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追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる ~「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら、世界中がパニックになっていますが?~  作者: あとりえむ
【番外編】追放されたS級清掃員、お花見の場所取りで伝説になる 〜「今年の花粉はタチが悪い」と言って厄災の竜を掃除機で吸い込んでいたら、幻の竜にパパと呼ばれていますが?〜

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第5話:幻のオオムラサキ竜と新米パパ

澄み切った青空の下、満開の世界樹から舞い散る桜吹雪は絶景の一言だった。


「社長! この唐揚げ最高っすね! ビールが進む進む!」


「飲みすぎるなよ剣崎。お前、帰りの運転任せるんだからな」


特大ブルーシートの上には、豪華なお弁当と飲み物が所狭しと並べられている。

剣崎が上機嫌で唐揚げを頬張り、ソウジが呆れながらも缶の烏龍茶を傾ける。


「師匠! 私が握ったおにぎり、ぜひ召し上がってくださいませ!」


「ソウジ様、私が天界の果実で作ったフルーツポンチも絶品ですよ!」


「ちょっと二人ともズルいです! マスター、私と一緒に桜餅食べましょう!」


セシリア、ミカエル、コアちゃんの三人が、ソウジの周りでキャッキャと騒ぎながら食べ物を勧めてくる。

上空では配信ドローンがその平和な宴の様子を映し出し、世界中の視聴者から『最高の花見配信』『清掃業者のおかげで世界樹が復活した』『明日は全員お花見確定w』と絶賛のコメントと投げ銭が滝のように流れていた。


完璧な剪定と清掃を終えた後の、心地よい疲労感と美味しいご飯。

ソウジが満足げに息をついた、その時だった。


ピカ──ッ……!


世界樹の太い幹の隙間、ソウジが安置しておいたあのサナギが、突如として眩い光を放ち始めた。


「おっ、羽化が始まったみたいだな」


ソウジが箸を止め、全員の視線が光の中心へと集まる。

パリパリンッ、という微かな音と共にサナギの殻が割れ、中から小さな影が這い出してきた。


「おお……!」


ミカエルが目を見開き、感嘆の声を漏らす。

現れたのは、子犬ほどの大きさの小さなドラゴンだった。しかしその姿は凶悪なモンスターとは程遠く、背中には美しい紫色の蝶のような大きな羽が生え、鱗は宝石のようにキラキラと輝いている。


「あれは……天界の書物に記されている幻の善竜、オオムラサキ竜! 私も存在は知っていますが見たことがありません!」


ミカエルが興奮気味に解説する。


「幻の善竜か。益虫どころか、とんでもねぇレアキャラだったってわけだ」


ソウジが感心して頷いた瞬間、羽を乾かし終えたオオムラサキ竜が、ふわりと宙に舞い上がった。

そして、迷うことなく一直線にソウジの元へと飛んでくると、その頭の上にポスンと着地したのだ。


「きゅるるっ!」


オオムラサキ竜は嬉しそうに喉を鳴らしながら、ソウジの首元に巻かれたタオルや、グレーの作業着の肩口にすりすりと顔を擦り付けてくる。

てんぐ巣病の病巣から自分を救い出し、暖かい特等席に置いてくれた恩人を、しっかりと理解しているようだった。


配信ドローンが映し出す画面の向こうでは、この奇跡の瞬間に凄まじい勢いでコメントが流れていた。


『うおおおお! 幻の竜が羽化した!?』

『世界樹の病気を治したら、国宝級のモンスターがドロップした件』

『なんでただの清掃業者に懐いてるんだよwww』

『害虫駆除(S級ミッション)の報酬がデカすぎる』

『オオムラサキ竜「パパ、おうち綺麗にしてくれてありがとう」』

『ソウジ社長、ついに伝説の竜を手懐ける』


「おいおい、なんだこいつ。やたらと懐いてきやがるぞ」


ソウジが戸惑いながら頭の上の竜をトングの柄で軽く突くが、竜は全く逃げる気配を見せず、むしろ気持ちよさそうに目を細めている。


「あはは! マスターのこと、パパだと思ってるんですかねー」


コアちゃんが口元を押さえて笑う。

剣崎も「社長に隠し子が!」と囃し立て、セシリアとミカエルが「私が母親になりますわ!」となぜか対抗心を燃やし始めた。


「えー、まいったな。こいつ何食うんだ?」


ソウジは頭を掻きながら、困ったように笑い声を上げた。

春の暖かな日差しと、美しく舞い散る桜吹雪。そして頭の上に乗った小さな新しい家族。


世界を救う清掃業者たちの、騒がしくも心温まるお花見の宴は、こうして穏やかに更けていくのだった。


【番外編 完】



−あとがき−


読者の皆様。

いつもお世話になっております。株式会社クリーン・ファンタジー代表の灰坂ソウジです。


今回は社内行事のお花見……のつもりが、急遽「代々木・桜花ダンジョン」の造園および害虫駆除の現場対応となってしまいました。


てんぐ巣病のような厄介なカビや、特濃の花粉を撒き散らすデカい蛾など、手入れを放置された公園はトラブルの温床です。桜も生き物ですから、こまめな剪定と土壌の入れ替え、そして適切な害虫駆除が不可欠ですね。


ルールと用法を守ってメンテすれば、どんな木でもちゃんと花を咲かせてくれるものです。


皆様のご近所の桜は、そろそろ綺麗に咲いていますでしょうか。

もし、お花見の場所取りでお困りの際や、手に負えない巨大な害虫が出た時は、いつでも弊社にご相談ください。

特大ブルーシートと業務用サイクロン掃除機を持参して、迅速に対応いたします。


追伸:

現在、私の頭の上に乗ったまま降りてこないこの紫色の羽の生えたトカゲ(益虫?)ですが、正しい飼い方やおすすめのペットフードをご存知の業者様がいらっしゃいましたら、ぜひ弊社までご一報ください。


それでは皆様、また次の現場でお会いしましょう!

皆様の一日が、今日もピカピカでありますように。


株式会社クリーン・ファンタジー

代表取締役社長 灰坂ソウジ

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あなたの一日がピカピカでありますように


あとりえむ 作品紹介

地球の『受理』を以て、僕の存在を証明する。 やっぱりせかいはまあるいほうがいい 監査の魔王 至高のミミちゃんを見守る会 君が遺した種子は、森には還らなかった。

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