表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる ~「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら、世界中がパニックになっていますが?~  作者: あとりえむ
第4章:太陽の焦げ落とし

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/65

第17話:天使は『細かいことを言う自治会長』

 太陽の表面(現場)にて。

 作業中のソウジたちの前に現れたのは、背中に真っ白な翼を生やした『天界の監査官(上位天使)』だった。


 神々しいオーラを放っているが、腕には「風紀委員」みたいな腕章をつけ、手には分厚い石版バインダーを持っている。

 どう見ても、一番面倒くさいタイプの役人だ。


「コホン! そこの業者! 作業を中止しなさい!」


 天使は眼鏡(聖遺物)をクイッと押し上げ、高圧的に告げた。


「貴様らが勝手に『焦げ』を落としたせいで、太陽の光量が規定値を20%も超過しています!

 おまけに、先ほどの『ガリガリ』という騒音! 近隣の星系から苦情が殺到しているんですよ!」


 天使は石版をペン(光の矢)で叩きながら、ヒステリックにまくし立てる。


「直ちに現状復帰しなさい! それが無理なら、罰金として寿命を1万年ほど没収します!」


「うわぁ……」


 ソウジは露骨に嫌な顔をした。

 彼の目には、その天使が「ゴミ出しのルールに異常に厳しい、近所の自治会長(お局様)」にしか見えていない。


「あのさぁ、お宅。こっちは依頼主(太陽神)から頼まれてやってんだよ。文句ならオーナーに言ってくれ」


「口答えしない! 我々は『宇宙管理組合』の決定に従っているだけです!」


 天使は聞く耳を持たず、懐から巨大な半透明のシートを取り出した。


「これ以上の光害を防ぐため、太陽全体を『遮光・防音シート(聖なる結界)』で覆わせてもらいます。工事は無期限停止です!」


「はぁ!? ふざけんな! シートなんか被せたら、洗濯物(地上の生態系)が乾かねーだろ!」


 ソウジがキレかけた、その時だ。


「社長。下がっていてください。……ここは『人事』の出番です」


 スッ、と前に出たのは剣崎だった。

 彼はソーダ・アイス・スーツの襟を正し、エリートビジネスマンの顔で天使に対峙した。


「ほぅ? 下等生物が何の用ですか?」


「『宇宙管理組合』の監査官様とお見受けする。私は株式会社クリーン・ファンタジー、人事部長の剣崎と申します」


 剣崎は流暢な敬語で切り出した。

 そして、天使が持っている石版(規約)を指差す。


「貴方が根拠としているのは、その『宇宙管理規約・第4版』ですね?」


「そうですが? これが絶対のルールで――」


「古いですね」


 剣崎は冷たく言い放った。


「第4版は3000年前に改訂されていますよ。現在の最新版(第5版)では、第8条『環境美化優先則』が追加されています」


「なっ……!?」


「『清掃活動に伴う一時的な騒音・光量の変化は、環境改善の公益性が認められる限り免責される』。……ご存じないのですか?」


 天使が狼狽える。

 実は、天界の役所仕事は遅く、末端の監査官まで最新の通達が届いていないことが多いのだ。

 剣崎はそこを突いた。


「つまり、貴方の主張は法的根拠を欠いている。それどころか、正当な業務を妨害する『職権乱用』に当たりますよ?」


「ぐぬぬ……! 生意気な……!」


「その古い石版は、もはや無価値です。こちらで処分しておきましょう」


 剣崎は天使の手から石版を奪い取ると、ジロジロと観察した。


「材質は……大理石マーブルですね。これは『資源ゴミ』ではなく、『建築廃材(産業廃棄物)』扱いです」


 バキィッ!!


 剣崎は躊躇なく、神聖な石版を自身の膝でへし折った。


「指定の回収日は来月なので、一旦粉砕しておきますね」


「き、貴様ぁぁぁぁ! 神の石版を『ガレキ』扱いするかぁぁぁ!」


 論破された上に宝具を破壊された天使が、顔を真っ赤にして逆上した。

 もはや理屈ではない。暴力による排除だ。


「消え失せろ! 『聖なる裁きのジャッジメント・レイ』!」


 カッッッ!

 天使の掌から、太陽すらも霞むほどの高出力レーザーが放たれた。

 直撃すれば、魂ごと蒸発する神の閃光。


 だが。

 ソウジは動じない。

 なぜなら、うちには「窓拭きのプロ」がいるからだ。


「――眩しいですわ!」


 バサァッ!


 聖女セシリアが、優雅な動作で「黒い布」を広げた。

 それは、彼女が愛用する【遮光等級1級・暗黒カーテン(ダークマター製)】だ。


「安眠妨害です! 夜勤明けの方もいらっしゃるんですよ!」


 ジュッ……!


 神の閃光は、暗黒カーテンに触れた瞬間に吸い込まれ、完全に遮断された。

 光を通さないどころか、物理衝撃すらも無効化する絶対防御。

 それをセシリアは「日差しが強いので」という理由だけで展開している。


「な、なんだその布は!? 私の光が通じないだと!?」


「当然ですわ。遮光1級ですもの。ダンジョンの家具屋『ノーム』で買いましたのよ。『お値段以上』の品質ですわ!」


「ふざけるなァァァ!」


 天使は地団駄を踏んだ。

 論理(剣崎)で負け、物理セシリアで防がれ、完全に手詰まりだ。


「くっ……! 覚えていろ! 次は『強制執行部隊(戦闘天使団)』を連れてくるからな!」


 捨て台詞を吐いて、天使は空の彼方へ飛び去っていった。

 典型的な「覚えてろよ!」ムーブだ。


「やれやれ。やっと帰ったか」


 ソウジは呆れて肩をすくめた。

 ふと見ると、飛び去った天使から抜け落ちた「真っ白な羽」が、ひらひらと落ちてきた。

 ソウジはそれを指先でつまみ上げ、顔をしかめた。


「うわ、汚ねぇ。フケか? あいつ、風呂入ってねーのかよ」

「社長、それは天使の羽です……」

「どっちにしろハウスダストだ。舞い上がると鼻炎になるからな」


 ソウジは羽を弾き飛ばし、パンパンと手を払った。


「次は『布団叩き』が必要だな。あのホコリっぽい羽、徹底的に叩き出してやる」


(続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


あなたの一日がピカピカでありますように


あとりえむ 作品紹介

地球の『受理』を以て、僕の存在を証明する。 やっぱりせかいはまあるいほうがいい 監査の魔王 至高のミミちゃんを見守る会 君が遺した種子は、森には還らなかった。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ