四十六文字の呪い 〜パングラム殺人事件〜
パングラムは、日本語のひらがな「あ」から「ん」までの46文字を、1回ずつだけ使用して文章を作るものです。
その日、街を震え上がらせる凶悪事件が起こった。
被害者のものと思われる血に染まったワイシャツが、
壁際に丸まって捨てられている。
壁には血で書かれたパングラムが無造作に残され、
犯人がシャツに血を染み込ませて書いたのだろう。
そこに、メッセージがあった。
「呪い」
あそぼ 藁人形
血で塗りたくる壁文字文
胸を刺す 言葉
消せ 呪え 殺れ
筆名 名由 魔生
殺人犯は被害者を藁人形のように包み、
胸に凶器のナイフが突き刺されたまま遺体が転がっていた。
大胆にも「名由魔生」と名乗り、警察を挑発している。
このため、警察は総動員で犯人の行方を追う事となった。
しかし、それをあざ笑うかのように、
またしても犯人からパングラムがラジオ番組に投稿された。
「今回の投稿は、ペンネーム、名由魔生さんです。
『自作の歌を作ったのでこのコーナーで流れると嬉しいです』とのことです」
ラジオから、ディスクジョッキーの軽快な声が流れてくる。
「コメントも一緒に同封されています。
警察の皆さんへと書かれていますね。ちょっと読んでみましょう。
『平仮名四十六を全て用いた説文ね。
お前には無理。底抜けのアホめ。悟れやわ。kill』
パングラムの紹介? かなり挑発的な文面でしたね……」
少しの間、ディスクジョッキーの言葉が止まり、沈黙が続く。
「ちょっと頭のオカシイ人のようですが、
真夏のホラーとして皆さんが少しでも涼しさを感じるように取り上げてみました。
では、名由魔生さんで『呪い歌』……」
「呪い歌」
呪ってやる ♪
刺すぞ ♪
怨み憎む罠へ ♪
お前だけは屠り死ね ♪
遺言をメモせよ ♪
赤き血濡れ人 ♪
この事件はパングラム殺人事件として命名されたが、
この犯人を捕まえることが出来ず、
未解決事件となり迷宮入りしてしまった。
しかし……
翌年に
呪い血塗り文が現れて
「ヘボは無視 姫共を刺すぞタコ
うるせえ 気づけや!」
名由 魔生
と、再び投稿が届いた。
なお、これも四十六文字であることに、気づきましたか?
「四十六文字の呪い 〜パングラム殺人事件〜」の中で使われた、パングラムの部分を抜き出しました。
『あそぼ 藁人形
血で塗りたくる壁文字文
胸を刺す言葉
消せ呪え殺れ
筆名 名由 魔生』
あそぼ わらにんぎょう
ちでぬりたくるかべもじふみ
むねをさすことば
けせ のろえ やれ
ひつめい なゆ まお
『平仮名四十六を全て用いた説文ね。お前には無理。底抜けのアホめ。悟れやわ。kill』
ひらがな よんじゅうろく を すへてもちいた せつふみね おまえにはむり そこぬけのあほめ さとれや きる
『呪ってやる♪
刺すぞ♪
怨み憎む罠へ♪
お前だけは屠り死ね♪
遺言をメモせよ♪
赤き血濡れ人♪』
のろってやる
さすぞ
うらみにくむわなへ
おまえだけはほふりしね
ゆいごんをめもせよ
あかきちぬれびと
翌年に
呪い血塗り文が現れて
「ヘボは無視 姫共を刺すぞタコ
うるせえ 気づけや!」
名由 魔生
よくねんに
のろいちぬりふみかあらわれて
へほはむし ひめともを さすそ たこ
うるせえ きつけや
なゆ まお
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最後まで読んでいただき、ありがとうございます。




