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追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる ~「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら、世界中がパニックになっていますが?~  作者: あとりえむ
第4章:太陽の焦げ落とし

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第20話:大掃除の基本は『断捨離』

 太陽の表面に、巨大な「差押シール」が貼られた絶望的な状況。

 だが、灰坂ソウジの目は死んでいなかった。

 むしろ、頑固な汚れを前にした職人の、静かな殺気を放っている。


「いいか、よく見とけ。シール剥がしの極意を教えてやる」


 ソウジは背負った『ケルベロス・ヒャッハー』の出力を最大に上げた。

 太陽の核融合エネルギーが直接吸い上げられ、ボイラーが赤熱し、限界を超えて唸りを上げる。


「貴様、何をする気だ? 神の封印に物理攻撃など――」

「物理じゃねぇよ。『熱処理』だ」


 ソウジは3本のノズルを構え、大天使長とシールに向けて狙いを定めた。


「シールってのはな……糊が熱で溶ける温度(融点)と、紙が焦げる温度の、ギリギリの境界線を攻めるんだよ!!」


 奥義【トリプル・ソーラー・ジェット】!!!


 ヒャッハァァァァァァァーーーッ!!!


 三つのノズルから、太陽フレアをも凌ぐ超々高温のスチームが噴射された。

 それは螺旋状に絡み合い、極太の熱線となって「シール跡」を直撃した。


 ジュワァァァァァァァッ!!


「ぬおっ!? 熱ッ!? 熱ゥゥゥい!!」


 巻き添えを食らった大天使長が悲鳴を上げた。


「なんだこれは!? ただの熱湯ではない!? 蒸気!? 蒸し焼きにする気かァァァ!」


「動くな! 今、糊が浮いてきてるんだ!」


 ソウジは容赦なくスチームを浴びせ続ける。

 すると――奇跡が起きた。

 ベッタリと張り付いていた「白い紙と糊の層」が、熱と水分の力でふやけ、ペロリと捲れ上がったのだ。


「よし、今だ!」


 ソウジはスクレイパーを一閃させた。

 気持ちいいほど綺麗に、シール跡が剥がれ落ちる。


 だが、剥がれたのはシールだけではなかった。


「あ、あ、あ……!?」


 大天使長の体からも、何かがボロボロと剥がれ落ちていく。

 身にまとっていた「豪華な鎧(権威)」。

 背負っていた「過去の栄光(トロフィーや賞状)」。

 そして、心にこびりついていた「無駄に高いプライド(虚栄心)」。


 それらがスチームによってふやけ、垢のようにポロポロと剥離されていく。


「いやぁぁぁ! 私の『地位』が! 『名誉』が! 『勤続5億年の実績』がァァァ!」


「うっせぇな! いつまでも過去にしがみついてんじゃねぇ!」


 ソウジは叫んだ。


「一年使わなかった物は、一生使わねぇんだよ! それが掃除の鉄則だ!」


 バシュゥゥゥゥン!!


 最後のひと吹きで、大天使長はツルツルの真っ白なローブ姿(新人の格好)になり、その場にへたり込んだ。

 憑き物が落ちたその顔は、まるで生まれたての赤子のように純粋だった。


「……あ。私、なんであんなに怒っていたんだろう。……ただ、みんなと仲良くしたかっただけなのに」


 最強の監査官は、物理的にも精神的にも「リセット」されたのだ。


「ふぅ。頑固な汚れだったな」


 ソウジは汗を拭い、足元に散らばったゴミの山を見下ろした。

 剥がれ落ちた「運命の書」「古い規約」「差押シール」「天使のプライド」。

 それらは宇宙空間を漂う、ただの燃えるゴミだ。


「さて、と。こいつらの処分だが……」


「社長! お任せください!」


 ここで、剣崎がビシッと手を挙げた。

 彼はどこからともなく、巨大な事務機器を召喚していた。


 業務用『クロノス・シュレッダー(機密保持対応)』だ。


「これらは全て『個人情報』および『機密文書』に該当します。情報漏洩を防ぐため、物理的に裁断(破棄)するのがコンプライアンスです!」


「さすが人事部長。話が早いな」


 二人は顔を見合わせ、ニヤリと笑った。


「それじゃあ、いくぞ!」


「はい!」


 ガガガガガガガガガッ!!


 小気味よい音が響き渡る。

 「人類滅亡の運命」も、「理不尽な校則」も、「神々の栄光」も。

 すべてがシュレッダーに吸い込まれ、細切れの紙屑(リサイクル資源)になっていく。


『シュレッダーwww』

『運命が紙切れにw』

『見てて気持ちいい』

『断捨離すぎる』

『神 対 事務用品』


 全てのゴミが裁断され、キラキラした紙吹雪となって宇宙に消えた時。

 そこには、一点の曇りもなく輝く太陽と、スッキリした顔のソウジたちが残っていた。


「終わったな」


 ソウジはヘルメットを脱ぎ(※結界内なので空気はある)、大きく息を吐いた。

 心地よい疲労感が全身を包む。


「あー、暑かった。……コアちゃん、例のやつ頼む」


「了解です、社長!」


 コアちゃんが差し出したのは、キンキンに冷えた「ソーダ味のアイスキャンディー」。


 箱買いしておいたやつだ。


「みんなも食え。経費で落ちるからな」


「いただきます!」


「労働の後の糖分……染みますねぇ」


「わたくし、当たりが出ましたわ!」


 灼熱の太陽の上で、4人は並んでアイスをかじった。

 ガリ、ガリ、ガリ。

 爽やかな音が、静寂を取り戻した宇宙に響く。


 大天使長(新人)も、恐る恐る近づいてきた。

 ソウジは無言で、最後の一本を投げてやった。


「……食ったら帰って、また一から頑張れよ。あと、二度とシールは直貼りすんな」


「……はい。ありがとうございます……!」


 天使は涙を流しながらアイスを握りしめ、深く頭を下げて天界へと帰っていった。


 こうして、太陽と天界を巻き込んだ「大掃除」は幕を閉じた。

 世界は救われ、太陽は輝き、ソウジたちの評価(と株価)はまたしてもストップ高となった。


 だが、彼らにとっては、これも日常の一コマ。

 汚れがある限り、クリーン・ファンタジー社の業務は終わらない。


「よし、撤収! 帰って報告書書くぞ!」


「えー、まだ仕事ですかぁ?」


「当たり前だ。……あ、俺のアイス、ハズレだったわ」


 笑い声と共に、ロケットが地球へと帰還していく。

 その背中を、ピカピカになった太陽が、優しく照らし続けていた。


【第4部 完】

−あとがき−


 お疲れ様です。

 株式会社クリーン・ファンタジー代表の灰坂ソウジです。


 当社の業務日報に最後までお目通しいただき、誠にありがとうございました。


 今回の現場(太陽)は、予想以上に過酷な環境でした。

 表面温度6000度の中でのスクレイパー作業も骨が折れましたが、何より閉口したのは、やはり「シール跡」です。


 熱源に紙シールを直貼りするなど、清掃業者への嫌がらせとしか思えません。


 皆様も、値札やラベルを剥がす際は、必ず専用の剥がし液を使うか、ドライヤーで温めてからゆっくり剥がすよう心がけてください。無理に爪でカリカリするのは厳禁です。


 さて、トラブルシューティング(天界との和解および物理的説得)も完了し、太陽も新品同様の輝きを取り戻しました。


 おかげさまで当社の知名度もさらに向上し、剣崎人事部長のもとには、またしても履歴書の山が届いております。


 中には、先日リセット(物理)したばかりの元・天使の方々からの「一から掃除を学びたい」という再就職希望も混ざっているとか。


 これだけ所帯が大きくなると、教育体制の強化も急務です。

 連日の激務で社員も疲弊していますし(特に人事部長が過労気味です)、ここらで一つ、「新入社員研修」を兼ねた「慰安旅行」でも企画しようかと考えています。


 行き先はまだ検討中ですが……まあ、どこへ行くにしても、我々のやることは変わりません。


 温泉に行けば湯垢を削り、リゾートに行けばビーチのゴミを拾うことになるでしょう。職業病ですね。


 それでは、とりあえず溜まった有給を消化しつつ、アイスでも食べてゆっくりします。


 本日はご閲覧、ありがとうございました。


 皆様の明日が、こびりつきのないツルツルの毎日でありますように。


 株式会社クリーン・ファンタジー

 代表取締役社長 灰坂ソウジ

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あなたの一日がピカピカでありますように


あとりえむ 作品紹介

地球の『受理』を以て、僕の存在を証明する。 やっぱりせかいはまあるいほうがいい 監査の魔王 至高のミミちゃんを見守る会 君が遺した種子は、森には還らなかった。

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