3話 どう考えても姉っぽくないよ
家の中に入ってから廊下を進んだ先になる見慣れたリビング。
そこで弾と弾の母はテーブルを挟んで先程の状況を説明し終えると弾の母はゆっくりとうなずいた。
「ふぅん。なるほどねぇ? その子と契約したら何故か女の子になっていた……と」
「うん」
弾の母の言葉に弾はうなずく。弾の母は机の上に座るパンドラを見ると鋭い雰囲気で言った。
「私は環 桜。この子の母親よ。貴女の名前を聞いてもいいかしら?」
「もちろんですよ。サクラですね。私はパンドラ。ダンボール箱を司るツクモ神なのです」
パンドラはいつも通りの様子で答える。その答えに少しだけ疑わしそうな表情で桜は答えた。
「そう……ダンボールのツクモ神……ね。元に戻る方法はあるの?」
「それについては確約できないのです。正直、このような事が起きるのは初めてなのです。ですが、戻る方法があるなら一緒に探していきたいと思ってます」
パンドラは真面目な表情でそう言うと桜はうなずいた。
「そう。思ったよりも誠実なのね」
「ウソを言っても仕方ないのですよ。それにせっかく契約にうなずいて助けてくれた子をこのまま放っておく事はできないのです」
パンドラがそういうと桜は弾を見た。
「弾ちゃんはどうしたい?」
「戻りたいけど、パンドラを放っておきたくもないかな。それに協力もしてくれるみたいから、一緒に方法を探すよ」
弾がはっきりとそういうと桜の雰囲気がほんわかした様子に戻った。
「そう。それなら一緒に居てもいいわ。それと女の子になっちゃったから色々と手続きをしないとね」
桜がそういうとパンドラがたずねた。
「手続きがあるのですか?」
「もちろんよ。弾ちゃんの性別が変わったのもそうだけど、ツクモ神が人の世で暮らすのにも手続きは必要なのよ」
「そうなのですか?」
パンドラは頭を傾げる。桜はうなずいた。
「そうなのよ。でも、手続き自体は難しくないわ。最低限の意思疎通が出来て人の世のルールを守れれば祓いや討伐の対象にはならないから安心してちょうだい」
桜がそう言うとパンドラが感心した様子で言った。
「詳しいのですね?」
「お父さんが九十九士ですからね」
桜がそう言うとパンドラと弾が同時に頭を傾げた。
「九十九士?」
「そうなの?」
「何で弾も知らないのですか?」
弾の反応にパンドラが少し呆れた様子でたずねる。弾は少し気まずそうに言った。
「だって父さん滅多に帰ってこないじゃん。それにたまにある休みの日も仕事の話はしないし。何よりも父さんのツクモ神を見た事ないよ」
弾がそう言うと桜はそれを否定した。
「見た事はあるはずよ。いつも身に着けてるわよ。いつもお仕事に行く時に着ていくコート。あの人のツクモ神よ」
「そうなのっ!?」
弾が驚く。それを見ていたパンドラが弾の手を引っ張った。
「弾。九十九士って何ですか?」
「知らないのか?」
パンドラの問いかけに弾が意外そうな顔をして聞き返す。パンドラは素直に答えた。
「ツクモ神に関する何かであるのは分かりますが、この世界に来たのは初めてなので何も分からないのです」
パンドラがそう言うと弾は九十九士について説明を始めた。
「九十九士っていうのはツクモ神と心を通わせて契約した術士だよ。ツクモ神に関する問題を解決するんだ。荒ぶるツクモ神を鎮めたり、祓ったり、ツクモ神が絡んだ犯罪者を捕まえたりとかたくさんあるよ」
「なるほど。ツクモ神との契約者ですか。私と弾の関係と似てますね」
パンドラがそういうと弾は同意するようにうなずいた。
「かもな。それで話を戻すとそんな九十九士が集まる組織を九十九士協会って言うんだ」
「そうなのですか。いつの時代でもそういう組織はあるものなのですね」
「そうだな」
パンドラの言葉に弾も同意する。弾はパンドラと出会った時にボロボロであった事を思い出すと言葉を続けた。
「そういえばなんだけどさ。パンドラ」
「どうしました?」
「パンドラはどうしてあんなにボロボロだったんだ?」
弾がたずねるとパンドラは答えた。
「人の世に到着した時に黒い雷を纏った獣のツクモ神に襲われたのですよ」
パンドラが事情を口にする。それに桜が反応した。
「……黒い雷を纏った獣のツクモ神? それは本当かしら?」
「間違いないです」
そう言うとパンドラは隣に置いていたダンボール箱の中から手鏡を取り出した。
「それは?」
「私のダンボール箱の中に入れている秘密道具の1つです。私が見たのはこんな感じのです」
そういうと手鏡から光が出る。光が集まると禍々しい雰囲気の4足の獣が映った。その姿に桜が納得した。
「……なるほどねぇ」
「サクラ。何か知っているのですか?」
「朝のニュースで獣型のツクモ神が近くに出没しているから気を付けるようにって言っていたわ」
「その割には警戒した様子はないのですね」
パンドラがそういうと桜は答えた。
「ニュースで日中には活動しない情報が出回ってるのが一番大きいわ。それに警戒し過ぎたら何もできなくなっちゃうから」
「それもそうですね。私も襲われたのは夜でしたから」
「だから、2人共夜に出歩かないようにね。出るとしても最大限警戒する事」
「「はーい」」
桜の言葉に弾とパンドラが同時に返事をする。桜はそれを見て笑った。
「ふふっ。何だか仲のいい姉妹みたいね」
「そうですか? それなら私がお姉ちゃんで弾が妹ですね」
パンドラは桜の言葉にまんざらではないのか嬉しそうに答える。それに弾は不満そうに言った。
「母さん。俺は男だよ。それとパンドラ。どう考えても姉っぽくないよ。良くて姪っ子とかだよ」
「なにおー!?」
弾の言葉にパンドラが怒る。それを眺めながら桜は言った。
「ふふふっ。ケンカは程々にね。お父さんと良君への説明は帰って来てからでいいとして…………弾ちゃんとパンドラちゃん。出かけるわよ」
桜はそう宣言して立ち上がる。桜の言葉に弾とパンドラはにらみ合いを止める。パンドラから弾に話しかけた。
「弾。弾」
「どうした?」
「リョウ君って誰です?」
桜の言っていた人物についてたずねる。弾は答えた。
「良は弟だよ。友達と公園に遊びに言ってるから今はいないから後で紹介するよ」
「そうなのですか。弟君ですか。リョウ君については分かったのです。私は弾について行く形で飛べばいいですか?」
「それなら一旦肩にでも乗ってくれ。どうせ車に乗って移動するから肩に乗る方が楽だろ?」
「そうですね。お邪魔しますね」
「ああ」
弾の言葉にパンドラはうなずくと弾の腕を伝って肩の方へ移動する。弾はテーブルの横のイスに置いていたダンボール箱を抱えると目の前の桜にたずねた。
「そういえば母さん。まずはどこに行くの?」
「まずは服屋に行くわよ」
桜はそう宣言した。
弾の母である桜への事情説明とこれからについての軽いお話。
次回の予定はTSモノ定番のお着替え回。次の更新は12/7(日)頃の予定です。
ここまで読んで下さりありがとうございました。次回もお楽しみに。




