第14話:王国調査団の来襲! 掃除する魔導具『円盤型ゴーレム(※ルンバ)』と、絶望する騎士団
「……主よ。プレハブの内外が、少々騒がしくなってきたぞ」
お風呂上がりのポカポカ状態でソファに沈んでいたエレノアが、鋭い視線をドアに向けた。
階層主が消えたことで、迷宮の生態バランスが崩れたのだろうか。いや、それ以上に『第十層に謎の白い城が出現した』という噂が、地上にまで届いてしまったらしい。
「アルト様、大変です! 迷宮の入り口から、王国の『特別調査騎士団』がこちらに向かっています!」
セグウェイでパトロール(※ただのドライブ)に行っていたセシリアが、血相を変えて戻ってきた。
「調査団か。まあ、これだけ派手にやってればバレるよな……」
俺は慌てず、まずは店内の掃除をすることにした。
焼肉やポテチの食べかすが散らかった床では、王国の偉い人たちを迎えられない。
俺は2200万ptの残高から、最新の掃除アイテムをポチった。
【全自動ロボット掃除機(水拭き機能付き・最上位モデル) 特価:80,000pt】
异次元ロッカーから届いたのは、黒光りする円盤状の物体だ。
俺がスイッチを入れると、『ピロリ~ン♪』と電子音が鳴り、円盤が自律的に動き出した。
『ウィィィィィン……』
「「「…………!!?」」」
エレノア、ヴィンセント、セシリアの三人が、同時に椅子から飛び上がった。
「な、なんだあの円盤は!? 魔力も動力源も見当たらないのに、意思を持っているかのように床を這い回っているぞ!」
「アルト、あれはもしや……古代遺跡に封印されていた、自律戦闘型ゴーレムの縮小版か!? 獲物を見逃さないあの冷徹な動き……恐ろしい!」
(いや、ただのルンバなんだけど……)
その時、プレハブのドアが激しく叩かれた。
「開けなさい! 王国特別調査団、団長のゼノスである! この邪悪な拠点を占拠している不届き者は——」
ドアが開き、フルプレートの鎧に身を包んだ精鋭騎士たちがなだれ込んできた。
しかし、彼らが見たのは、ソファでくつろぐ魔王軍の幹部二人と、聖教会の聖女。
そして——
『ウィィィィィン……』
騎士団長のゼノスの足元に、黒い円盤が静かに近づいていった。
「な、なんだこの不気味な円盤は!? どけ、この……っ!」
ゼノスが剣を抜こうとした瞬間、ルンバは彼のブーツにコツンと当たり、くるりと反転して別の方向を掃除し始めた。
「「「…………っ!!」」」
騎士団全員が、石のように硬直した。
「い、今……この円盤、私の気配を完全に無視したのか!? 王国最強の騎士である私の殺気を、塵と同等に扱ったというのか……!?」
「見なさい、団長! あの円盤が通った後の床を! 血も、泥も、一切の不浄が消え去っている! あれは……あれは伝説に聞く、不浄を喰らい尽くす【聖域の掃除獣】ではありませんか!?」
(いや、ただの吸引掃除と水拭きなんだけど……)
「この白亜の城……最強の魔族を従え、聖女を侍らせ、さらには神話級の自動ゴーレムを家畜のように扱うこの男……。貴様、何者だ!?」
ゼノスが震える声で俺を指差した。
「……ただのコンビニ店主ですけど。あ、ルンバが通るんで、足上げてもらえます?」
王国最強の騎士団は、足元を掃除するルンバに怯えながら、一歩も動けなくなるのだった。
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