「紛争当事国」に武器輸出することは認めて大丈夫なのか?
筆者:
本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。
今回は「武器輸出5類型」を撤廃し、「紛争当事国に殺傷武器を輸出可能」になる法案が国会に提出されたことについて個人的な意見を述べていこうと思います。
◇「武器輸出3原則」「5類型」とは?
質問者:
そもそも「武器輸出3原則」とか「5類型」とかについてよく分かっていないんですけど……。
筆者:
まず根幹にある3原則というのは2014年から名前が「防衛装備移転3原則」と名前が正式には変わっています。
内容としてはそれより前の「武器輸出3原則」とほとんど同じものとなっていますけどね。
具体的な3原則とは?
移転禁止:国際紛争当事国や条約違反国への輸出は禁止。
限定的な移転:国際協力や日本の安全保障に資する場合に限り、厳格な審査を経て許可。
適正管理:目的外使用や第三国への移転を厳しく制限。
の3つになります。
その上で以下の「5類型」に限った種類しか武器を輸出できないというものでした。
救難:遭難した人や航空機、船舶を救助・探索する機能。
輸送:人員や物資を運ぶ機能(人員・貨物輸送用車両、航空機など)。
警戒:相手の行動を検知・監視する機能(レーダー、警戒監視システムなど)。
監視:特定地域や目標を継続的に監視する機能(カメラ、センサ類)。
掃海:機雷を除去し、航路の安全を確保する機能。
の5類型です。
そして今回は限った種類の5類型を廃止し、紛争当事国に対しても例外規定を設け輸出余地を残したのです。
そのために、3原則も一部が事実上無くなったも同然の状況になったんですね。
質問者:
◇「武器輸出禁止」の状況は軍需産業の先細りに繋がっていた
筆者:
この論点には大きく2つありまして、これまであった「殺傷武器輸出禁止」については大いに問題があったと思っています。
質問者:
筆者:
産業というのは結局のところ大量生産しなければ価格を抑えることが出来ません。
しかし、輸出をしない前提であれば需要というのは日本のみになってしまいます。
今でこそウクライナやイランの問題で防衛費を増やそうという流れから弾薬などの重要性についても理解が進んでいます。
ですがそれより前の2010年代より前では「なるべく軍事費は抑えよう」という流れがずっとあり、その上で輸出も出来ない状況から生産ラインを増やせない状況にあったのです。
実際のところ採算が合わないことから2000年代から20年間の間には100社を超える企業が防衛関連事業から撤退しており、三菱重工業、川崎重工業、三菱電機、IHIのいわゆる「防衛4社」のほとんど寡占状況になってしまっているんです。
質問者:
確かに会社数が減ると競争が無くなって価格が抑えられないと言った事はありますからね……。
筆者:
大量生産をして海外に売ることが出来れば内需が潤いますし、安く日本政府が買うことが出来れば、防衛費も研究開発や自衛隊の福利厚生など他の部分に予算を回すことも可能になります。
このように殺傷兵器を輸出をすることには大きなメリットがあるんです。
質問者:
でも、武器を輸出するだけでなく技術を輸出することも出来ると思うんですけど、いきなり武器というのは反発を招きやすいような気もしたんですけど……。
筆者:
実は技術の方がハードルが高いです。日本の軍事作戦はアメリカとのオペレーションによる共同作戦が想定されていることが多いです。
そのために技術面ではアメリカの許可が無ければ売ることが出来ないものが多く、逆に輸出できるレベルの日本独自で開発しているものはそう多くはないでしょう。
技術流出が少なそうな武器弾薬の方がイチイチ許可も必要が無いので影響が薄いんです。
その上で、今現在ウクライナとイランとで弾薬の需要というのは消費してしまったこともあって大きく高まっています。
アメリカも韓国から弾薬を買っているぐらいですからね。
ですので、長期的な需要も見込んで生産することにも意義があるのです。
質問者:
なるほど、技術だけの輸出というのは難しいんですね……。
そう言えば以前筆者さんはアメリカさんは「軍産複合体」で頻繁に戦争をすることで内需を潤わせているという様相があるとおっしゃっていましたからね……。
筆者:
そうなんです。そのために「5類型撤廃」に関しては賛成したいというのが僕の意見です。
◇戦争当事国に輸出するリスク
質問者:
でも、自民党さんの案にも「3原則は堅持する」という内容が法案にあるから大丈夫なのではないのですか?
筆者:
ところが、そのすぐ後に『「安全保障上の必要性」に基づき特段の事情がある場合は例外的に認める』とあるんですね。
そのために、直近の話を参考にするのであればアメリカ・イスラエルとイランとの戦闘に関しては『同盟国アメリカを支援する』という理由で武器を輸出しかねないんです。
しかも、「法律に制限がある」という理由で日米首脳会談で支援を断ったわけですから、今回の法律で「法律の制限がなくなり武器の支援は出来るようになっていく」わけなので、断る事がより難しくなったと言っていいでしょう。
質問者:
もしかすると、高市さんはこの間の日米首脳会談で今回の法改正の約束もしてきたのかもしれませんね……。
筆者:
内部の話は分かりませんがその可能性はありますね。
そしてイラン側が「アメリカ・イスラエルの支援国家」と日本をみなした場合はホルムズ海峡をタンカーが全く通れなくなってしまうリスクがあるんです。
戦争当事国に非殺傷兵器(防弾チョッキ、通信機器など)であればそこまで外交関係が悪化してこなかったという実績があります。
無用なリスクを持たせないためにも「戦争当事国にはいかなる条件でも絶対に殺傷兵器は輸出しない」という風に断言してくれないと不安感しか無いです。
質問者:
しかも、国会に対しては「事後報告」だけですからね……。
政府の暴走を止める余地が無いというのも恐ろしい話ですよね……。
筆者:
ただ、あくまでも「戦争当事国へ殺傷兵器輸出の余地を残す」だけであるとも受け取れるので、必ず起こることでは無いです。
ですが、アメリカと日本の力関係を考えたら「殺傷兵器輸出要請」を受けたら断ることは難しいのではないかと思ってしまいます。
イランの戦闘は停戦で収まりそうな雰囲気がありますけど、イスラエルは停戦中に攻撃したりする悪しき実績もあるので何とも言えないと思っていますけどね。
質問者:
殺傷兵器について輸出することそのものが出来ないと軍需産業が先細り、
戦争当事国に輸出すれば支援国家と認定されるリスクがある――何とも塩梅が難しいですね……。
筆者:
ですが、政治家の方のほとんどは超高学歴ですからね。そのバランス感覚とリスク管理を適切に行えると期待されているわけです。
とはいえ、この法案が正式に可決してしまえば暴走の可能性の余地はあるので国民側がしっかりと関心を持ち、監視していく必要があると思っています。
利権や力関係、甘い蜜などにあっという間に屈してしまうのが今の政治家だと思っていますからね。
これからは「数多くの国民が反対しているから無理です」と言った方向性にしなくてはいけないということです。




