4話 ホントに着なきゃダメ?
「弾ちゃん。着いたわよ」
母である桜に連れられて弾とパンドラはショッピングモール・アズサへとたどり着いた。
「弾ちゃん。出るのは少し待ってね」
「何で?」
後ろの席から外に出ようとした弾を桜が止める。それに頭を傾げると桜は少し困った様子で答えた。
「だって……弾ちゃん。下の方がすっぽんぽんじゃない。移動中に少しだけど見えてたわよ」
「すっぽんぽんって……あ」
弾は男物の上着以外は何も身に着けていない事を思い出すとすぐに股の間にパーカーを挟んだ。
「ふふっ。さすがにそんな状態でお外に出られても困るから少し待っててね。すぐにもどってくるから」
「はーい」
そういうと桜は車から出て行く。誰もいない事で暇になった弾は助手席から興味津々といった様子で外を覗いていたパンドラに話しかけた。
「パンドラ」
「なんですか?」
「外の景色が珍しいのか?」
弾はたずねる。パンドラはその言葉にうなずいた。
「イエスですよ。人が単独でここまでの文明を発展させた事に驚きなのです。何度も滅んだのにですよ?」
「そうなのか?」
「そうなのですよ。元々人の世の国の王への罠のためにお嫁さんとして生まれましたが、途中で何故かお母様に気に入られてからは取り止めとなって神として自由に生きられているのです。ちなみにその国は私の代わりに行ったお嫁さんで国が滅びました」
「……神の世界ってそんなに殺伐してるなぁ」
パンドラの言葉に弾は感想をつぶやく。それにパンドラは苦笑した。
「そうですねぇ。ですが、悪い事ばかりではないのですよ。お母様やお父様もその親戚の方も優しいのです」
「そうか。ウチの父さんと母さんも優しいぞ。たまに怖いけど……」
「ふふっ。同じですね」
弾の言葉にパンドラは同意する。お互いに笑うと運転席の扉が開いた。
「ただいま」
「おかえりなのです」
「おかえり」
弾とパンドラが同時に返事を返す。2人が後ろにいるのに気がつくと桜は言った。
「あら? 2人共後ろの席でお話してたの?」
「はいなのですよ。弾が暇そうにしてたので相手してあげたのです」
「べっ別に暇じゃないしっ。ただ、興味深そうに見てたから気になっただけだし」
弾が言い訳するように答える。そんな2人が面白かったのか微笑みながら話題を変えた。
「そうなのね。それと弾ちゃん。これを」
「分かった」
そういうと弾に袋を渡す。弾が袋の中身を取り出すと硬直した。その反応にパンドラが頭を傾げた。
「どうしたのですか? ただの下着ですよ?」
「……そうだな。これが女子用じゃなければな」
弾は手に持っている物から視線を逸らしながら答える。弾の手には白のシンプルな上下の下着のセットがあった。
「あらあら。今の弾ちゃんの体は女の子よ。流石に体の性別を合わせないと大変よ?」
「うぅ。でも、これは流石に…………ホントに着なきゃダメ?」
「サクラの言う通りなのですよ。弾が思っているよりも繊細なのです。それにもしパーカーの下に何も身に着けてないを見られる方が恥ずかしいですよ?」
桜の言葉を肯定するようにパンドラも同じように答えると弾を見つめる。しばらくすると2人の真剣な表情と視線に弾は根負けした。
「……分かったよ」
「それだったらパンドラちゃん。車のカーテンを閉めてちょうだい。」
「分かったのです」
パンドラはそう言うと空を飛びながら車の後ろと左右のカーテンを閉める。前の方は桜が日よけを立てて正面からの視界を遮った。
「これでよし。上は今着てるパーカーでもいいようにしているからまずは下着を付けてからパーカーを上に着なさい。パンドラちゃん」
「分かったのですよ。お手伝いするので指示に従うのですよ」
「うぅっ。分かったよ」
パンドラが指示を出し始めると弾は渋々といった様子で着替え始める。パンドラの指示に従って上下の下着とシャツを身に着けからその上に先程着ていたパーカーを被る。
弾は袋の中に残っている物を取り出すと桜にたずねた。
「母さん。これ穿かなきゃダメなの?」
弾は取り出したものを広げる。それはパーカーと似た色のチェック柄のスカートであった。
「穿きなさい。パーカーだけの方が危ないわ」
「そうですよ」
桜の言葉にパンドラも同意する。弾はスカートをはいて前で止めた。
「……これでいいか?」
「スカートのホックを横にするのよ」
「こう?」
「そうそう。それでオッケーよ」
桜の指示に従って弾はスカートのホックを横に移動させると桜からOKが出た。
「うぅ。変な感じ……」
弾は普段とは違う感触と素肌の触れる足の感覚にモジモジしながらそう言うと桜とパンドラはうなずき合った。
「うん。服屋に行くまではこれで大丈夫そうですね」
「そうね。いつ戻れるか分からないからそれなりに準備しないとね。靴とかズボンはパーカーだとサイズとか色合いを見ながらじゃないと合わないからお店で直接見ながらにしましょう」
「そうですね。これはやりがいがありますよ」
「ええ。腕が鳴るわね」
意気投合する2人の様子に弾は引いた。
「この時点ですごく嫌な予感がするんだけど?」
「大丈夫よ」
「そうですよ。しっかりとカワイイのを選びますからね」
「お、おぅ」
2人の圧に屈した様子で今の服装の事を忘れて弾がうなずく。弾が外に出るためにダンボール箱を抱えると桜はたずねた。
「そういえばパンドラちゃん。弾ちゃんがダンボール箱を抱えているのはどうしてかしら?」
「ダンボールの戦士はダンボール箱がないとダメなのです。私が居れば問題ないのですが、離れた時に持っていないと精神が不安定になるので持たせてあげてください」
「そうなのっ!?」
初めて聞かされた内容に弾が思わずツッコむ。
「あれです。スマホに依存しているのと同じ状態なのです。ないと不安になる程度なのです。説明の途中で不具合があったので」
「何となく分かるような。分からない様な……。ていうか、スマホは知ってるのか」
パンドラの口からスマホというワードが出てくると弾は頭を傾げる。パンドラは答えた。
「スマホは今の神の世界でも流行してるのです。あこがれなのですよ。それを買うために今回は降りて来たような物なのです」
「そんな理由なんだ……」
パンドラがここに来た理由に弾は何とも言えない表情でつぶやく。
「そうなの。それだったら一緒にスマホも見に行きましょうか」
「いいのですかっ!?」
パンドラが聞き返す。
「ええ。その代わりに弾ちゃんの事をお願いね」
「はいっ! あ。口座はあるので支払は問題ないです。大きさについても物の大きさはこちらで調整できるので付き添いをお願いするのです。今回は私の分だけで今度お母様の分を購入しに行くので契約の内容とかを教えて欲しいのです」
「ええ。もちろん教えるわ。パンドラちゃんは弾ちゃんの箱の中に隠れているのよ」
「了解なのです」
パンドラと桜の間でやり取りを終えると桜は弾に言った。
「さぁ行くわよ。弾ちゃん」
「分かったよ」
そういうと弾はパンドラの入った箱を持って車を出た。
パンドラが地上に降りて来た理由とお店に行く前のお着替えのお話。
次回は服屋での着せ替えのお話の予定。次の更新は12/10(水)頃の予定です。
ここまで読んで下さりありがとうございました。次回もお楽しみに。




