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第1話:ハズレ枠の【ネット通販】と、深紅の魔女

「アルト、お前は本日をもってパーティーをクビだ。意味不明な光る板を出すだけの役立たずは、もう『赤銅の牙』にはいらない」


冷酷なリーダーの言葉が、まだ耳に残っている。


現在、俺——アルトは、人類の生存圏の限界と呼ばれる地下迷宮の第十層で、空腹のあまりへたり込んでいた。

この世界では、成人の儀式で誰もが【天賦のスキル】を授かる。

剣聖、大魔導士、あるいは治癒術師。

だが、俺が授かったのは【ネット通販】という、誰も聞いたことがないハズレ枠のスキルだった。


頭の中で念じると、俺の目の前にだけ奇妙な光る板(ウィンドウ)が現れる。

そこには見たこともない古代文字がびっしりと並び、上部には血のように赤い文字で『期間限定!ポイント最大43倍!』と点滅している。

文字は読めないが、その禍々しい点滅からして、何かの呪いの儀式であることは間違いなかった。


「腹が減って……死にそうだ……」


俺は震える手で、さっき下級スライムから必死で剥ぎ取った濁った魔石を取り出し、目の前の光る板に近づけた。


『ピロンッ! 魔石を吸収しました。150ptチャージされました』


感情のない謎の言語が頭に響き、画面の右上の数字が「150」に変わる。

俺は一番安い「148pt」の、謎の白い筒の絵をタップした。

絵には、赤いエビのようなものや、黄色い魔物の卵のようなものが描かれている。


『ピロンッ! 購入完了。お届け先:迷宮第十層・猛毒の沼地付近。暗証番号:1234。異次元ロッカーよりお受け取りください』


「えっ? 直接出てくるんじゃないのか!?」


俺は悲鳴を上げそうになるのを堪えながら、壁伝いに沼地の方へ向かった。

そこには、迷宮にはありえない巨大な鉄の箱が鎮座していた。俺は光るボタンに「1234」と打ち込み、中から白い筒を取り出す。


火打石で湯を沸かし、絵の通りに湯を注いで待つこと数分。

蓋を開けると——


「……っ!!」


とんでもなく暴力的な香りが、ジメジメした迷宮に広がった。

得体の知れない強烈な旨味の匂い。一口食べようと、木の枝で作った箸を伸ばした瞬間。


カラン……。


背後の暗闇から、金属が石にぶつかる音がした。


振り返ると、血まみれの銀髪の少女が、ボロボロの黒剣を杖代わりにして立っていた。

魔王軍第七軍団長、『深紅の魔女』エレノア。

ギルドの指名手配書で何度も見た、高位魔族の圧倒的な殺気が俺を包み込む。


終わった。そう直感した。


だが、彼女の赤い瞳は俺ではなく、手元の白い筒に釘付けになっていた。


「人間……お前が持っているそれは……【深淵の海霊薬】か……? なぜこれほどまでに、私の魔力回路を刺激する香りが……」


「あ、あの……一口、食べますか?」


俺が恐る恐る差し出すと、彼女は杖代わりにしていた黒剣を地面にガチャンと放り投げ、ひったくるように筒を受け取った。

そして、熱さも気にせず、ズズッ!と音を立てて麺とスープを吸い込む。


「っ……!?」


彼女は目を見開き、信じられないものを見るような顔をした。


「この圧倒的な旨味! 謎の弾力! それにこの不思議な肉塊(※謎肉)は……! 干からびた私の魔力が、爆発的に回復していく……!」


(いや、どう見てもただの安っぽい保存食なんだけど!?)


俺は心の中で突っ込んだが、口には出せなかった。

彼女はスープの一滴まで飲み干すと、大きく息を吐き、俺を見た。殺意は消え、代わりに奇妙な熱狂が宿っていた。


「人間、名前は?」

「ア、アルトです……」


「いいだろう、アルト。今日から私が貴様の護衛になってやる。その代わり——」


彼女は空の容器を指差した。


「この【海霊の恩恵】を、毎日三杯よこせ。一杯でも欠けたら、その首を刎ねる」


こうして、俺の迷宮サバイバル(?)生活が幕を開けたのだった。

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