隕石落下のその後
この地の向こう 三
序章
あまりの自然災害に恐れをなした、かつての人々は国を空中に上げてしまった。そして、強風などを避けながら動いている。ほとんどの住人はゆっくりと時間をかけ、移動していったがこの地を離れないという者も現われ、それは本人達の意見が尊重された。
国は国、地方は地方という形式で動いていくことが多かった。
それでも、言語は段々、似たようなものになり、それでも、独自の文化はなぜか保護されながらあり続けた。
服はピットリウムという、自分の体系に合わせた服が作られ、一年間で、体型に何の変化がなければ、ほとんどの人はそれを着用するようにうなっていた。
交通機関も色々、より、自然にやさしいものにと変化していった。
地方に残った者たちは自分達で食べ物や生活品を作る道を選び、他の地を求めて動き、この地は完全なる人手不足になっていた。そこで、ロボットが急激に開発され、人を手助けするタイプから、人にそっくりなものまで作り出された。その結果、人口よりロボットの方が多い地域もあった。ロボットとの結婚も認められ、一緒に焼かれることを望んだロボットも多くいた。それ以外にロボットの停止が出来ないという背景もあったのだが。
何十年か前、そのロボットたちを急激に機能停止させるウィルスが出回り、エーアイキラーとまで言われた。ロボットを始め、あらゆる機械が止まり、大混乱に陥ったが、再び、何年かしてそれは特効薬により、絶滅が宣言された。
そのときに、エーアイキラーの効かないロボットとしてできたのが、最新型のディー五である。しかし、これは、戦闘用の為、国が現在も回収している最中だ。
バスなどのあらゆる交通機関が復旧し、機械類も正常に動き始めた。やっと、人々がおちつきはじめ、元通りの生活を始めていた頃だった。
リリー・シュルツ
リリー・シュルツは、国の生まれだった。
国と地方を入れて、全体の人口の四分の一は国で生まれ、残りは地方で生まれるものが多かったが、大抵の人は生まれた場所で一生を過ごしていた。ロボットは一握りを除いて、ほとんどが地方にいた。
そして、仕事によって国から地方へ降りていく者はあった。地方から国にやってくる逆の場合も、大抵は当人だけで、子供を連れて行くことはしなかった。しかし、リリーの父親の、ディオ・シュルツは少し事情があった。自分の娘を生まれてすぐに亡くなった母親の形見だといって地方に連れて行ったのだった。
国は空に浮いている。あらかじめ機械によって予測された雨や雪や強風などを避け、大抵はおだやかな地域に浮いている。しかし、高いところにあるぶん酸素が必要なことから緑が多く、強すぎる太陽で葉が枯れないようにと上にはガラスがあった。風は吹いても、強風に悩まされることはなかった。
そこから降りてくるには専用の乗り物がある。垂直に上下に動く乗り物だが、スピードは人の耳に影響がでない程度だ。もっと早い方がよいという意見もあったが、製作者が落下しているようで怖いからとこのスピードとされた。
つまりリリーは雨も知らなければ雪も風が強くと弱くと表現されることも、それでこの地があぶなくなるいう事さえも知らなかったのだ。だからこそ、成長していく中で天気に興味をもち、利用することを考えたのかもしれない。
しかし、彼女はあっちこっちに移動することで文化の差に悩み続けることになるのだ。
移動の歴史
国ではまず、秩序を重んじ、ちきんとしているのは常識だった。
リリー、三歳の頃に父親の転勤で移住となった。
彼らが最初に行ったのは、カルナレ地方だった。
国からこの地に通じている場所は全部で二箇所ある。国は地方の約三分の一の面積で海の上の空に浮いている。地方の上に浮くと陰になってしまい、地方の住民から作物に影響があると苦情が来るからだった。
そこで、国からこの地に降りるには、この地の海にある無人島に下りなければならない。自然な島ではなく、人工的に作られた場所だ。海の上を天候を気にしながら自動的に動いている島なのだが、丁度その時は、カルナレの地方の方に島が移動していたのだ。
カルナレ地方では物事をはっきり言わないといけない環境だった。そうでないと、自分が誰だかわかってもらえない格好をする必要があったからだ。暑い場所で、雨が降りやすいために、木や草が多く、動物も多い。間違えて人によって撃たれたりしないように、一目で人間だとわかるほうに白い格好をする必要があった。
肌を出すと、太陽の力によって焼けるということもあったが、長い草などで体を切ってしまう事があったため、住人は大抵、全身を覆っていた。
それは服が薄くて頑丈なものになっても、情報が伝わっていても物まで移動できなかったほど山の中にあった村だったからだろう。文化として全身を覆う格好が残った。このカルナレ地方でリリーは太陽の強さと水の影響とを学んだ。
シェオ地方に、六歳で移住する。
そこから、シェオ地方に移った。シェオ地方では海で働く男性軍隊で働くが強いものとされ、男尊女卑の世界だった。女性よりもロボットの方が低い地位にいた。
ロボットは大抵、海ではなく、事務にいた。海水には強いが、潮風に弱いことが国の調査で判明したためだった。
それだけではなく、いつのことだったか、人とロボットが海に落ちるという事故があった。人は当然、帰ってこなかったが、ロボットの方は海底を歩いて帰ってきたのだった。それに違和感を覚えた人々はあまりロボットを対等な扱いとして受入れなかった。
カルナレ地方でのようにはっきり言う者は怒られた。シェオ地方ではカルナレ地方とは逆に海が中心の生活だったために、食べ物も変わり、格好も最新のピットリウムを着るという環境に移った。
学校にも入ったが、男女の授業内容があまりに違っていて、リリーは変わり者扱いされていた。そのせいか、友人と話すよりも、電子掲示板を見ながらあっちこっちの地方について読むことが多くなっていた。
また、九歳の時に移動になった。今度はサザル地方だった。近代ビルが立ち並ぶ、この地方では誰も隣人に興味など示さず、ただただ、町が急いで動いていた。何を言っても誰も聞いておらず、何も言わなくとも誰も気にしなかった。
学校の教育も人だけというだいぶ閉鎖的思考だといえるのかもしれない。ロボットには教育の場は与えられず、プログラムを埋め込むのが常識になっていた。
他にもたくさんの地方の学校を転校し、編入し、たくさんの人と文化に出会ったリリーはすっかり人間不信に陥った。誰を信用していいのかわからずにいた。
顔はすっかり能面のようになり、何も語らず、ただ、その地方の習性を観察している性格が身についていた。
そして、忙しかった父親がやっと、自分の娘がおとなしいだけの娘ではないということに気がついたのは、エファーリア地方に移動になったときだった。
学校からやめてほしいと言われたのだった。
わけを聞いても、娘は何も語らず、学校側は校風に合わないからだと言った。
「あわないって・・・。どういうことですか?」
「父親なんですから、お嬢さんに聞いてみてはいかがですか?」
「なにがあったんだ?」
「・・・。」
リリーは何も言わなかったのだが、実は生徒の一人を、殴っていた。いじめではない。やられた分をやり返しただけだったが、彼女は腹にあざが出来ていたが、彼女が殴ったのは顔だった。 それは、さすがに隠しておくことも出来ずに、先生が原因究明に乗り出したのだが、彼女はいっさい理由を言わなかった。地方を回るにつれて、異色の者は弱いといじめられることに気がついたリリーは勝手に護身用に武道を学んでいた。さすがに、ディオはまずいと思ったのだろう。 娘を国に帰そうとした。だが、リリーはそれを断った。
「なにを、急に娘の心配なんか、し始めたの?」
「お前が心配だからだろう。」
「いまさら?ずっとほっておいたじゃない。」
ディオは何も言えずにいた。
リリーは彼女なりに心配をかけないようにと、何も言わずにいた。そして、これからも何も言うつもりはなかった。
「国へ帰るなら、一人で帰って。私はここに残るわ。」
「この、地方にか?何を言ってるんだ、ここにいて、どうする?」
「誰がつれてきたのよ。」
やっぱり、ディオは何も言えずにいた。
十六になったリリーは考えていた。たぶん、国へ帰っても自分の居場所はない。自分と同じような環境の人がいても、今の自分と仲良くなってくれるかなんてわからない。それならば、この地方で自分の合う場所を探そうと。
父親の最後の転勤地はシェーマン地方だった。シェーマン地方はかつて天才用学校があることで知られていたが、すでに学校は壊れ、普通の学校になっていた。その代わりに、塾で有名な地方になっていた。リリーはシェーマン地方の学校でやっと変わった友人たちを手に入れた。好きな道に進み、それを極め、人に批判されることでも自分の道を信じていた。たくさんの地方からいろんな生徒が来ていたのも影響したのかもしれない。やっと笑うこと、人を信用すること、大切にすることを覚えたのだった。
そんなとき、ソン社長の載せた文章を見つけたのである。
ソン・ロデイア氏
一方、ロデイア会社の社長、ソン・ロデイアは小さい頃から変わりものだと言われていた。もちろん、社員のほとんどがそう思っていた。そして、自分でも変わっているのだと信じていた。だが、彼は何十年後かに出した自伝にこう書くことになる。
『自分は変わっているのだと自分でも思っていた。たぶん、他の者にもそう思われていていただろう。だが、違ったのだ。私は変わっている者が好きなだけでそれを演じようとしただけなのだ。本当に変わっている者は、自分が変わっていることにさえも気がつかないでいて、かおかつ、人がしないような発想を無意識にする人のことを言うのだ。』
ソンはクレム地方で生まれ育ち、父親の教育によって会社運営を覚えた。しかし、実はソンだけは知っていた。自分よりも弟のスバに経営の才能があることを。そこで、ソンは弟を副社長にした。そして、自分は趣味の世界へと走っていった。それも、なぜか、あまり大きな損をしないことが多い。弟は弟で、そんな兄には天性があるのだと信じていた。それぞれが、結婚し、子供もでき、とにかく文句のない人生を人並みに送っていた。
ソンがクレムから出ることは大人になっての出張くらいだった。
父親がそのまま渡してくれた会社をまじめに運営し、うまくいっていた。父親の育て方がよかったせいだろう。若いうちに会社を引き継いだが、経営自体は順調に進んでいた。しかし、社員の悩みの種はソンは暇つぶしに何かを行うのが好きだった。それを社員にパソコンで提案発表するのが趣味だった。そして、それを実行させたのである。
その専門の部署まで作って。
企画室
文章が流れる日、企画室の社員八人は口々に色々言っていた。
「また、社長か?」
言ったのは、カルナレ出身の議長、ジャミン・サイド。最高年齢という理由から議長になっていた。
「何回目だ?」
「八回目だろう。」
「だいたい、二、三年に一度の企画だよ。」
と、エファーリア地方出身の副議長、ジュン・フランドは他のことをパソコンでやりながら話した。目が悪いのは子供の頃からずっとパソコンをやってきたせいだと言われているが審議の方は定かではない。
「一回目は・・・太陽の暑さを利用したエネルギー作りだったな。」
暑さを集めてエネルギーにするという機械の作成だった。六年という時間はかかったが成功したと言えよう。
「おかげで社会環境にも役に立って儲かっている。」
「二回目は失敗したのよね。」
受付嬢のレミ・サレンも話に参加していて、言った。
「なんだっけ?」
「氷山の持ち上げ。」
「あ・・・、あれはなー、国から言われちまったもんな。」
「中にいる生物にも、影響が出るからってやつだろ?」
と、大学で生動物学を中心にやったジャミンが言った。
「だいたい、物理的にも資金的にも無理があったのよ。」
氷山を砂漠へ持っていこうとしたのだが、さすがに反対が余りにも多く、しぶしぶ断念した作戦だった。一年でだ。「第三回目は・・・。」
「圧力に負けない、金属の作成だよ。」
「人工金属の作成・・・最初は何に使うのかと思ったがね。」
「深海用か。」
「あれはなかなか、おもしろい調査結果がでたよな。」
「海の調査員たちは喜んでいたけどな。」
人工の金属はぞくぞくとなぜか、あっちこっちで作成されるが、それが実際に使えるものかどうか判断されるのはかなり時間のかかることだった。国の方で自然に問題がないか、人体に影響はないかなどいろんな項目をパスする必要があるせいだった。かなり、めずらしく、この人工金属は一度で成功した。三年という最短の記録を出した。
「第四回は無理だった。」
「なんだっけ?」
「天気の作成。」
「あー雨は降らせることは出来ても、止められないってやつよね。」
と、リベラ・ドラス、エドマール出身が言った。
「そうそう、ルーザ地方の川が大反乱起こしたもんな。」
大迷惑をかけ、やっぱり一年で撤退した。
「第五回は、ロボットの導入だよな。」
「エーアイキラーも治った時にね。最新型をね。」
「僕のことですか?」
唯一のロボット社員のファニーが言った。それには返事はせずに話は続いていた。
「第六回目はスーハの森の解明の手伝いだっけ?」
「あれはー、大変だった!」
と、嘆いたのはロイズ・カーラー。ルフェの出身で、企画部にはいって最初の仕事がスーハの森の解明だったから印象深いのだろう。
「結局、五年手伝っても終らなかったもんな。」
「まだ終ってないんだろ?」
「あと十年はかかるみたいよ。」
と、ロイズと同期のエレミも言った。ちなみにサザル出身だ。
「あんなに、大量のロボットを利用しているのにな。」
「広いってことだよ。」
すぐに終わるだろうと思ったスーハの森の調査は、思った以上に広大で時間がかかることと、きのこや動物が見つかっても食べられるものなのか、調理法にはどんなものがあるのか、どうすれば栽培が大量に出来るのか、解明できるのはかなり時間がかかると判断して、撤退した作戦だった。
「七回目、覚えている。」
と、ジャミンが言う。
「何?」
「ガヒルダ鉄工場の再生。」
「ああ、環境的に美しくないからだっけ?」
「ありゃー、なににしたんだっけ?」
「カルナレの森と森をつなぐ、橋作りでしたよね。初めて、僕の力が役に立ってよかったですよ。」
ファニーが言った。
「ああ、そうだ。」
「全部で八個くらい作った?」
「七個だよ。」
と、その当時の資料をパソコンで見つめながら、ジュンが言った。
「跡地はなにが出来たんだっけ?」
「川を利用した、なんかの電力系会社だった気がする。」
ガヒルダ鉄工場は、ずっと鉄を使っていた工場の置き場所になっていた。国はどうにかしようと意見を言うだけで長い間、動かなかった問題にソンのほうがさすがに頭にきたようでさすがに、先に動き出したものだ。
ソンの方が気が短かったらしい。しかし、国からの苦情は一切なく、事業はさっさと動いた。しかし、すべての鉄を片付けるのに、七年かかった。
「今度は何をやるつもりなんだろう?」
と、ジュンがため息まじりに言った時。
こんな文章がパソコンで流れた。
「ゼラルド砂漠の緑化・・・。」
ボソリと声を上げて読んだのはジャミンだったが、誰が読み上げたのか、どうでもいいほど全員が呆然とした。
「あの、砂漠?」
「嘘・・・誰が言い出したのよ!」
「まじですか?」
ジュンはみかけによらず、砕けた言葉を使う。
「人間も行くの?」
「あの・・・ロボットは精密ですので、砂や埃は・・・。」
ロボットの社員、ファニーがおそるおそる言った。その言葉に他の全員が顔を見合わせた。
「・・・人間が行くのか?」
「どうする?」
「なにが?」
「いまのうちにやめるとか。」
と、エレミとリベラは言い出した。
「この会社を?」
「しかし・・・最低でも五年だよな?」
ロイスの慰めるような言葉にすぐに否定に言葉が上がった。
「・・・橋作りは八年かかったぞ。」
あいかわらず、画面から目を離さずにジュンが言った。
「・・・。」
「国から、中止は言われないよね。」
と、レミがため息をついた。
「無理だろう。」
「・・・。」
ジャミンは何も言わずにもうあきらめているらしい。
「ホント、変わった人だよな・・・。」
「前の社長もそうだったんですか?」
リュイが聞いた。
「いや。」
「全然。今の社長になってからいろいろやるようになった。」
「でもあまり、メリットってありませんよね?」
「金銭的にはないんじゃないかな。」
「社会的貢献がアピールできる。」
ジャミンは冷静にいった。
「いや、うちの社長はそんなことは考えてないな。」
と、ロイズは首を振った。
「なんでですか?」
「氷山の時に聞いた。」
「なんて?」
「なんで、思いついたんですか?って。」
「なんだって?」
「氷がたくさんあったからだそうだ。」
「・・・それで、なんでうちの会社って業績の伸びている企業なんだろう・・・。」
と、リベラはぼんやりと言った。
「さぁ?」
全員がため息をいっせいについた。
この企画室には全部で八人。一人はロボットだが、女性二人に一人は受付上。そして男性五人で成り立っている。出身が全員ばらばらなのはソン社長の希望だった。
そのゼラルド砂漠の緑化はこうして決まっていた。




