにしていた。心配のあまり聞いてみたところ、彼女はあっさりと言った。
「大丈夫です。異端の目で見られることには慣れています。私は一人ではありません。シェーマン地方には友人もいます。いつでも帰ってもいいんですから、ギリギリまでここでやります。」
そこでソンもなにも気がつかないふりをすることにした。ソンの知っている限りでもリリーはソンの愛人ではないかと言われていた。ソンの奥さんが怖いからとみんなにばれているからである。
妻の出現
どこにでもおせっかいな人とはいるもので、そんな奥さんに誰かが告げ口をしたらしく、奥さんのサヤは突然にソンの事務所を訪れたのである。
「サヤ、どうしたんだい、突然。」
「突然来たら悪いかしら?」
「そんなことはないが・・・なにかあったのかい?」
そこへリリーが顔を出した。
「社長、私と一緒に・・・。」
彼女は書類を見たままそこまでいいかけて、ようやくソンの妻に気がついた。
「お客様ですか?」
「あなたがリリーさん?」
妻は聞いた。
「失礼ですが?」
ソンはなぜサヤがリリーの名前を知っているのか考えつつも、紹介することにした。
「紹介しよう、僕の妻のサヤだ。」
「まぁ・・・。」
リリーの反応はソンにとっても、妻のサヤにとってはかなり意外なものだったらしい。
リリーは満面の笑みで妻に笑いかけたのである。
それはソン自身にも、ドアから覗いていた社員たちにも意外なことだったらしい。
リリーのこんな満面の笑みを見たのはソンもあまりにひさしぶりで忘れていたくらいだったからだ。それと同時に思った。リリーはこんなにも会社で笑っていなかったのだと。
「はじめまして、奥様、リリー・シュルツといいます。社長にはお世話になっております。」
と言ったあと、彼女はその笑みのまま妻の顔をしばらく見ていたかと思うと
「おきれいですねー」
といったのである。
これには妻も少々たじろいだようで何も言い返せずに、
「どうも。」
とだけ言った。
「あ、じゃあ、社長奥さんと約束されているんですね、では私一人で塔の説明会議に行ってきますね。」
とようやくソンを見た。
やっとソンは昔の記憶の旅から戻ってきた。
「あ・・・、いや・・・僕も行くよ。」
「あら、でも奥様と何か約束があるのでは・・・。」
「いいえ。来てみただけだから。」
とようやく妻もいつもの状態を取り戻していた。
それを聞いたリリーは言った。
「では、時間がおありですね?では、一緒に参りましょう。」
ソンではなく、サヤの腕を取って車に乗せて三人で説明会議へと向かったのである。
後で聞いてみたところによると妻同伴の会議はいまのところはソンだけが行ったらしい。サヤはリリーのあまりに意外な行動にすっかり飲み込まれてしまっていた・・・。それ以来、サヤは家でもリリーのことは一言も言うことがなかった。
過激自然保護団体
それからもリリーに対するする意見は厳しかったし、彼女の味方らしき人物もいたが敵のほうが多かったに違いない。それでも、ソンが背後にいたのでそうひどいことにはならなかった。
リリーの地位を完全なものにしたのは、砂漠に住んでいる過激な自然環境保護団体と名乗る人々が武器と共にやってきたことであった。
設置にいたる時点で、どこからともなく聞きつけたのであろうが少しずつではあるが、抗議文がきていた。ポニュの住民からもルーザ地方とトライ地方からも自然環境保護団体からも、そして意外なことに観光団体からも来ていたのだ。
しかし、ソンは少しずつではあるが彼らに対して少しずつ理解をしてもらう努力をリリーとしてきたのだ。それでも聞く耳ももたない連中と言う者はいるもので彼らは突然やってきたのだ。
「最高責任者を出してもらおうか。」
「お約束は?」
と受付嬢レミは聞いた。
「していない・・・が、出てきてもらう。」
といったかと思うとそれと同時に武器を持ち出し中へと入ってきたのだ。それをみた女子社員たちがパニックになり叫びながらいたところに一発、ものすごい音が鳴り響いた。窓ガラスがいくつか割れた。
「しずかにしろっ!」
「うるさいのはあなた方です。」
とリリーは言った。
「なに?」
「そんなものを見せれば騒ぎ出すのはわかっているはずです。」
「これが見えんのか?」
と相手はリリーに武器を向けた。
「私は老眼ではありません。十分に見えています。ここの最高責任者は私、リリー・シュルツです。ところで、あなたは武器を向けたままじゃないと話せませんか?」
言わせてもらうならこの場合の最高責任者はソンである。しかしそのときにソンは何をしていたのかと言えば最初の爆音の音にびっくりして腰が抜けて座り込んでいたのだった。
「一緒に来てもらおうか。」
と相手は言った。
「お断りします、御用の際はそちらから武器なしでもう一度来てください。」
彼らは側にいた女子社員を一人捕まえて言った。
「こいつがどうなってもいいのか?」
「あなた方は動物愛護の方々でしょう。同じ、動物である人間を殺すのですか?人間が武器を持てば強いことをあなたがたはよく知っているはずです。弱いものを殺すのが目的ですか?」
「・・・。」
彼らは黙って彼女を離した。
「それでは明日、この階の会議室で話を聞きますので、そちらの最高責任者同伴とその物騒な武器なしでどうぞ。」
しばらくの沈黙の後に相手は言った。
「・・・わかった。」
こうして彼らは去っていった。
「社長、大丈夫ですか?」
と座り込んでいたソンに向けてリリーは言った。
「ああ・・・。」
「明日ですけれども・・・。」
「な、なんだい?」
突然のことだったのでどこかに恐怖心が残っていたのか、しっかり声が上ずっていた。
「明日は社員、最小限にしましょうね。死人は少ないほうがいいですから。」
「そ、そうだね・・・。」
「それでは、誰がお休みになります?希望形式をとりたいと思います。」
リリーはそこにいた社員全員に向かってにっこりと不敵の笑みを向けたのだった・・・。
次の日、確かに彼ら五人は武器なるものを最小限でやってきた。比較的、真面目な人たちのようだ。
「社員の姿が見えないようだが、つぶれたのかな?」
と、相手側の一番の老人に見える人物が言った。
「いいえ、今日は全員の要望で出張または休み、または家庭内での仕事をしてもらっています。」
とリリーは説明した。
「私とこの社長が責任者です。私たちだけいれば十分でしょう、お茶を入れますのでおすわりください。」
「確かに。」
お茶が入るまで、不気味な沈黙が流れた。
それはかなり長いように感じられたのはソンだけだったのだろうか・・・。
そして全員座ってから話は彼女の一言から始まった。
「それでは、はじめましょう。」
「それでは、こちらの要求を言おう。いますぐ、この計画を断念しクレム地方に帰ってもらいたい。」
「砂漠に住む生物保護のためですか?」
「そうだ。それと我々の場所を守るためでもある。」
「では、こちらの意見も聞いてください。」
「いや、聞く耳は持たない。受け入れてもらえない場合は武力行使する。」
あまりにはっきりした意見だった。
「し、しかし、それはあまりにも急な話だ。」
あまりにも最高責任者として何も言わないのはどうかと思いソンは言ってみたが、声が震えていてあまり意味の無い言葉に思えた。
「わかりました。」
と彼女は言った。
「リ、リリー?」
ソンはおいていきぼりにされたような気分でいた。
「攻撃してください。ある社員に頼みました。私たちが死体で発見された場合、ゼラルド砂漠にある装置を全部、爆破するようにと。ついでに地雷と真ん中にある石にまで影響があるようにしてあります。我々のいなくなった後で装置を後で、解体されて、武器の一部になるというのなら、使えないくらいまでこなごなに壊します。攻撃なさればあなた方が守ろうとしている生物にも害が及ぶでしょう。それとも、多くを守るためなら少しの犠牲など構わないと言いますか?」
「・・・・・・。」
「こちらの話を聞いてください。まず、長年をかけて砂漠の生物たちは適応して住んでいます。それをすぐに進化させることは不可能です。そこで、砂漠になったほぼ同じ年月をかけてゆっくりと緑を増やしていきます。」
「しかし、それでは時間がかかりすぎる。君らにそれを行う時間は無い。」
「そうです。我々は透明な機械で、まず、影による影響を避けるところから始めます。機械をおき、水は現地に置いていくロボットに運んでもらいます。彼らはその代わりにその土地でできた作物を得るのです。その作物を水の所有している地域の人に渡します。その為の技術も教えます。ゆっくりと時間をかけて緑になればいいのです。もちろん、その頃には私もあなたももうこの世界にはいないかもしれません。ですが、我々の思いは永久にあるのです。」
「・・・だが、この地方の問題にロボットの力など・・・。」
「地方の問題ではありません。よろしいですか?言葉も肌の色も髪の色も目の色も人もロボットも関係ありません。我々の目に映る風景が同じであるならできる人や物がするべきことなのです。あなた方もわかっているはずです。確かに動物保護は大事なことです。でも、この地方を壊しては何も守れないということを。そして全てが無駄になってしまうことを。我々を含めて、全ての生物に緑はあったほうがいいのです。」
「しかし、砂漠の生き物はどうなる?住処が奪われるではないか。それに君たちがそれを守るという保証はどこにも無い。」
「生物はもっと奥の砂漠に移動しますが彼らの中には確実に緑に適用して進化する動物がいます。約束を守る保証はありません。そこで、あなたの命ある限り、側で見つめていてください。そして、命がなくなっても次の誰かに思いをたくせばいいのです。人でもいい、ロボットでもいい、信頼できる誰かに。なんどでも話し合いには応じます。」
数秒だったかのか、数分だったのかソンにはわからないほど、静かな無言の時間が流れた。
「我々は戦争に疲れた。基本的には話し合いに応じよう。」
彼らは去っていった。とりあえず、彼らは見張る役割をすることになった。それと同時に、砂漠で行なわれる会議にも参加することが決定した。
リリーは一人で彼らを去らせたのである。
「社長。」
彼らが去ってからリリーが言い出した。
「社員たち、出社させますか?」
「・・・いや、明日からでかまわないよ。」
ソンはそれを言うだけでもういっぱい、いっぱいだった。
そんな思いはさておきリリーは
「では、私も家へ帰ります。」
と言った。
「リリー。」
「はい?」
「さっきのは本当か?」
「なにがですか?」
「僕らが死んでいたら、ソーラーを破壊するって話だ。」
「嘘に決まっているじゃないですか。社員の誰が私の言うことなんか、聞いてくれます?」
「・・・嘘か・・・。」
「まぁ、私は少しは何かあってもいいようにと薄手の甲冑を身に着けてますけど。」
リリーは薄手のジャケットを捲り上げた。
「だから、そんなもの、羽織ってたのか。ずるい!」
「ずるいって、社長の言う台詞ですか?頭をやられたら同じですから。」
「それ、どこで?」
「・・・うちの会社の商品ですけど?」
「・・・。知らなかった。そうか・・・。さて、とりあえず、今日は帰るか。やっと足の震えも止まったし。」
「ええ。・・・帰りましょう。お先に。」
言葉どおり彼女はさっそうと部屋からは出て行った。しかし、受付の前に来ると言った。
「もう出てきてもいいけど?」
がたごと音を立てて、出てきたのは受付嬢のレミだった。
「なんで、わかったんですか?」
「玄関の砂取りマットの電源が入ってた。ここの鍵を持っているのは、あなたと、社長と私だけでしょう?」
「ああ・・・そういえば、入れたような・・・。」
「日ごろの習慣って抜けないものね。最初は誰かが入ったのかと思ったんだけど、鍵は壊されてなかったし、誰も人はいなかった。あと、隠れるならここだと思って。」
「ああ・・・そうなんですか。」
「今日の仕事はお休みだそうよ。」
「わかりました。でも、今日の分の出社記録だけはつけてから帰ります。」
その言葉に、リリーは笑っていた。
「私は早退じゃないからね。」
それから、このゼラルド地方に住む砂漠住民では一番強いと言われている彼らが話し合いに応じるとういうことが、あっというまにゼラルド地方の住人に伝わり、この会社とだけは、ゆっくりとゼラルド砂漠に住む人々となんどか話し合いが行われた。




