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追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる ~「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら、世界中がパニックになっていますが?~  作者: あとりえむ
第4章:太陽の焦げ落とし

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第19話:神の威光は『しつこいシール跡』

 太陽の真上に降臨した、光の巨人。

 天界の支部長こと『大天使長』は、圧倒的な威圧感でソウジたちを見下ろしていた。


「下等な清掃業者よ。貴様らの無礼な振る舞いは、天界への反逆と見なす」


 大天使長の声が、宇宙空間をビリビリと震わせる。


「よって、この太陽は管理不届きにより『没収』とする。これより強制執行を行う!」


 彼が指を鳴らすと、太陽全体が半透明の被膜――『聖なる結界ラッピング』で覆われた。


 さらに、大天使長は懐から、惑星サイズの「赤い紙」を取り出し、太陽のど真ん中に向かって手を伸ばした。


 ペタリ。


 太陽の表面に、巨大なステッカーが貼られた。

 そこには【天界・差押物件】という、無慈悲な文字が書かれている。


 その瞬間。

 真っ先に声を上げたのは、人事部長の剣崎だった。


「ちょっと待ってください! それは『手続き上の瑕疵かし』ですよ!」


 剣崎は猛抗議した。


「差押(仮処分)には裁判所の命令書が必要です! 書面による通告もなしに、いきなり実力行使だなんて! これは『違法な自力救済』に当たります!」


 彼は顔を真っ赤にして叫んだ。

 法治国家のサラリーマンとして、この横暴な行政処分は見過ごせないのだ。


「裁判で訴えますよ!? 天界のコンプライアンスはどうなってるんですか!」


 しかし。

 その隣で、灰坂ソウジはもっと恐ろしい顔で震えていた。


「違う……そうじゃない……」


「えっ? 社長?」


「手続きとかどうでもいいんだよ! 俺が言いたいのは……!」


 ソウジは、ケルベロス・ヒャッハーを放り出し、全力でステッカーの元へ駆け寄った。

 そして、貼られたばかりの「赤紙」を見て、血を吐くような悲鳴を上げた。


「なんで……なんで『ジカ』に貼るんだよォォォォ!!」


 彼の絶叫が通信機越しに響き渡る。

 剣崎がポカンとする中、ソウジは震える指でステッカーを指差した。


「見ろ! この紙質! 表面がツルツルしてない、一番安っぽい紙シールだ!

 しかも、ここ(太陽)は超高温だぞ!? こんなもん直貼りしたら、熱で糊が溶けて、ガッチガチに固着しちまうだろうが!!」


 そう。

 ソウジが激怒しているのは「太陽が奪われること」ではない。

 「剥がしにくいシールを、熱源にベタッと貼られたこと」に対してだ。


「商品に値札を直貼りする店員か、お前は! 常識ねーのか!」


「な、何を言っている……? これは神聖な封印であり――」


「うるせぇ! 今すぐ剥がすぞ! まだ貼ったばかりだ、今なら間に合うかもしれん!」


 ソウジは爪を立て、慎重にシールのカドをカリカリと摘んだ。

 全神経を指先に集中させる。

 ここで勢いよく引っ張れば、紙が千切れて「白い部分」が残る大惨事になる。

 ゆっくりと、均一な力で……。


 ビリッ。


 無情な音が響いた。

 シールの表面だけが剥がれ、糊と白い紙の層が、太陽の表面にベッタリと残ってしまった。


「あ」


 時が止まった。

 ソウジの顔から表情が消え、般若のような形相へと変わっていく。

 それは、新品の食器や本を買ってきて、値札を剥がそうとして失敗した時の、あの絶望と殺意。


「あああああああああ!! やっぱり残ったあああああ!!」


 ソウジは頭を抱えてのたうち回った。


「一番最悪なパターンだ! これ、爪でカリカリしても糊が伸びて汚くなるだけのやつだ! どうすんだよこれ!」


『社長が壊れた!?』

『わかる、あれムカつくよな』

『太陽でやるとかテロだろ』

『大天使長、それはライン越えだわ』


 地球の視聴者たちも、ソウジの怒りに深く共感していた。

 シール跡。それは人類共通の敵なのだ。


「ふん。愚かな。その封印は、神の力以外では絶対に剥がせな――」


「道具袋! コアちゃん、道具袋だ!」


 ソウジは大天使長の言葉を無視し、血走った目で道具袋を漁った。


「『シール剥がし液』……くそっ、切らしてる! オレンジオイル配合のやつ、先週使い切っちまった!」


「しゃ、社長! 落ち着いてください!」


「落ち着いてられるか! こんな汚い跡を残したままじゃ、清掃業者プロの名折れだ!」


 彼はギリギリと歯ぎしりをした後、再び『ケルベロス・ヒャッハー』を背負い直した。

 その目には、狂気的な決意の光が宿っていた。


「……いいだろう。溶剤がないなら、物理でやるしかねぇ」


 彼は3本のノズルを構え、糊の残ったシール跡と、その背後にいる大天使長を睨みつけた。


「シール跡ってのはな……熱で糊を柔らかくして、蒸気で浮かせて剥がすんだよォォォ!!」


 ボッッッ!!

 ソウジの怒りに呼応するように、ケルベロスのボイラー(太陽直結)が爆発的な唸りを上げた。


「おい大天使! お前が貼ったんだ、責任取って剥がしてもらうぞ! ……そのプライドごとな!」


 次回、最終決戦。

 神の封印 vs 激怒した清掃員の「スチーム剥がし」。

 宇宙の命運をかけた、史上最もくだらない(しかし切実な)戦いが始まる。


(続く)

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あとりえむ 作品紹介

地球の『受理』を以て、僕の存在を証明する。 やっぱりせかいはまあるいほうがいい 監査の魔王 至高のミミちゃんを見守る会 君が遺した種子は、森には還らなかった。

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