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山崎の合戦 ~ワンマン社長が消えた瞬間に、営業部長が爆速でM&A(物理)を仕掛けてきた件~

作者: 出無精兼為
掲載日:2026/03/15

「……よっしゃあ! 天下空いたぁぁぁ!!」


 備中高松城、水攻めの現場。

 信長が本能寺でド派手に散った――という名の、光秀との決裂ストライキを起こした――報せを受けた瞬間、羽柴秀吉はガッツポーズを決めた。


「秀吉様、一応、主君が亡くなったんですから、もう少し『悲劇のヒロイン』的な顔をしてください。SNS(伝令)で拡散されたら炎上しますよ」


 隣で呆れたように言うのは、軍師の黒田官兵衛だ。彼は手元のタブレット(瓦版)を操作しながら、既に「今後のロードマップ」を作成していた。


「わかってるって! えー、あー、悲しいなー、信長様ロスだわー。……よし、悲しんだ。一分で悲しみ終えた。官兵衛、全軍に告げろ。今から京都まで『タイムアタック』を開始する!」


 これが歴史に名高い、中国大返し――もとい、秀吉による「全速力での本社乗っ取りツアー」の始まりである。



【ミッション:10日以内に京都へ帰還せよ】



 普通なら二週間はかかる距離を、秀吉軍は数日で駆け抜けた。

 その様子はもはや軍隊というよりも、「深夜の牛丼チェーン」のような超効率化が図られていた。


「おい、炊き出しはどうなってる!?」

「街道沿いの農家に全外注アウトソーシング済みです! 兵士は走りながらおにぎりをキャッチ、そのまま咀嚼もぐもぐタイムしながら進軍しています!」

「よし! 装備が重い奴は捨てろ! 軽装こそ正義だ! 現代(戦国)はスピード感が命なんだよ!」


 秀吉軍、時速10キロ以上。

 あまりの速さに、街道沿いの住民は「え、今の何? 黄色い彗星?」と目を丸くしたという。



【一方その頃、京都・山崎】



「……まだ三日目。私は、まだ、寝ているはずなんだ……」


 明智光秀は山崎の地で震えていた。

 彼は本能寺の変の後、信長から引き継いだ膨大な「事後処理タスク」の山に埋もれていた。


「光秀様、大変です! 秀吉軍がもうそこまで来ています!」

「……は? 秀吉? あいつ、中国地方で毛利軍と接待ゴルフ(包囲戦)してたはずだろ?」

「それが、あいつら『走る以外の機能を停止』してこちらに向かってます。予定より一週間早いです! いわゆる『爆速納品』です!」


 光秀は白目を剥いた。


「ブラック企業……。信長様が消えても、この業界はブラック企業のままなのか……」


 光秀は「三日天下」という、あまりにも短すぎる有給休暇を終え、重い腰を上げた。



【決戦:山崎の合戦(天王山をめぐる椅子取りゲーム)】



 天正十年、六月十三日。

 山崎の地で両軍が激突した。


 秀吉は疲労困憊で「もう帰らせて」というオーラを出している光秀軍に対し、拡声器(法螺貝)を持って叫んだ。


「さあ! 弔い合戦の始まりだ! 勝った方には、信長様の遺産ストックオプションを全額支給! さらに、福利厚生として週休二日制を導入する(嘘)!」

「うおおおおお! 休みだあああ!」


 秀吉軍の兵士たちが、嘘か真か分からない「ホワイト企業化」の夢を見て突撃する。対する光秀。


「休み……休みだと? 嘘をつけ! 秀吉の下についたら、今度は『天下統一』とかいう超大型プロジェクトが始まって、もっと残業が増えるに決まってるだろうがぁぁぁ!!」


 悲痛な叫びと共に、光秀軍も応戦する。

 しかし、光秀の部下たちは本能寺の変での「徹夜仕事」の疲れがピークに達していた。


「……光秀様、もう足軽たちのHPがゼロです。みんな目が死んでます。ログインボーナス(給料)も出てませんし……」

「くっ……。この山崎を、私の『退職届(最期の地)』にはさせんぞ……!」



【エピローグ:逃亡】



 結局、多勢に無勢。秀吉の圧倒的な「プレゼン能力(動員数)」の前に、光秀軍は崩壊した。

 光秀は、竹藪を抜けながら呟いた。


「……結局、私は転職に失敗しただけだったのか。次は、もっと風通しの良い職場(あの世)に行きたいものだ……」


 その頃、戦場を制圧した秀吉は官兵衛に勝利宣言をしていた。


「見たか官兵衛! これで今日から俺がCEOだ! 社名は『豊臣グループ』に変更な!」

「おめでとうございます、秀吉様。さっそくですが、次の『四国平定プロジェクト』と『九州M&A』の資料です。あと、信長様の葬儀という名の、業界最大手の宣伝イベントの段取りも組んでおきました」


 秀吉は渡された分厚い巻物を見て、顔を引きつらせた。


「……ねえ、これ、俺も休めなくない?」

「何を言ってるんですか。天下を取るということは、365日24時間、カスタマーサポート(領民対応)をするということですよ。さあ、まずは記者会見(清洲会議)へ!」


「猿」と呼ばれた男が、本当の意味で「社畜の王」へと昇り詰めた瞬間であった。


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