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追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる ~「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら、世界中がパニックになっていますが?~  作者: あとりえむ
第3章:宇宙の清掃

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第15話:そして伝説の清掃員へ

 宇宙での大仕事を終え、灰坂ソウジたちが地球に帰還した日。

 世界は狂乱の渦にあった。


「英雄の帰還だあああああ!」

「ソウジ社長! こっち向いてー!」

「クリーン・ファンタジー社、万歳!」


 空港から本社ビルまでの道中、数十万人のパレードが彼らを出迎えた。

 紙吹雪が舞い、各国首脳が握手を求め、テレビカメラの放列が彼らを追う。

 株価はストップ高を連発し、入社希望者はサーバーをダウンさせるほどの数が殺到していた。


 しかし。

 当のソウジは、リムジンの窓からその光景を眺め、深く溜め息をついていた。


「はぁ……。道が混んでて会社に戻れないな。これじゃ午後の業務に支障が出るぞ」


 彼は英雄扱いされることになど興味がなかった。

 彼にとって重要なのは「今日中にオフィスのワックス掛けが終わるか」だけなのだ。


 ***


 数日後。

 ようやく騒ぎが落ち着いた(というか、ソウジが取材を全て拒否した)頃。

 クリーン・ファンタジー社のオフィスは、いつもの日常を取り戻していた。


「社長! 入社希望者の選考書類、また1万通届きました!」

「うへぇ……。見るだけで肩が凝るな」


 デスクに積み上がった書類の山を見て、ソウジは嫌そうな顔をした。

 そして、横で一心不乱にゴミの分別をしていた部下――剣崎に声をかけた。


「おい、剣崎。お前がやれ」

「えっ? 俺が……面接官ですか?」

「ああ。お前、ゴミと資源を見分ける目(分別スキル)だけは一流だからな。人間の中身も見分けられるだろ? 『使える人材(資源)』だけ残して、あとは不採用(燃えるゴミ)だ」


 それは、かつて「無能」と切り捨てられた男への、ソウジなりの最大の信頼の証だった。

 剣崎は一瞬驚いた顔をしたが、すぐにニヤリと不敵に笑った。


「フフン……任せてください。私の目は誤魔化せませんよ。効率的に、完璧な選別をしてご覧に入れます」


「頼んだぞ、人事部長」


 こうして、元エリート・剣崎は「最強の人事担当」として、新たな才能を開花させることになった。


 ***


 「失礼します、社長。特急の依頼書が届いています」


 秘書のコアちゃんが、恭しく一枚の封筒を持ってきた。

 それは、目も眩むような黄金の封筒で、触れるだけで熱気を感じる代物だった。


「なんだこれ、熱っ! カイロか?」


「差出人は……えっと、解読班によると『太陽神』様だそうです」


 その名前に、掃除中のセシリアが「ひぃっ!?」と悲鳴を上げて平伏した。

 しかしソウジは「また大層な名前のクレーマーだな」と封を切る。


 中に入っていたのは、光り輝く文字で書かれたメッセージだった。


『拝啓、掃除の神よ。

最近、顔のシミ(黒点)が増えて気になっております。

つきましては、至急「美白ケア」をお願いしたく……』


 それを読んだソウジは、天を仰いだ。


「太陽かぁ……」


 彼は窓の外を見上げた。

 雲ひとつない青空の向こうで、ギラギラと輝く太陽。

 次の現場は、あそこだ。


「あそこ、暑いから嫌なんだよなぁ。作業着が蒸れるし、汗でゴーグルが曇るし」


 文句をタラタラと言いながらも、その顔は笑っていた。

 職人の血が騒いでいるのだ。

 どんな過酷な現場でも、そこに汚れがある限り、彼は行く。


「コアちゃん。経費で『ソーダ味のアイスキャンディー』、箱買いしといてくれ。あのガリガリするやつな」


「了解です! 当たりが出たらもう一本ですね!」


「セシリア、剣崎! 準備しろ! 次は熱中症対策が必要だぞ!」


 ソウジはロッカーを開け、【超耐熱仕様・セラミックデッキブラシ】を取り出した。


「了解! 日焼け止め塗ってきます!」


「マジかよ……次は太陽かよ……労働基準法どうなってんだ……」


 歓喜する聖女と、絶望する人事部長。

 そして、アイスを片手にご機嫌な社長。


 最強の清掃会社『クリーン・ファンタジー』。

 彼らの「大掃除」は、まだ始まったばかりだ。


「よし、行くぞ! 世界をピカピカにするのが、俺たちの仕事だ!」


 太陽に向かって伸びるロケットの軌道雲。

 それを見送る地球は、今日も一点の曇りもなく、美しく輝いていた。


【第3部 完】



−あとがき−


 読者のみなさん、お疲れ様です。

 株式会社クリーン・ファンタジー代表の灰坂ソウジです。


 当社の業務日報に最後までお目通しいただき、誠にありがとうございました。


 世間では何やら「銀河を救った」だの「神の御業」だのと騒がれていますが、弊社としてはあくまで「通常業務の一環」として処理しております。


 ブラックホールといっても、要は「排水溝の詰まり」ですし、スペースデブリも「不法投棄の山」に過ぎません。

 場所が宇宙になっただけで、やることは団地の掃除と同じです。


 ただ、無重力での分別作業は予想以上に腰に来ました。

 人事部長(剣崎)がいなければ、残業時間が労働基準法に抵触するところでしたね。彼には特別ボーナスとして、肩たたき券を支給しておきました。


 さて、これにて「月面・軌道上の清掃案件」は完了となりますが、休む間もなく次の現場(太陽)が待っています。


 依頼主様(太陽神)からの要望は「黒点のシミ抜き」とのことですが、あそこは気温が高いので、熱中症対策が必須です。

 経費で大量のアイスキャンディーを発注しましたが、これを経理に通すのが大変そうで……。


 そこで、皆様にお願いがあります。


 もし、弊社の施工内容にご満足いただけましたら、

 お手元にあるお客様満足度アンケートや、応援コメントにて、評価をいただけますでしょうか。


 皆様からの高評価があれば、それが弊社の信用となり、新しい機材(対太陽用冷却ファンなど)の導入資金になります。

 あと、単純に私が喜びます。


 それでは、ロケットのエンジンが温まってきたようなので、そろそろ失礼します。

 太陽のシミ、頑固そうですが……まあ、プロとしてきっちり「白く」してきますよ。


 本日はご閲覧、ありがとうございました。

 皆様の明日が、塵ひとつない快晴でありますように。


 株式会社クリーン・ファンタジー

 代表取締役社長 灰坂ソウジ

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あなたの一日がピカピカでありますように


あとりえむ 作品紹介

地球の『受理』を以て、僕の存在を証明する。 やっぱりせかいはまあるいほうがいい 監査の魔王 至高のミミちゃんを見守る会 君が遺した種子は、森には還らなかった。

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