表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる ~「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら、世界中がパニックになっていますが?~  作者: あとりえむ
第8章:東京クリーンアップ・ウォーズ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/65

第40話:トラッシュ・マスター誕生

 『ピーッ! 終了ォォォォッ!!』


 終了のホイッスルが、夕暮れの新宿に響き渡った。

 長きにわたる清掃決戦、『東京クリーンアップ・ウォーズ』が幕を閉じたのだ。


 特設ステージ前には、各クランが集めたゴミ袋が山のように積まれている。

 汗と泥にまみれた探索者たちが、固唾を呑んで審査員(東京都環境局長)の採点を待っていた。


「それでは、計量タイムに移ります! まずは優勝候補、『ブレイブ・ナイツ』!」


 アナウンサーの声と共に、紅蓮のレオが自信満々に前に出た。

 彼の背後には、黒い袋が積み上がっている。


「ふはははは! 見よっ、この量! モンスターを焼き尽くし、回収した『灰』の山だ!」


 ドサッ。

 係員が袋を秤に乗せる。

 しかし、モニターに表示された数字は、予想外に低いものだった。


【重量:50kg / 評価:D(要改善)】


「なっ!? バカな! なぜだ!?」


 レオが絶叫する。

 審査員が眼鏡を光らせ、冷淡に告げた。


「貴様らが持ち込んだのは『灰』と『溶解したプラスチック塊』だ。これはリサイクル不能な産業廃棄物であり、処理コストがかかる。さらに、街中での火炎放射によるCO2排出ペナルティを差し引くと……ほぼゼロ点だ」


「ぐぬぬ……ッ! 掃除とは浄化ではないのかァァァッ!」


 ブレイブ・ナイツ、撃沈。

 会場がどよめく中、次に呼ばれたのは──。


「続きまして、『株式会社クリーン・ファンタジー(分別班)』!」


 人事部長の剣崎と、聖女セシリアが前に出た。

 彼らが運んできたのは、透明な袋に美しく分類された資源の山だ。

 洗われたペットボトル、潰されたアルミ缶、束ねられた古紙。

 そのすべてが、宝石のように整然と輝いている。


「お、おおぉ……!」


 審査員たちが立ち上がり、どよめいた。


「美しい……! これほど完璧な分別ソーティングは見たことがない!」


「ラベルの糊残りゼロ! 瓶の色分けも完璧! これぞ『ザ・リサイクル』だ!」


【重量:300kg / 評価:SSS(芸術的)】


 高得点が叩き出された。

 剣崎がガッツポーズをし、セシリアが涙ぐむ。


「やりましたわ剣崎さん! 私たちの愛が届きましたわ!」


「ああ! これでミミちゃんに会えるぞ!」


 会場の空気は、完全にクリーン・ファンタジーの優勝ムードだ。

 だが、まだ「大将」が残っていた。


「最後は、同チームの『灰坂ソウジ選手』!」


 ざわっ……。

 観客がざわめいた。

 ステージに上がったソウジとコアちゃんの手には、ゴミ袋がなかったからだ。

 コアちゃんが、手のひらサイズの「黒いキューブ」を数個、ちょこんと持っているだけだ。


「あれ? ゴミは?」


「あのサイコロだけか?」


「ハハッ、さすがに諦めたか? 量は稼げなかったみたいだな」


 レオが嘲笑う。

 しかし、ソウジは涼しい顔で係員に顎をしゃくった。


「おい、その秤、頑丈か?」


「は? 業務用ですよ? 象が乗っても壊れま……」


「コアちゃん、乗せてやれ」


「はーい♪」


 コアちゃんがニコリと笑い、黒いキューブを一つ、無造作に秤の上に置いた。

 コトッ。


 その瞬間だった。


 ズドォォォォォォォンッ!!!


 爆発音のような轟音が響いた。

 ステージが激しく揺れ、秤があった場所が陥没した。

 頑丈な業務用計量器が、まるでプレス機にかけられたようにペチャンコにひしゃげ、火花を散らしている。


「な、ななな……ッ!?」


 係員が腰を抜かす。

 観客席が静まり返る。

 地面にめり込んだキューブの周囲には、放射状の亀裂が走っていた。


『!?!?!?』

『え?』

『秤が爆発したwww』

『ブラックホールでも置いたんか??』

『質量がおかしい』

『会場破壊RTA』

『さすが掃除の神、容赦ないwww』


「け、計測不能ォォォ!? なんだこの超質量物質はッ!?」


「ゴミだよ」


 ソウジがさらりと言った。


「裏路地の粗大ゴミ(ゴーレム)と生ゴミ(ミミック)を、ウチの秘書が空間ごと圧縮したんだ。見た目は小さいが、中身は数トンあるぞ」


 さらに、衝撃でキューブの一部が欠け、中からミミックの目玉がギョロッと飛び出した。


 『ギョエェェ……』


「ヒィィィッ!? い、生きてるゥゥゥ!?」


 審査員が悲鳴を上げ、会場はパニックに陥った。

 ソウジはトングで目玉を押し込みながら、「チッ、水切りが甘かったか」と舌打ちする。


 結果は明白だった。


「えー、審議の結果……灰坂選手は『会場設備の破壊』および『危険生物の持ち込み』により、失格とします!!」


「なんでだよ! ちゃんと袋(圧縮空間)に入れただろ!」


 ソウジの抗議も虚しく、レッドカードが突きつけられた。

 しかし、チームとしての成績は──。


「ですが! 剣崎選手とセシリア選手のスコアが圧倒的だったため……」


 ドラムロールが鳴り響く。


「優勝は、株式会社クリーン・ファンタジーです!!」


 わぁぁぁぁぁっ!

 大歓声と共に、紙吹雪が舞った。


「やったァァァァッ!!」


 剣崎とセシリアが抱き合って号泣する。

 そして、ステージの奥から、キラキラした衣装の少女が現れた。

 一日都知事、ミラクル・ミミちゃんだ。


「おめでと〜っ! 新宿を綺麗にしてくれてありがとう!」


 ミミちゃんが剣崎の手を取り、公約通りハグをする。

 その瞬間、人事部長・剣崎の目から、滝のような涙が溢れ出した。


「うっ……ううっ……! 生きててよかった……! 俺の地味なスキルが、やっと報われた……!」


「良かったですね剣崎さん! 尊いですわ!」


 セシリアもペンライトを振って祝福する。

 その光景を、ステージの袖でソウジが腕組みして見ていた。


『剣崎部長おめでとうううう!』

『全俺が泣いた』

『報われてよかったな社畜www』

『分別の神 (トラッシュ・マスター)』

『ミミちゃんとハグとか裏山』

『社長は失格だけど部下は優勝www』

『これぞクリーン・ファンタジー』


「へぇ。あいつ、あんな顔もできたんだな」


 珍しく部下の活躍を認め、ニヤリと笑う。

 その横で、ミカエルが請求書を持って立っていた。


「ソウジ様。優勝賞金の目録ですが……さきほど破壊した秤の弁償代と相殺で、『プラマイゼロ』だそうです」


「……ま、そんなもんだろ」


 ソウジは肩をすくめ、愛用のトングを腰にしまった。

 金も名誉もいらない。

 目の前の新宿の街が、少しだけ綺麗になった。

 清掃員にとっては、それだけで十分な報酬だった。


 こうして、真夏のゴミ拾い決戦は幕を閉じた。

 世界一「分別」のできる男が、伝説になった日として。


【第8部 完】

−あとがき−


読者のみなさん、こんにちは。

株式会社クリーン・ファンタジー代表の灰坂ソウジです。


当社の業務日報……もとい、物語を最後までご覧いただき、誠にありがとうございました。


今回の現場は、東京都主催のゴミ拾い大会でした。

ライバルの『ブレイブ・ナイツ』とかいう連中は、ゴミ(モンスター)をその場で焼却処分していましたが、あれは清掃業において最大のタブーです。


プラスチックやゴム製品(スライム等)を低温で燃やすと、有害物質や悪臭が発生します。「汚物は消毒」などと格好をつけていましたが、ただの「野焼き(廃棄物処理法違反)」ですので、真似しないように。


さて、今回も人事部長の剣崎が頑張ってくれました。

彼は当初、ただの「元・エリート探索者」でしたが、宇宙でのデブリ回収を経て、今や「分別の鬼」へと成長しました。


セシリアの聖水を使った洗浄もいい仕事でしたね。

ペットボトルのラベルを剥がし、中をすすぎ、キャップとリングを外す。

言葉にすれば簡単ですが、あの速度と正確さは、一朝一夕で身につくものではありません。


動機こそ「アイドルと握手したい」という不純なものでしたが……まあ、動機はどうあれ、結果として美しい仕事をしてくれたのなら、上司として文句はありません。


彼が表彰台で泣いているのを見て、私も少しだけ……あくまで少しだけですが、「教育した甲斐があったな」と思いました。ボーナス査定を「B」から「B+」くらいには上げてやってもいいかもしれません。


一方、私の秘書 (コアちゃん)ですが、圧縮プレス自体は効率的で良かったものの、やはり「水切り」が甘かったですね。


生ゴミ(ミミック)は水分を多く含みます。そのまま圧縮すると重量が増し、今回のように計量器を破壊する原因になります。次回からは、しっかりと天日干ししてからプレスするよう指導しておきます。


最後に、読者の皆様へワンポイント・アドバイスです。


【資源ゴミは洗ってから出そう】


コンビニ弁当の容器や、缶詰の空き缶。汚れが残っていると、リサイクル工程でカビや悪臭の原因となり、最悪の場合「燃えるゴミ」として処理されてしまいます。

さっと水ですすぐ。その一手間が、リサイクル率を上げ、巡り巡って地球とダンジョンを救うのです。


剣崎部長の優勝は、その「一手間の積み重ね」が評価された結果と言えるでしょう。


それでは、また次の現場でお会いしましょう。

皆様のゴミ出しが、分別された美しいものでありますように。


株式会社クリーン・ファンタジー

代表取締役社長 灰坂ソウジ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


あなたの一日がピカピカでありますように


あとりえむ 作品紹介

地球の『受理』を以て、僕の存在を証明する。 やっぱりせかいはまあるいほうがいい 監査の魔王 至高のミミちゃんを見守る会 君が遺した種子は、森には還らなかった。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ