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追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる ~「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら、世界中がパニックになっていますが?~  作者: あとりえむ
最終章:世界は『神様のゴミ屋敷』(こちらだけ15話構成です)

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第48話:漂白剤の原液はセカイを傷める

 神話級モンスターであるはずのブリザード・ドラゴンが、自らの咆哮の振動に耐えきれず、サラサラと白い粉になって自壊していく。

 その光景は、ダンジョンというより、崩れゆく砂の城のようだった。


「くそっ! 漂白剤を原液で放置しやがって! 少しでも早く中和しねぇと、ダンジョンの床まで完全に溶け落ちるぞ!」


 灰坂ソウジは、激怒と共にバンから巨大なタンクと散布機を引きずり出した。


「アルカリには酸だ! 中和剤を撒いて、これ以上生地が傷むのを食い止める!」


 ソウジが手にしたのは、特製の【超強力・酸性中和クリーナー】だ。

 彼は迷わずノズルを構え、白く脱色し、今にも崩れそうな氷の地面に向かって広範囲に散布を開始した。


 ブシュゥゥゥゥゥゥッ!!


 酸性の中和剤が、真っ白な大地に降り注ぐ。

 通常、強アルカリ性の漂白剤が残っている場所に酸をかければ、中和反応が起きて素材の劣化は止まるはずだった。


 だが。


「……なっ!?」


 ソウジの目が、ゴーグルの奥で驚愕に見開かれた。

 中和剤を浴びた地面が、安定を取り戻すどころか、さらに激しい勢いで崩壊を始めたのだ。


 ザザァァァァァァッ……!!


「社長! 地面が! 地面が溶けていきますぅぅぅ!」


 剣崎が悲鳴を上げる。

 ソウジが中和剤を撒いた地点を中心に、真っ白だった氷床がボロボロと粉になって崩れ落ち、その下から「光すら存在しない、真っ暗な虚無の穴」がポッカリと口を開けたのだ。


「馬鹿な……! 中和剤が効かねぇだと!?」


 ソウジは散布を止め、崩れゆく穴の縁に駆け寄った。

 そして、粉になってパラパラと零れ落ちる真っ白な地面の破片を、震える手で直接すくい上げた。


【解析:深刻なテクスチャ欠損】

【状態:オブジェクトの完全消滅】

【警告:システムエラー領域の拡大】


 彼の【真実の魔眼】が示すログは、この空間自体が「無」に帰ろうとしていることを告げていた。

 だが、ソウジの頭の中で、そのバグは、これまで経験したことのない「最悪の清掃事故」として翻訳されていた。


「…………」


 ソウジは、手の中でサラサラと消えていく白い粉を見つめ、これまで一度も見せたことのない「青ざめた顔」を見せた。


「……遅かったか」


 彼がポツリと、重い声で呟いた。


「強い塩素系漂白剤を、原液のまま長時間放置しすぎたんだ。……汚れどころか、『床材の素材』そのものが完全に死んでやがる」


「ゆ、床の素材……? 社長、どういうことですの?」


 セシリアが不安げに尋ねる。


「服に漂白剤の原液をこぼして、何日も放置したらどうなるか想像してみろ。最初は色が抜けるだけだが、最後は布の繊維自体がボロボロになって、触っただけで穴が開く。……ここの床も、それと全く同じ状態まで劣化してるってことだ」


 ソウジは、トングを力なく下ろした。

 どんな汚れも落とし、どんな魔物も「ただのゴミ」として処理してきた無敵のS級清掃員。

 だが、彼には「絶対に直せないもの」があった。

 それは、清掃の限界。「汚れではなく、素材そのものが物理的に破壊・消滅してしまった状態」である。


「酸で中和しても意味がねぇ。もう、中和するべき『土台』自体が存在しねぇんだからな」


 ゴゴゴゴゴ……ッ!!


 ソウジの絶望をよそに、ダンジョン全体の崩壊が加速する。

 天井の氷柱が白い粉となって降り注ぎ、地面には次々と「真っ黒な虚無の穴」が開き始めた。

 空間自体が色抜けし、世界のバグが南極大陸を飲み込もうとしている。


「こうなったらもう……掃除じゃどうにもならねぇ」


 ソウジが珍しく唇を噛み締め、悔しそうに後退る。


「逃げるぞ! 床板ごと抜け落ちるぞ!!」


『うわあああああ!?』

『ソウジが逃げろって言ったぞ!?』

『あの掃除の神様が諦めた!?』

『世界が終わる、マジで終わる』

『バグが広がりすぎてマップが消えてるじゃねえか!!』


 画面の向こうで視聴者がパニックに陥る中、虚無に吸い込まれそうになる剣崎たちが悲鳴を上げる。

 プロの清掃員が敗北を認めた「完全に劣化した事故物件」。

 クリーン・ファンタジー社は、絶体絶命の危機に立たされていた。


(続く)

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あなたの一日がピカピカでありますように


あとりえむ 作品紹介

地球の『受理』を以て、僕の存在を証明する。 やっぱりせかいはまあるいほうがいい 監査の魔王 至高のミミちゃんを見守る会 君が遺した種子は、森には還らなかった。

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