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追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる ~「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら、世界中がパニックになっていますが?~  作者: あとりえむ
第4章:太陽の焦げ落とし

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第16話:太陽は『焦げ付いたIHヒーター』

 灼熱の地獄。

 表面温度6000度、中心温度1500万度。

 そこは、あらゆる生命が瞬時に蒸発する絶対の死地――太陽サンだ。


 しかし。

 その燃え盛る恒星の表面に、呑気な音が響いていた。


 ガリ……ガリ……ガリ……。


「ふぅ。やっぱり現場ここは暑いな。このスーツがなきゃ即死だったわ」


 灰坂ソウジは、額の汗を拭う仕草をした。

 彼が着ているのは、今回の現場に合わせて開発した新装備『耐熱作業服・改(通称:ソーダ・アイス・スーツ)』だ。


 見た目は水色の涼しげな宇宙服だが、内部には特殊な冷却ジェル(ソーダ味の香料付き)が循環している。


 体を動かすたびに、チューブの中の氷が「ガリガリ」と砕ける音がして、精神的にも涼しさを提供する優れものだ。


「社長……本当に大丈夫なんですか、これ」


 背後では、同じスーツを着た剣崎が、真っ青な顔(スーツの照り返しもあるが)で震えている。


「ここ、太陽ですよ!? 一歩間違えたら原子分解ですよ!?」


「大丈夫だ。当たりが出たら冷却時間が10分伸びる機能も付いてるからな」


「命が運ゲーすぎる!」


 剣崎のツッコミを他所に、ソウジは眼下の「地面」を見下ろした。

 依頼主である太陽神が気にしていた「黒いシミ(黒点)」だ。


 一般的に、黒点は磁場の乱れで温度が下がっている領域とされる。

 だが、ソウジの目には全く別のものに見えていた。


【解析:頑固な焦げ付き(カーボン汚れ)】

【原因:吹きこぼれの放置、長期間の加熱】

【対処:削り落とし&研磨】


「うわぁ……。こりゃ酷いな」


 ソウジは腰に手を当てて溜め息をついた。

 彼の目には、この巨大な黒点が「吹きこぼれを拭かずに使い続けた、IHクッキングヒーターの焦げ」にしか見えていない。


「料理したらすぐ拭けって言っただろ。これじゃ熱伝導率が悪くなって、火力が落ちちまうぞ」


 彼はまるで、だらしない飲食店の厨房に入った清掃業者のような顔でボヤいた。

 そして、四次元収納となっている道具袋から、巨大な金属製のヘラを取り出した。


 『業務用・超硬度スクレイパー(オリハルコン合金製)』。

 本来は床のガムやペンキを剥がす道具だが、サイズが規格外だ。


「よし、やるか。剣崎、セシリア。剥がしたカスが飛んでいくから、ちゃんとキャッチしろよ」


「えっ、キャッチって……」


 ソウジは返事を待たずに、スクレイパーを黒点のエッジに突き立てた。


「そりゃっ!」


 ガリガリガリガリガリッ!!!


 太陽の表面で、凄まじい金属音が響き渡る。

 ソウジが腕に力を込めると、黒く炭化した「何か(磁場の塊)」が、ベロンとめくれ上がった。


「重っ! こりゃ相当根が深いぞ」


 彼はさらに体重をかけ、全身を使って削りにかかる。

 焦げ付きはバリバリと音を立てて剥がれ、宇宙空間へと舞い上がった。


「ひぃぃぃっ! 社長! カスのサイズがおかしいです!」


 剣崎が悲鳴を上げた。

 ソウジが「ちょっとした焦げカス」として削り飛ばした物体は、オーストラリア大陸くらいのサイズがあったからだ。


「セシリアさん! 右から大陸級の焦げが来ます! 防いで!」


「任せてくださいまし! 不潔な汚れは許しませんわ!」


 セシリアが聖なるモップ(物理)で巨大な焦げを打ち返し、コアちゃんが重力制御でそれをまとめてゴミ袋(亜空間)へ放り込む。


 完璧な連携プレーだ。


『なんか始まったぞwww』

『太陽の皮むき動画』

『カスがデカすぎて距離感バグる』

『IHの掃除で草』

『ガリガリ言ってるのはスーツの音か?』


 地球への配信画面は、もはや特撮映画を超えたシュールな映像になっていた。


「よし、大体削れたな。……でも、まだ表面がザラついてる」


 一通り黒点を削り終えたソウジは、満足せずに眉をひそめた。

 焦げは取れたが、長年の使用で表面ガラス(光球)が曇っているのが気に入らないらしい。


「仕上げだ。コアちゃん、『重曹ペースト』出してくれ」

「はい社長! 特大タンクで用意してます!」


 ソウジは、白くドロリとした液体(工業用重曹)を太陽の表面にぶちまけた。

 ジュワワワワワ! と音を立てて泡立つ表面。

 彼はそこへ、巨大なスポンジを持ってダイブした。


研磨ポリッシュ!」


 キュッ、キュッ、キュキュッ!


 彼は円を描くように、丁寧に、そして力強く太陽を磨き上げた。

 重曹の粒子がミクロの汚れを絡め取り、くすんでいた太陽表面が本来の輝きを取り戻していく。


「見てみろ。こうやって磨けば、IHだって新品同様になるんだよ」


 数時間後。

 作業を終えたソウジが退くと、そこには――。


 ピカーーーーン!!


 直視できないほどの、強烈な輝きを放つ太陽があった。

 曇りが取れ、エネルギー効率が改善されたことで、光量が以前の数割増しになっている。


「うおっ、眩しっ!」


 剣崎が慌ててバイザーの濃度を上げた。

 地球でも、「なんか今日、日差しが強くない?」「洗濯物が一瞬で乾いた」と話題になっていることだろう。


【タスク完了:加熱調理器の焦げ取り】

【評価:新品同様(光量120%)】


「ふぅ。いい仕事したな」


 ソウジは満足げに頷き、スーツのポケットから「当たり付きソーダアイス」を取り出した。

 灼熱の太陽の上で食べるアイスは格別だ。


「さて、休憩したら次は……ん?」


 ソウジがアイスを口に運ぼうとしたその時。

 頭上(宇宙空間)から、何やら騒々しいサイレンの音が響いてきた。


「警告! 警告! そこの業者、直ちに作業を中断しなさい!」


 見上げれば、真っ白な翼を生やした巨大な天使(監査官)が、腕章を付けて飛来していた。

 手には分厚いバインダー(違反切符)を持っている。


「光量規定値オーバーです! 近隣の星系から『眩しすぎる』と苦情が来ています! 直ちに現状復帰しなさい!」


 せっかく綺麗にしたのに、文句を言いに来た「細かいご近所さん」。

 ソウジはアイスをかじりながら、面倒くさそうに剣崎を見た。


「おい人事部長。なんかうるさいのが来たぞ。対応頼むわ」

「えっ、俺ですか!?」

「あいつら、話が通じなさそうだからな。……お前の得意分野だろ?」


 ソウジはニヤリと笑った。

 理不尽なクレーマーには、最強の中間管理職(剣崎)をぶつけるに限る。


(続く)

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あなたの一日がピカピカでありますように


あとりえむ 作品紹介

地球の『受理』を以て、僕の存在を証明する。 やっぱりせかいはまあるいほうがいい 監査の魔王 至高のミミちゃんを見守る会 君が遺した種子は、森には還らなかった。

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