プロローグ
とある世界の絶海の孤島。
木々の生い茂る鬱蒼とした島で5mとはあろう巨人は2足の竜と相対していた。筋骨隆々の巨人は上半身裸で腰蓑を身に着け、手には身の丈よりもさらに大きな槍を竜に向けて構える。
一方の竜の方は強靭な顎と鋭い爪に走る事に適した2つ足。前とのバランスを取るように伸びた尻尾は鞭のようにしなりながら動きながらその場からいつでも飛び掛かれる姿勢で巨人を見ていた。
「「……」」
両者は対峙した状態でにらみ合う。風が木々を揺らす音が異様にうるさく感じるほど静かな1人と1体は相手の隙を探す。
「——っ! はぁぁぁっ!」
最初に動いたのは巨人であった。雄たけびを上げながら助走をつけて飛び込むと同時に竜の頭に槍を突き立てた。
「gyaアAAAAAAAAAッ!?」
頭に突き刺さってもまだ致命傷ではないのか槍を振り払おうと暴れ回る。巨人の方は槍を支点に竜の首の後ろに回り込むと両足を竜の腕が届かない位置で首を挟み込む。
竜の首を足で締め付けながら槍をさらに頭の奥へ押し込んだ。
「くた……ばれやぁっ!」
「———ッ!? 」
巨人が渾身の力で槍を押し込むと竜の頭を貫通する。流石に竜は耐えられなかったのか鈍い音と共に倒れ込んだ。
巨人は竜と一緒にその場に倒れ込むと仕留めた竜の頭から槍を引きはがしながら仰向けに転がった。
「はぁっはぁっ……やったぞ。これで」
巨人は竜を仕留めたことに満足そうに自身の槍を見る。龍の血を吸った槍の刃は紅く染まり、禍々しい気配を放つ。
槍は赤のオーラを発すると赤い雷が巨人を焼いた。
「っ! ここに来て反逆だとっ! 武器のくせに生意気だぞっ! かぁっ!」
反逆してくる槍に巨人は怒りと共に黄金のオーラを発生させる。槍の赤のオーラと巨人の黄金のオーラがせめぎ合う。
しばらくすると赤のオーラは巨人の放つ黄金のオーラが呑みこんだ。
「はぁ……はぁ……。何とかなったか。手こずらせやがって」
ようやく大人しくなった槍に巨人は不機嫌そうにつぶやく。しばらくすると回復したのか立ち上がる。体をほぐすように大きく伸びをすると空に向かって大きな声で言った。
「兄貴ぃっ! 課題をクリアしたぞぉっ!」
『もう? クリアしたのかい?』
巨人の言葉に空から驚きの声が返って来る。
「おう。課題の竜は仕留めたぞ? こいつでいいんだよな?」
巨人がそう言うと兄貴と呼ばれた声は確認しているのか沈黙する。しばらくすると声が返って来た。
『確かに。確認したよ。本当に仕留めたんだね?』
「おう。倒すのに苦労したが、これで文句ないだろ?」
『ああ。文句はないよ。でも、本当に行くのかい外の世界に?』
心配する兄の言葉に巨人は笑って答えた。
「ははっ。もちろんだ。心配してくれるのは嬉しいけどよ? 俺は本物の運命の相手に会いに行くって決めてんだ。それに外の世界でようやく見つけた気配だ。こんなチャンスは逃せねぇ。だから行く」
『全く。一度決めたら意見を変えないんだから』
兄は弟である巨人に呆れた様子で言葉を返す。巨人は言った。
「でも、約束は約束だろ? 俺は行くぞ」
「そうかい。行っておいで。今海の方の封印は解いたから泳いで真っすぐ進めば外の世界へとたどり着けるよ。そこから自分で探すんだ』
「ああ。分かってる。気配は分かるから問題ねぇ。それと教えてくれてありがとよ。兄貴」
巨人は兄に礼を言う。兄の方は心配そうに言葉を続けた。
『でも、脈がなさそうだったら諦めなよ? それと無理はしないでね』
「わかってる。もし、本当にダメだったら流石に諦めるさ。でも、行動しないと何もわからないだろ? 兄貴は心配性だな」
『お前が考えなしに行動してるせいで何度も痛い目に合ってるからだよ? 兄が弟を心配するのは当然さ』
兄がはっきりと答えると巨人は照れ臭くなったのか出口である海の方へ向きを変えていった。
「お、おう。そうか。それじゃあそろそろ行くな。あ。それとここに置いてる竜の肉は好きにしてくれ」
『分かった。適当に使わせてもらうよ。行ってらっしゃい』
「ああ。行ってくる」
巨人は兄の声を聞いた後に出口である島の海を渡るために泳ぎ始めた。
新章のプロローグ。巨人が出てくるお話の予定です。運命の相手とは誰でしょうね。
次回はタマとパンドラの視点からです。入学式は終えたのでクラスの自己紹介などの予定。次の更新は3/15(日)頃の予定です。
ここまで読んで下さりありがとうございました。次回もお楽しみに。




