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追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる ~「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら、世界中がパニックになっていますが?~  作者: あとりえむ
第5章:クリーン・ファンタジーの夏休み

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第21話:太陽神からの『お礼状』は熱すぎる

 太陽での過酷な「黒点落とし」業務から、数日が経過した頃。

 日本列島は、観測史上類を見ない記録的な猛暑に見舞われていた。


「あ、あ、暑い……。溶ける……」


 株式会社クリーン・ファンタジーのオフィスでは、人事部長の剣崎がデスクに突っ伏して溶解していた。

 オフィスのエアコンは設定温度18度でフル稼働しているはずだが、室温はサウナのように上昇している。


「ふぅ……。こりゃ酷いな。パソコンのファンが唸りっぱなしだ」


 社長の灰坂ソウジも、首に巻いたタオルで汗を拭いながら、不機嫌そうに仰いだ。

 この異常気象の原因は、地球温暖化ではない。

 オフィスの中心、社長デスクの上に鎮座する「ある物」が熱源だった。


「これ、いつまで置いておくんですか? 社長」


 剣崎が恨めしげに指差した先には、黄金に輝く石版があった。

 表面温度は推定80度。

 触れば火傷するレベルの熱気を放ち続けている。


 それは、先日の依頼主である『太陽神』から届いた、直筆の感謝状ファンレターだった。


『拝啓、掃除の神よ!

おかげさまで肌の調子がすこぶる良く、やる気(火力)がみなぎっております!

今の私なら、あと50億年は輝けます! メラメラ!』


 ご丁寧に、文末には燃え盛る炎の絵文字まで刻まれている。

 神の感謝状は、物理的にも熱かったのだ。


「仕方ないだろ。神様からの頂き物を粗末にしたらバチが当たる」


「でも、このままだと我々が熱中症で全滅しますよ! せめて冷蔵庫に入れるとか!」


「冷蔵庫が壊れるわ」


 ソウジは溜め息をつき、熱気を放つ石版を耐熱シートで包んだ。

 それでも室温は下がらない。

 これでは業務効率が落ちる一方だ。


「……よし。決めた」


 ソウジはバンとデスクを叩き、立ち上がった。


「避暑だ。ここから逃げるぞ」


「えっ?」


「社員旅行だ。福利厚生の一環として、涼しい場所へ『慰安旅行』に行く」


 その言葉に、ぐったりしていた社員たちが弾かれたように顔を上げた。


「りょ、旅行ですって!?」


「わぁっ! 素敵です社長! 初めての社員旅行ですね!」


 聖女セシリアと秘書のコアちゃんが、手を取り合って歓声を上げる。

 剣崎も、信じられないものを見る目でソウジを見上げた。


「や、休み……? 本当に、休んでいいんですか……?」


 元ブラック企業レイディアント出身であり、現職でも宇宙ゴミの分別という激務をこなしてきた彼にとって、「有給休暇」という言葉は伝説上の概念に等しかった。


「当たり前だ。体調管理も仕事のうちだぞ。……行き先はもう決めてある」


 ソウジはスマホを取り出し、一件の宿を検索して画面を見せた。

 海沿いの断崖に建つ、古びた木造の温泉旅館。


 【老舗旅館・海神館わだつみかん


「以前、『秘湯の掃除』を依頼されたことがある宿だ。建物は古いが、飯は美味いし、海風が涼しい。あそこの女将さんには世話になったからな」


 画面には、青い海と白い砂浜、そして豪華な舟盛りの写真が載っている。


「うおおお! 海だ! 温泉だ! 舟盛りだぁぁぁ!」


「水着! 新しい水着を買わなきゃですわ!」


「社長、すぐに予約しますね! 社用車の手配も完璧です!」


 オフィスが一気にお祭り騒ぎになる。

 剣崎は感涙にむせびながら、天を仰いだ。


「やっと……やっと休めるんですね……! ゴミも、モンスターも、神様もいない場所で……ゆっくり寝られるんですね……!」


 その目には希望の光が宿っていた。

 だが、彼は忘れていた。

 灰坂ソウジが行く場所に、「ただの平和な観光地」など存在しないということを。

 そして、ソウジの「職業病」が、休暇中であっても発動してしまうことを。


「よし、出発は明日の早朝だ! 今日は定時で上がって準備しろ!」


「はいっ!!」


 こうして、世界最強の清掃会社『クリーン・ファンタジー』の一行は、灼熱の東京を脱出し、一路海へと向かうことになった。


 トランクに詰め込まれたのは、水着と着替え。

 そして、なぜかソウジが「念のため」と放り込んだ、数本の『業務用洗剤』。


 S級清掃員の、波乱万丈な夏休みが幕を開ける。


(続く)

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あなたの一日がピカピカでありますように


あとりえむ 作品紹介

地球の『受理』を以て、僕の存在を証明する。 やっぱりせかいはまあるいほうがいい 監査の魔王 至高のミミちゃんを見守る会 君が遺した種子は、森には還らなかった。

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