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7話 えぇ……なんで?

「ここが……九十九士協会ですか。想像していたよりもずっと大きいです」


 視界いっぱいに広がる施設を見たパンドラは思った事を口にする。その大きさは先程のショッピングモールよりも広い敷地に様々な施設が複合した場所であった。


「ええ。国が支援してくれているから充実してるわよ。ツクモ神に対する問題の解決や共に過ごすための支援、後始末とかを行う関係でたくさんの部署があるの」

「えぇ。そんなにたくさんの部署があるのですか?」


 パンドラは興味深そうな表情でたずねる。そんなパンドラに対して桜は穏やかに言葉を続けた。


「そうね。ツクモ神の中には大災害と大差ないレベルの被害を出せる存在もいるから備えはどうしても厚くなるわね。ここは防衛用の避難所も兼ねてるから余計にね」

「なるほど。シェルターを兼任してるのですか。確かに備えは必要ですね。父様や母様が本気でケンカした時とかの余波で周辺の島とかが何個か嵐で呑まれたとかもあったのです。呑まれた島に親戚の神が居たらしくてケンカの後で怒られてたです」

「そ、そう」


 パンドラのしみじみとした口調で納得するのとは裏腹にただの夫婦喧嘩で大きな災害とほぼ同じ状況が引き起こされるパンドラの両親の話に桜は引きつった返事をする。


「母さん。それで俺たちはどこに行くんだ?」

「今回はツクモ神生活課よ。意味は言葉そのままにツクモ神との生活での支援してくれる所になるわね」

「ツクモ神生活課……そこで弾の事も調べるのですか?」


 パンドラはこれからの指針についてたずねる。それに桜は頭を左右に振った。


「いいえ。まずはパンドラちゃんがここに居てもいいように登録が先ね。その後にツクモ神の研究機関の方に向かう事になるわね。そこら辺は協会の人が教えてくれるわね。後、事前に連絡は入れてるからパンドラちゃんも弾の近くにいてくれれば問題ないわ」

「なるほど。わかったのですよ」


 パンドラは了承すると弾の頭の上に乗る。急に頭に乗って来たパンドラに一瞬バランスを崩すが、すぐに持ち直した。


「っとと」

「大丈夫ですか?」

「ああ。頭の上にいきなり衝撃がきたからびっくりしただけだ。気にすんな」

「そうですか? それなら少しの間で良いので止まって欲しいのです」

「いいぞ?」


 パンドラのお願いに弾は従う。少しすると弾の頭の上が軽くなる。パンドラは言った。


「もういいですよ」

「おう。頭の重さがなくなったけど、何をしたんだ?」


 弾はたずねる。パンドラは答えた。


「私の乗ってるダンボールを使って弾の頭の少し上に一時的に固定したのです。なので少し荒い動きをしても問題ないのです」

「ああ。気にしてくれてありがとうな」

「どういたしましてなのです。ただ、重さを感じなくても頭よりも上に居るので私をぶつけないように気を付けてくださいね」

「分かった」


 パンドラの言葉に弾は返事をすると2人に対して桜は言った。


「準備は出来たみたいね。それじゃあ行きましょうか」

「「おう(はい)」」


 そういうと2人は返事をする。弾が立ち上がろうとするとパンドラが叫びをあげた。


「あぶないっ!」

「あ。すまん」


 弾はギリギリの所で気づいて車の天井にパンドラをぶつける直前ですぐに座りなおす。パンドラはため息をついた。


「はぁ。未遂だから許しますが、気を付けてくださいね」

「ああ」


 弾はパンドラをぶつけないように今度は慎重に車から出る。それを見ていた桜は2人を招いた。


「出て来たわね。こっちよ」


 桜が先頭に立って歩き始めると弾とパンドラはその後ろを着いて行く。弾とパンドラが移動すると2人の姿が物珍しいのか人、ツクモ神問わず視線が集まった。


「うぅ。見られてるよ……」

「大丈夫ですよ。周りの人はカボチャと思えば気にならないと知り合いが言っていたのです」

「全然気になるよぉ!?」


 パンドラの言葉は効果を成していないのか弾は緊張した様子でソワソワとし始める。それを止めたのは急に聞こえた頭上の声であった。


『あらあラ? ヒトの子かしラ?』

『かわいい女の子だァ。珍しいナ』

『そうネ。それに頭の子はおナカマかしラ?』

『お仲間ハッケン。でも、ねむイ』

「わわっ。何なのですっ!? 何なのですぅっ!?」


 4人の妖精達が弾の頭の上でおしゃべりを始める。頭上では巻き込まれたのかパンドラが慌てていた。


『ふァ。ちょうど良さそうな頭。おやすみなさイ』


 眠そうにしている妖精の1人が弾の頭上でそういうと止まって眠り始める。1人が眠り始めると他の妖精達もその寝心地が気になり始めたのか弾の頭に乗り始めた。


「ちょっ!? バランスが!?」


 弾が文句を言うが、妖精達は話を聞いていないのか弾の頭の上の感想を口にし始めた。


『これハっ! 魔性のバショ……』

『すごイ。まるデ暖かイ日だマりのようデ』

『この子が真っ先にイくの分かるわァ。これは……極上。スヤァ』


 そういうと妖精達は連携するように言葉を繋げた後に弾の頭の上で眠り始める。弾は困惑した。


「えぇ……なんで?」


 頭の上から妖精達を落とさないようにしながらつぶやくと頭上に居たパンドラが目の前に降りて来た。若干ふらついた状態で。


「ふぅ。酷い目に合ったのです。いきなり手を掴まれてクルクル回されて少し気持ち悪いです」

「災難だったな」

「そうですよ。弾も中々ですね」


 パンドラは頭上を見ながら返事をする。弾もそれについては否定はせずに答えた。


「そうだな。これ落ちそうで危なっかしいんだけど」

「それについては安心してください。私が落ちないように維持するので」

「ありがとう。助かる」


 パンドラの言葉に弾は彼女に礼を言う。それにパンドラは笑顔で答えた。


「いえいえ。弾の頭の上でこんなにも心地よさそうにしてるのは起こし辛いのですよ」

「そうだな」


 パンドラの言葉に弾がうなずく。パンドラは言った。


「それでは行きましょうか」

「そうだな」


 そう言うとパンドラと弾は先に進んだ桜を追う。追いつくと桜は言った。


「あらあら。小さな妖精さんが4人も頭に乗ってるわね」

「何でか分からないけどね。起こした方がいい?」

「そうねぇ。こんなにもぐっすりだと起こしちゃうのもかわいそうよね。いいわ。しばらくはそのままにしておきましょうか」

「分かった」


 桜が優しくそう言うと弾は小さくうなずく。しばらく移動すると大きな施設の前にたどり着いた。施設の出入口の近くには『ツクモ神生活課』と書かれた看板があった。


「ここがツクモ神生活課の建物よ。行きましょうか」


 桜がそう言うと弾達は施設の中へと足を踏み入れた。

 九十九士協会に入るまでに妖精に絡まれるお話。

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